戦評COMMENT

日本選手権出場を懸けた戦いは、酷な結末となってしまった。

関東代表決定戦初戦で8回コールド負け。2本の2ランを浴びるなど、二死からの失点が『7』。あと1アウトをキッチリと取れていたら……という歯がゆさが残る守備。攻撃も、好機を作りながらあと一本が出なかった。安打数は、Hondaの8安打に対し、セガサミーは6安打。個々の能力という点では点差ほどの実力差は感じない印象だ。

勝敗を分けたものは何だったのか。

初芝清監督が「バッター陣は各自、意識を持ってやっていましたが……。無駄な四死球が得点につながってしまった」と語れば、遊撃手の砂川哲平も「四球を与えるなど自分たちが崩れたところを付け込まれた」と、敗因は明らかだった。

相手の『ゼロ』に対し、セガサミー投手陣が与えた四死球は『6』。特に先発・草海光貴が「スライダーの調子が悪かったです」と持ち味の制球力を発揮でなかった。

「草海は投手なの?」と思った方のための補足情報。セガサミー入社後、スピード感あふれる走塁と守備が光る内野手として活躍した草海は、今年の都市対抗予選終了後、投手に専念。4年前には上田西高の2年生エースとして夏の甲子園出場。最速143キロをマークしただけでなく、投球数99球で完封勝利を収めるなど、テンポの良さも披露。投手としても実績がある。そんな草海は「抜擢」に応えるように都市対抗予選終了後のオープン戦や8月15日の関東選抜リーグ戦でも結果を残してきた。今回の先発投手の座も、指揮官の信頼を得て勝ち取ったものだった。

しかし初回、先頭打者に死球で出塁を許すと捕逸で無死二塁に。相手の2番打者に中前安打を浴び、わずか4球で先制点を献上。2回表には一死から死球と四球。二死とした後にも死球を与えて満塁の窮地に立たされる。この場面で迎えた1番打者に右中間へ走者一掃となる3点適時三塁打を浴び、被安打2ながら4失点。与えた四死球4つがすべて失点に直結した。

制球に苦しむ草海の姿に「今までにない」と指揮官も想定外の展開。試合は2回を終えて0対4。何とか悪い流れを断ち切りたい。3回表、マウンドを託されたのは伊波友和だった。大学出のルーキー右腕は140キロ台の速球を投げ込むなどテンポの良い投球を披露。捕手・吉田高彰が「コントロールがいいんで、いつも通り投げてくれた」と称えるように2イニングを無安打無四球無得点に抑えてみせた。

そんな伊波の好投が打線の奮起を呼ぶ。4回裏、1番砂川がこの試合2本目となる安打で出塁。二死一、三塁として5番須田凌平が中前へ適時打。スコアを1対4として、なおも一、二塁。打席には6番・政野寛明。3球目を捉えたが、鋭い打球はライナーで一塁手の正面へ。セガサミーの流れはこの瞬間に失ったのかもしれない。その後の攻撃では7回裏、二死二塁で代打・澤良木喬之がセンターへ大飛球。抜けたかに思えたが、これを相手中堅手が好捕。反撃の芽をつまれた。

一方の投手陣は5回表、3番手の陶久亮太が六番打者に2ランを浴びるなど、この回3失点。4番手の横田哲は1回1/3を無失点と踏ん張るも、5番手の田中太一は苦しい投球。150キロ台の速球を混ぜながら7回表を無得点に抑えたが、8回表には二死から9番打者に2ランを浴び、1対9となってしまった。

打線も反撃したいところだが、8回裏は三者凡退となり、終戦。都市対抗に続き日本選手権出場も逃す形となった。それでも試合後、初芝監督が「収穫は伊波」とその投球を称えれば、1年目でスタメンマスクをかぶる吉田高彰は、苦しいカウントでの攻め方など配球面の課題をあげるなど、眼差しは曇ることなく次なる戦いに向けられていた。

この敗戦を悔しさだけで終わらせるつもりは首脳陣や選手たちに毛頭ない。「逆襲のセガサミー」の序章としたいところだ。

(文・写真:森真平)