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夏野社外取締役に、セガサミーグループの課題等に関する率直な意見を求めました。 セガサミーホールディングス株式会社社外取締役 夏野 剛

Q.セガサミーグループの重要な課題を3つ挙げるとすると何でしょうか。

破壊的イノベーションをよりスピーディーかつ大胆に。

最も重要な課題は「非線形」、つまり過去の延長線上にない新しい価値をいかに創り出していくかということです。経営陣が真剣に取り組んでいる、カジノを含む複合リゾート施設事業は、「非線形」の良い例だと思います。一方それ以外にも、様々な新しいビジネスにトライしようという方針を示していますが、それらの多くは、未だに「新しい価値」としては鮮明に見えてきません。その原因は、新しいものを過去の延長線上で創ろうとする姿勢から十分に脱しきれていないことにあります。それではいずれかの既存事業に引っ張られ、「ちょっと変わったもの」で終わる可能性があります。過去と決別し、破壊的イノベーションを起こしていくこと。しかも、より早く、より大胆に。これはグループ全体で真剣に取り組んでいくべきことだと思います。

2つ目の課題は、今お話ししたことの方法論になりますが、グループ内に多様性をいかに取り入れていくかということです。多様性こそイノベーションの最大の母であり、それを組織内にきちんと抱えていくべきだと私は考えています。これだけ大きな企業グループになると、ともすると「和」を過度に重んじがちになります。もちろんそれは大切なことではありますが、行き過ぎると次第に企業の中で多様性が損なわれていく危険性があります。多様性を抱えることは、摩擦を引き起こす要因にもなり得ますが、それを単なる仲違いの形にすることなく、プラスのエネルギーに変えていけば大きな力になります。経営陣が摩擦を恐れることなく、多様性を取り込んでいくという考えをよりクリアに示し、組織づくりをしていくことが大切だと考えています。

3つ目の課題は、(株)セガのゲームコンテンツ事業です。ゲームの世界は大きな荒波にさらされています。コンソール系からフィーチャーフォン、スマートフォンへと主戦場が移り変わってきたこのマーケットは環境変化が極めて激しく、いかに新しい価値を生み出すかが、最も問われている分野です。セガサミーグループは、デジタルコンテンツ事業へのシフトを戦略として掲げ、着実に取り組みを加速していますが、より大胆にデジタルコンテンツ事業に舵を切っていくべきだと私は考えています。

Q.カジノ関連のビジネスに関する社外取締役としての見解を聞かせてください。

可能性があるなら挑戦すべきだし、私も推していきたい。

一般的にカジノはネガティブなイメージを持たれています。ではラスベガスはどうでしょう。カジノが社会に不利益を与えているとは聞きません。カジノが危険であるというのは単なる印象でしかなく、一方でシンガポール、マカオに見られるように、計り知れない経済効果を生み出し得るものです。現在、議論が進められている段階でありますが、大変素晴らしいビジネスチャンスであることは間違いありません。可能性がゼロであれば、社外取締役として当然牽制する考えですが、セガサミーグループには、無限の可能性があるわけですから、私は推していきたいと思います。

将来的には事業者としての選定を受ける必要があります。セガサミーグループは、合法化を見越した上で、選定確度を高めるべく、フェニックスリゾート(株)や、韓国Paradise Groupとの合弁、釡山の複合施設開発など、複合リゾート施設の運営経験を積んでいくための布石を打っています。大きな戦略を立て、打つべき「駒」を見極めて、リスクを管理しながら、恐れることなく着実に歩を進める。「非線形」に向けて、きちんとしたプロセスを踏んでいる戦略的な取り組みだと思います。もちろん、「駒」が真に可能性を高めるためのものかどうかについては、社外取締役としてきちんと監視しています。

Q.複合リゾート施設事業に関するリスク管理をどのように評価していますか。

成功の確率を高めるためのリスク管理は徹底されている。

複合リゾート施設への投資は一見派手に見えますが、実質的には大きなリスクを負ってはいません。例えば、フェニックスリゾート(株)についても、1990年代であれば数千億円規模の資産価値だったものを、大変リーズナブルな投資額で取得しています。韓国のプロジェクトも同様に、ポートフォリオ全体で見ると、グループの経営の根幹を揺るがすような規模ではありません。個々の案件のリスク管理についても、リスクや採算性などを細部に至るまで分析しています。取締役会にも驚くほど詳細な資料が用意され、私たち社外取締役を含む全経営陣が、案件の状況や自社のキャッシュ・ポジションなどを十分に理解した上で、意思決定しています。「勘」が入り込む余地など全くありません。新しい挑戦の成功確率を高めていくためのリスク管理は徹底されていると思います。

Q.デジタルコンテンツ事業では、具体的にどのような方向性で事業を拡大していくべきと考えていますか。

スクラッチから創り上げていくぐらいの気概が欲しい。

これまでにも、いくつかの成功事例が出ています。しかし、決してこの調子でいけば良いという気持ちになってはいけないと思います。この分野で元気が良い企業は格段に速いスピードで事業を展開していますし、長い歴史を持たない若い企業が、スケールの大きい事業を手がけることもしばしば目にします。セガサミーグループもそういった企業がやっていることを目指すべきだと思います。最近、他社がIPに頼ることなく大きな成功を収めました。エンタメ企業にとってIPが重要であることは否定しませんが、IPはあくまでも過去のものです。IPを拠り所にするのは、従来の延長線上での発想に過ぎず、スピードもスケールも大したものにはなりません。コンシューマ事業のありかたを根本から問い直すぐらいの気概を持って、ユーザーに本当に楽しんでもらえるものを、スクラッチから創り上げていくことが必要ではないかと思います。

Q.そこでは、どのような強みを発揮していくべきと考えていますか。

今後は、「規模」が大きな武器になる。

現在、多くのプレイヤーは、環境変化の大きさのあまり次第に余裕がなくなりつつあり、その荒波を乗り越えようと必死でもがいているのが実情です。一方のセガサミーグループは、デジタルコンテンツ分野の専業企業との比較で見ると、圧倒的に規模が大きい企業集団です。時価総額で見てもそうですし、財務基盤も盤石です。遊技機事業ほどのキャッシュカウを事業ポートフォリオに有しているゲーム会社は、ほかにありません。ボラティリティが高まるデジタルコンテンツの世界で、ある程度余裕を持って戦略を描くことができる。また、グループ全体の豊富な開発人材も活用できる。こういった「規模」が生み出すシナジーを存分に発揮すれば、先にお話ししたゼロからの価値創造を、他が真似できない大きなスケールで実現でき、現在の荒波も絶好のチャンスになると思います。

Q.取締役会の雰囲気はどうでしょうか。

社外取締役の私が心配するぐらい大騒ぎで議論しています。

セガサミーホールディングスの取締役会は、しばしば批判されることがある事前の根回しを入念に行い、いわゆる「シャンシャン」で済ませるような形骸化した取締役会ではありません。(株)セガやサミー(株)をはじめ、グループ各社の経営陣が出席し、とにかく徹底的に議論しています。社外取締役の私ですら「さらっと流せば良いのに」と心配になるぐらい、大騒ぎして議論し、紛糾することもしばしばです。もちろん私もそこで、遠慮は一切しません。思っていることを言いたい放題、言わせてもらっていますよ。

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