所信―再び「創造は生命」を体現する

6年ぶりに戻った（株）セガは、以前とは様変わりした事業環境に置かれています。特にコンシューマ事業は、10年前には想像すらできなかったマーケットに身を置き、全く新しいプレイヤーと対峙しています。

（株）セガには「創造は生命（いのち）」という社是があり、常に時代をリードする技術、ビジネスモデルでそれを体現しながら歴史を歩んできました。かつては、そういった姿がマーケットから支持され成長の原動力にもなってきましたが、近年はそうしたいわば「時代性」が影を潜めています。スマートフォンをはじめとする新しいアウトプットデバイスにエンタテインメントが乗っていく中で、製品の投入が遅れたのは、象徴的な例です。「時代を先取りし、創造は生命を体現する会社に再び戻したい」というのが、社長就任にあたって私が抱いた想いです。

私はその想いを実現させるために、ビジネスモデルとそれに対応する組織の構造を変えて、経営資源配分の最適化を行っていきたいと考えています。また、エンタテインメントを提供する場所を変えて、今までとは違うフィールドでも業界のイニシアチブを獲得していきたいと考えています。

「商売人たれ」

（株）セガはプロダクトアウトで成功体験を積み重ねてきました。また、アミューズメント関連事業は一貫して市場の発展をリードしてきましたが、それはあくまで関連する法律の枠組みの中でのことでした。もはやエンタテインメント業界は、業界の枠を超えたユーザー獲得競争に移行しており、いかに優れたアイデアやテクノロジーも、それらだけでは価値を生み出すことはできません。市場のトレンドを直感的に掴み、ニーズとマッチした時にのみヒット作を生み出すことができます。時代が変わったことを認識し、マーケットインの視点でコンテンツを生み出し、それを最大限に活用する姿勢を持つべきという想いを込めて、私は社内に「商売人になれ」と強く訴えています。（株）セガのスマートデバイス向け事業を分社化した（株）セガネットワークスは、まさに「商売人の集団」といえます。デジタルゲーム分野の世界では毎日のように新しいコンテンツが投入されており、常に「いかに目立つか」、「飽きさせないか」に頭を絞っています。徐々にではありますが、（株）セガにもこのような「商売人」の考えが浸透しつつあります。

（株）セガは、総合エンタテインメント企業です。収益性が低下している事業領域もありますが、貴重な「ユーザーの入り口」「IPの出口」を自ら放棄すべきではないというのが私の考えです。収益性が低下している事業は徹底的に補強し、新たなユーザー接点も創り出しながら、（株）セガが拡げるエンタテインメントの「Wing」を守り続け、さらに拡げていきたいと考えています。