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the GROUP 特集「Be A Game Changer」~革新者たれ~ 新生セガグループの成長戦略

新生セガグループは、「感動体験の創造」と新たなビジネスモデルの構築を通じ、ゲーム、業界、世の中を変える「Game Changer」への変革と、持続的な収益成長を実現していきます。 株式会社セガゲームス 代表取締役社長CEO 里見 治紀

新生セガグループ始動

持続的、安定的な収益成長を目指す

エンタテインメントコンテンツ事業の中核事業と位置付けるデジタルゲーム分野を担う(株)セガゲームスは、スマートデバイス向けゲームを(株)セガゲームス セガネットワークス カンパニー(以下、セガネットワークス)が、PC及び家庭用ゲームを(株)セガゲームス コンシューマ・オンラインカンパニー(以下、コンシューマ・オンライン)が担当するカンパニー制を採用しています。資産の効率的活用をはじめとした企業規模のメリットを享受すると同時に、両カンパニーのCOOのもと、意思決定の迅速化という分社化のメリットを維持することがその目的です。

ゲームビジネスは、ヒットタイトルの有無により収益が大きく変動するヒットビジネスです。そうしたリスクを抱えたままでは、中長期的な戦略や投資計画を描きにくく、株主・投資家の皆様にご心配をおかけしかねません。私は、旧(株)セガネットワークスでも一貫して追求してきた複数のヒットタイトルの積み重ねによる持続的、安定的な収益成長を実現するビジネスモデルを(株)セガゲームスでも創り上げていきます。

デジタルゲーム分野における競争優位

「ハイエンド化の時代」は「セガの時代」

セガネットワークスは、2012年7月に旧(株)セガのネットワーク事業の主要機能の会社分割により誕生して以来、デジタルゲーム分野の成長を牽引し続け、現在では売上、利益の両面でセガグループの稼ぎ頭になっています。

国内外のセガグループと協力会社の常時二桁以上のスタジオが開発及び運営ラインを並行して走らせ、業界トップクラスの厚みと多様性あるラインナップを構築しています。市場に投入するタイトルは、セガネットワークスのもとで集中管理されています。様々な業界で専門的なノウハウを蓄積してきた編成・運営・マーケティング、渉外、事業インフラ等の専門家集団が、最適なビジネスモデルの構築や効果的なマーケティングを追求しています。こうした潤沢な開発リソースとビジネスモデル構築の専門家集団のコンビネーションが、業界最高水準のヒット率を継続的に保持し、安定的な収益を創出する源泉です。

より長期的な視座で見ても、大きな強みになるものがあります。国内市場は、依然として緩やかに成長し続ける一方で、競争環境は変化しています。カジュアルゲームが中心であった黎明期の市場は、参入障壁が低く、様々なプレイヤーが参入する群雄割拠の様相を呈していました。その後、驚異的なスピードでスマートデバイスの性能が進化したことで、より高精細、より奥深い世界観へと、アプリのハイエンド化が進行しました。それに伴う開発・マーケティングコストの上昇に耐え得るプレイヤーは限られていることから、近年は上位企業への寡占化が顕著です。売上1位から3位にランクインするタイトルの月商規模が、2012年の5,000万円~1億円から2015年には20億円以上に上昇しているというデータが物語る通り、売上ランキングの上位に位置する企業は市場の成長率を上回る成長を遂げているのです。現在のこうしたトレンドを見通し、我々は一貫してハイエンドの領域に力点を置いてきました。この潮流は、やがてコンソールゲームと同等のクオリティに行き着くと考えています。そこではコンソールゲームと同様に、大勢のスタッフが一定の期間をかけて行う開発が求められるでしょう。セガグループが長きにわたり蓄積してきた大規模開発のノウハウが、大きな強みになっていくものと確信しています。また、開発コストの上昇局面では、人件費が安く抑えられる地域で行うオフショア開発やゲームエンジンの共用など、蓄えてきたコスト効率化の知見も競争優位になっていくと考えています。

業界トップクラスの開発リソース 約2,000名の開発人財

セガネットワークスの成長戦略

グローバルトップ3に向けた本格展開を開始

セガネットワークスでは、「グローバルトップ3」を目標に掲げています。「中ヒット」を安定的に創出し続けていくことが実現のカギだと考えています。大ヒットは狙って生み出せるものではありませんが、ヒットを確実に積み重ねていけば、その可能性を高めることができます。「グローバルマーケットでトップ3」を目指す上では、海外市場の攻略も極めて重要になります。セガネットワークスにおける海外売上高の比率を2015年3月期の約10%から早期に50%まで引き上げていく方針です。

2016年3月期は、層が厚い既存タイトルからの収益貢献に加え、2015年3月期にリリースを見送り、徹底的に作り込んできた主力タイトルを含む約20本の新作を投入することにより、セガサミーグループのデジタルゲーム分野全体では前期比58%増の大幅な売上成長を見込んでいます。複数人でプレイする「マルチプレイ」や、操作性やUI*1がさらに進化していく、「アクション性」、そして「IP/世界観」といった我々が重視する3つの短期的な市場トレンドを詰め込んだ自信作を続々と投入しています。

2015年4月にリリースした正統派RPG*2「オルタンシア・サーガ - 蒼の騎士団-」は、一日10万人を超えるユーザーが参加する史上最大規模のGvG*3タイトルに成長しています。5月にリリースした新時代ハンティングアクションRPG「モンスターギア」は、1ヶ月弱で200万ダウンロードを達成した後も計画を大幅に上回る伸びを続けています。また、8月にリリースした海洋冒険バトル「戦の海賊」も好調なスタートをきるなど、主力タイトルの本数が増加したことで、タイトルポートフォリオが着実に拡大しています。

  • *1 UI (User Interface)デバイスを利用する際の画面表示や操作感等
  • *2 RPG ロールプレイングゲーム
  • *3 GvG(Guild vs Guild)多くのプレイヤーの集団が戦うゲームシステム

海外では欧米と、急速に成長を遂げているアジアがともに1兆円規模の市場を形成しています。とりわけ台湾・香港・マカオなどの中国語の繁体字圏は、日本の文化と親和性が高いこともあり、大変有望な市場とにらんでいます。

当社では、大きく欧米とアジアに分けて戦略を推進しています。日本と文化的な親和性が高いアジアは、比較的スムーズな国内タイトルの展開が可能である一方、欧米はカルチャライズが求められるなど、異なるアプローチが必要になるためです。地域ごとに最適な運営やビジネスモデルが異なるため、経営リソースの共有を図りつつ、各市場で独立した経営体制のもと、自律的に独自の戦略を推進していきます。2015年3月期は、この方針を実行に移すための準備を全力で推し進めてきました。

完全子会社化したDemiurge Studios, Inc. (米国、デミアージュ スタジオ社)は、売上ランキングで上位を保持している「Marvel Puzzle Quest」を代表作に有するスタジオです。大手企業での豊富な開発実績を持ち、F2Pのビジネスモデルにも精通したメンバーが集結したIgnited Artists, Inc.(米国 以下、イグナイテッド アーティスト社)、には、設立時から参画しました。欧州でもSpace Ape Games (UK) Ltd.(英国 以下、スペース エイプゲームス社)を子会社に持つSpace Ape, Inc.の一部株式を取得しました。

アジアでは、台湾のAuer Media & Entertainment Corp.(アウル メディア エンタテインメント)と資本業務提携契約を締結しました。繁体字圏を中心に、従来のライセンスアウトや中国・韓国企業のタイトルの繁体字圏向けローカライズ、自社ブランドでの配信など、戦略の選択肢を拡げました。

これら4スタジオを新たに加えた現地開発体制のもと、セガネットワークスの2016年3月期は、①現地スタジオが現地向けに開発・配信・運営、②日本から日本のアプリを海外へ配信・運営、③国内で制作したタイトルを現地スタジオでローカライズし配信・運営、④現地パートナー企業へライセンスアウトしてパブリッシング委託という4方向で一気にパイプラインを3倍に拡充していきます。これにより、欧米では前期比256%増、アジアでは同463%増と飛躍的な売上拡大を目指します。

独立した経営体制のもと、独立した戦略を推進

アプリ間相互送客システム「Noah Pass」

ゲームをコアとするエコシステムが切り拓く無限の可能性

アプリ間の相互送客により、マーケティング活動の効率化・コスト低減を支援する「Noah Pass」は、そのエコシステムを急速に拡大しています。

参加企業数は、2013年8月のサービス開始時の15社から2015年5月には100社へ、総ユーザー数は、約2,000万から約1億超へ、参加タイトル数は500タイトルに迫る勢いで伸びています。2015年5月時点のMAU*4は、前年比126%増の1,119万に伸長しています。①無料であること、②戦略的な制約がなくオープンであること、③集客単価の低減、課金率・継続率の向上等、ヒットを増幅する上で極めて効果的であるといった特徴が、ゲームをコアとする経済圏の急速な拡大を支えています。

Noah Passには、例えば課金サービスやポータルサービスなど、ある業界や企業では持ち得ないファンクションを補完し合う「B to B Sharing」というコンセプトがあります。そのコンセプトのさらなる進化に向け、アプリ間相互送客に留まらない高付加価値サービスの提供を続々と開始しました。「Dashboard」はその一つです。

市場が規模の面で成熟期に近づくにつれて、効率的なマーケティングが難しくなっています。Dashboardは、Noah Passの膨大なトラフィックから導き出した分析結果や独自レポートと、(株)メタップスやデータセクション(株)といった提携先の分析データを組み合わせ、Noah Pass参加企業のマーケティングを強力に支援する新たな機能です。

様々な異業種との協業も加速しています。中でも(株)ディー・エヌ ・エーのマンガ雑誌アプリ「マンガボックス」の「恋と嘘」との相互送客では、相互に20万件の送客を実現するなど、電子コミックとの連携の有効性を示すことができました。(株)講談社と共同で取り組んだプロジェクトである無料マンガアプリ「マガジンポケット」とNoah Passの連携も進めています。

Noah Passそのものの収益化に向けた一歩も踏み出しました。ゲーム業界以外のバナー広告、来店誘導型インセンティブ広告を配信するO2O(Online to Offline)の広告収益化モデルの導入です。試験的に実施した飲食業の来店誘導型インセンティブ広告では、1タイトルが数十万食の販売増に繋がるなど、大きな成功事例を残すことができました。こうしたオフライン側(実店舗)の確かな効果に加え、オンライン側(ゲームアプリ)のNoah Pass参加企業に広告収益を分配する仕組みも大きな特徴です。こうした共存共栄のエコシステムを守り続けることが、Noah Passの発展に繋がっていくものと考えています。

  • *4 MAU Monthly Active Users 1ヶ月に1回以上アプリを利用したユーザー

アプリ間送客を主軸としたマーケティング支援ツール

コンシューマ・オンラインの事業戦略

海外大手パブリッシャーとの差別化推進

オンライン化を進める「Total War」 「Total War Arena」 © SEGA. SEGA and the SEGA logo are either registered trade marks or trade marks of SEGA Corporation.

当社は自社の開発部隊はもちろん、国内では「ペルソナ」シリーズなどを開発する(株)アトラス、海外では「Total War」シリーズを開発する英国のCreative Assembly(クリエイティブ アセンブリー社)や、「Football Manager」シリーズを開発する英国のSports Interactive(スポーツインタラクティブ社)、「Company Of Heroes」を開発するカナダのRelic Entertainment(レリック エンタテインメント社)など強力な開発会社を擁しています。PCゲームは「Steam」に代表されるダウンロード型電子配信ビジネスが欧米で堅調に規模を伸ばしている中で、当社のタイトルは好調に推移しています。引き続き成長を目指します。国内では3年目を迎えるオンラインネットワークRPG「ファンタシースターオンライン2」が現在も順調に推移しており、登録ID数350万のPC版や、PS Vita版、スマートフォン版に加え、先日には新たにPlayStation®4版を発表するなど、クロスプラットフォーム展開も積極的に行っています。

パッケージゲームもチャンスがあると考えています。国内では厳しい環境が続いていますが、世界的にはPlayStation®4が歴代PlayStation 史上最速で普及を続けており、当社を含め、日本でもこれから本格的にソフトが出そろってくるため、さらなる販売が期待できます。またアジアの繁体字圏では、コピー製品を買わないという倫理面・モラル面の意識変化があるなど、グローバルに視野を拡げるとビジネスチャンスが到来しています。

ただし、1タイトル数百億円もかけるような莫大な初期費用を投じて海外大手パブリッシャーに伍していく考えはありません。適正な規模のコストコントロールを通じて、パッケージゲームとデジタル配信・ダウンロードコンテンツを組み合わせながら、確実に利益を創出できるビジネスモデルを構築していきます。また、先日発売した「龍が如く0 誓いの場所」の繁体字版は好調な販売を記録しており、今後も同様に日本だけでなく日本のゲームの多言語化を進め、幅広い国に展開することを念頭に置いた計画を組み立て、投資効率を高めていきます。

一方、ゲームだけでなく、そこから生まれるIPの戦略的な育成に力を入れていきます。その一例として、北米ではCartoon Networkにて2014年秋より「Sonic Boom」のアニメ放送を開始しました。非常に高い評価をいただいており、その高評価を受けて様々な企業との商品展開も開始しています。今後はこの分野でも成功事例を増やし、ビジネスチャンスを拡げていきたいと考えています。

Be a Game Changer ~ 革新者たれ

再びセガブランドに輝きを取り戻す

セガグループでは、意識改革にも乗り出しました。

1990年代までの旧(株)セガは、創業時から受け継いできた「創造は生命(いのち)」という社是のもと、まさに革新者であり続けました。しかし、2000年代の長い低迷の過程で、先人が築き上げてきた輝かしい歴史に対する誇りを失ってきた感があります。私は、新たな船出にあたり「今一度、誇りを取り戻し、次の歴史を我々の世代で作っていこう」というメッセージを全社員に発信しました。

また、「創造は生命」を「新しい商品やサービスを作ること」と解釈する風潮が少なからずありました。時代の先端を行きながらも世の中に受け入れられなかったのは、そういった風潮が原因かもしれません。創造するのは、商品やサービスではなく、ファンの「感動体験」であるという認識に変えるべく、「創造は生命」を最も大切にする価値観とし、我々の存在意義、使命となるミッションを「感動体験を創造し続けよう」に再定義するとともに、将来のありたい姿としてビジョンを「Be a Game Changer ~革新者たれ~」と定めました。

ビデオを作成し社内啓蒙に努める

これを新生セガの指針とし、「ミッションビデオ」を制作して浸透に努めてきた結果、徐々に社員が誇りを取り戻しつつあることを肌で感じています。 世界中で築き上げてきた「セガブランド」は損なわれ、残念ながら現在の我々には「知名度」しかありません。徹底的にクオリティを追求し、期待値を超え続けることで信頼・信用を回復し、再び「セガブランド」に輝きを取り戻したいと考えています。

ゲームのあり方や業界のルール、世の中を変えていく「Game Changer」に向けて、前進を始めた新生セガグループにぜひご期待ください。

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