CFOメッセージ

常務取締役兼CFO 深澤 恒一
写真:深澤 恒一

「Road to 2020」を
財務戦略で強力に後押ししていきます。

CFOとしての使命

事業戦略の後押しと財務規律の維持の両面で
企業価値向上を実現していきます。

セガサミーホールディングス(株)は、持株会社としての機能を従来の各事業会社の戦略の「調整型」から、グループ全体の価値観の統合を通じた「企画立案型」へと再定義し、当社としてはじめてとなる中長期事業戦略「Road to 2020」を公表しました。

私はCFOとして財務戦略面から事業戦略を後押しし、併せて財務規律を維持する「ゴールキーパー」としての役割も担い、企業価値向上を実現していきたいと考えています。当グループでは、唯一の上場会社であるセガサミーホールディングス(株)が、資本市場や金融機関との対話も担うことになります。当グループの長期のビジョンと成功に導くための中期的な方向性などの戦略設計、それらに基づく短期的なパフォーマンスの丁寧なご説明に努める所存です。

「Road to 2020」の財務・資本戦略のポイント

国内IR(統合型リゾート)参入を見据え、
中期的な視座で財務戦略を推進していきます。

当グループは、2014年5月に構造改革本部を立ち上げ、将来の戦略を描くうえで土台となる既存事業のコスト構造改革により明確な成果を出しました。これに続く2016年3月期の事業構造改革では、事業ポートフォリオ管理の強化を図った上で事業仕分けを実施し、2017年3月期には縮小撤退事業の売却や、成長事業における投資等を着実に実行に移しました。こうして足場を固めつつ、新しいリーダーシップのもとで「Road to 2020」を打ち出し、経営目標として営業利益率15%、ROA 5%を定め、具体的なシナリオ、事業ごとの打ち手等、達成に向けた道筋を内外に明示しています。財務戦略では、必要となる資金の手当てや、それを可能とするための財務規律の整備等により、「コインの裏表」の関係性にある事業戦略を支えていきます。

「グローバルヒットタイトルの創出」を重点課題に掲げるデジタルゲーム分野を中心に、成長分野への研究開発費・コンテンツ制作費や広告宣伝費などの積極投資を後押ししていきます。「基盤事業」は、「現状維持事業」ではなくグループの長期戦略を成功に導くための「基幹事業」であり、遊技機事業をはじめとする基盤事業への投資も積極的に行っていく考えです。2018年3月期に投じる710億円の研究開発費・コンテンツ制作費のうち193億円を遊技機事業で投資する計画です。それらは2019年3月期及び2020年3月期のラインナップ構築に向けた中期的な時間軸で成果を見込む投資です。

当グループの長期的な事業戦略の柱は、国内IR(統合型リゾート)への参入です。まだIR実施法が成立していない段階であり、どのような事業構造になるか予想はできません。当グループは、IR(統合型リゾート)参入の際には、競合と渡り合える強固な財務体質を構築し、いかなるファイナンス形態にも対応できる資金調達の柔軟性を高めていくことを大変重要な経営課題と位置付けています。そのため格付け等を意識し、またボラティリティが大きい事業特性を鑑みて、現段階ではネットキャッシュポジションを維持していくことを優先しています。2017年3月期は、591億円という強い営業キャッシュ・フローになったこと等により、ネットキャッシュは964億円となりました。さらに、有利子負債を削減しコストを圧縮する一方で、コミットメントラインの確保等、機動的な資金調達の選択肢も拡げました。

当グループでは、数年かけて枠組みづくりを進めてきたグループの資金調達・運用の一元管理がスタートしました。今後はこの仕組みを有効に機能させ将来キャッシュ・フロー予測の精緻化や資金効率の向上、事業の収益性向上に繋げていきたいと考えています。

グラフ:2014年から2017年の預金残高・借入残高・ネットキャッシュの推移。ネットキャッシュは減少トレンドから脱却している

事業ポートフォリオ管理の強化

事業の収益性向上と併せ、資産の質の改善により
資産効率を高めていきます。

ROEではなくROAを重要指標と定めているのもネットキャッシュと同様の理由です。国内IR(統合型リゾート)への参入を控え、現在は自己資本の厚みを確保し、逆にレバレッジを抑制するステージにあります。加えて、自己資本の圧縮も選択肢に入るROEよりもROAのほうが事業会社の方向性とも合致し、グループで一体感を醸成する上でも有効であると判断しました。事業の収益性向上と並行して資産のリバランスによる資産効率の改善にも努めていきます。2017年3月期は、欧米におけるPCゲーム強化に向けてゲーム開発スタジオAmplitude Studios SASを買収する一方、韓国釡山の複合施設開発プロジェクトの中止、大阪心斎橋のアミューズメント施設の売却、屋内型テーマパーク「ジョイポリス」を運営する子会社の株式の一部売却を実施しました。

企画立案型に移行した持株会社として、グループポートフォリオ管理の高度化が着実に進展している実感はありますが、現状に満足したとたんに逆戻りしかねないという危機感も常に抱いています。単に利益の絶対額を追求するのではなく、持株会社はもとより事業会社ベースでも資本コストを強く意識し、エクイティスプレッドの拡大によって企業価値向上を実現していけるよう、ハードルレートの設定も選択肢に入れながら、事業ポートフォリオ管理を一層強化していきます。

ROAを重要指標と定めている理由

① 自己資本の厚みとレバレッジ抑制の必要性
  • 国内IR(統合型リゾート)への参入への備えとして手元資金を確保する必要性がある
  • 業態の特徴として業績のボラティリティが大きい中で安定的な成長投資を行っていくため
② 投資が固定資産に振り替わる可能性が高い
  • アミューズメント施設分野やリゾート事業
③ 事業会社が納得感を持って取り組むことができる
  • 事業会社に浸透させていく過程で理解を促しやすい
グラフ:2008年から2017年の自己資本比率・ROAの推移
図:今後は分子の拡大と資産管理の高度化によってROA 5%以上をめざす