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名越 稔洋

名越 稔洋

(株)セガゲームス 取締役CPO(最高開発責任者)
(株)セガ・ インタラクティブ 取締役CPO

PROFILE

1989年セガ入社。全世界累計1,100万本を超える販売本数を記録している「龍が如く」シリーズを世に送り出す。

星野 歩

星野 歩

サミー(株) 代表取締役常務
研究開発統括本部長 兼 開発推進本部長

PROFILE

1995年サミー入社。累計販売本数62万台以上というパチスロ遊技機の歴代販売ランキング1位を誇る「パチスロ北斗の拳」などの製品企画を指揮

共通する「尖った」モノづくり

名越 稔洋

名越

私がセガに入社した当時は業務用アーケードゲームが花形でした。家庭用ゲームは先行企業に挑戦している真っ最中で、なかなか先行企業には手が届かずに、そのうちハードウェアからは撤退してしまいましたけど、当時から現在に至るまでまったく変わらないのは、社員に対して非常に信頼してくれる会社だという点ですね。ユーザーのニーズと我々が提案したいものの接点を求めるのがマーケティングの基本ですが、当社は何よりも作り手の情熱に信頼を置き、作り手の尖ったアイデアをそのまま商品として世に送り出してきました。そのため、セガの尖り方には他社にない独特な評価があるのだと思います。販売や、マーケティングにしても、「尖っていること」に誇りを持ってくれています。これは良い面であると同時に、リスクにもなり得ます。そのあたりの他社にないものを追求する姿勢って、サミーと共通する考え方なんじゃないでしょうか。

星野 歩

星野

そうですね。「尖っている」ことを尊重するという点では、サミーも同じです。20年ほど前の当社は、本当に三流メーカー、四流メーカーともいえるポジションでした。ブランド力では大手にまったくかなわなかったため、どうしたら製品に目を留めてもらえるかを考えた結果、業界初の機能を積んでいけば、せめて興味は持ってもらえるという答えに行き着きました。現在の「新しいものはサミーから」という標語すらない時代のことです。常に何らかの新しい機能や遊びを盛り込んだ結果、失敗することもよくあり、それこそ新機種も3割ヒットすればいいというくらいのレベルでやっている中で、常にチャレンジする意識が社員に根付いて今に至っています。「ちょっと早すぎるかな」ということもありましたが、これはセガも同じですよね。

名越 稔洋

名越

確かに、セガも常に他社より先を行く姿勢で攻めていたからこそ、評価を得たのだと思います。例えば、「ファンタシースターオンライン」は、ブロードバンドがほとんど普及していない時代に、業界初のネットワーク対応RPGとして世に送り出しました。斬新なアイデアは、実現した先に大きな驚きがあることは確かですが、絵に描いた餅で終わるリスクもあります。そういった挑戦を辛抱強く磨き上げた結果、先進性で他社を圧倒する作品を生み出し、多くのユーザーから長きにわたり愛され続ける製品を生み出すことができるのだと思います。

また、そうやって攻めた仕事をした際は、後に必ず繋がっていくと思いますし、「龍が如く」もそんな製品の一つです。私は大学時代に映画の勉強をしていたのですが、映画は有名な俳優や女優が出ているから見に行くのに、ゲームにはなぜそういったものがないのかと不思議でしょうがありませんでした。映画やドラマのように、ゲームにも俳優が出たら面白いのではないかと考えはじめたのが「龍が如く」の着想の原点です。その後も、同じようなコンセプトのタイトルが他社から登場するだろうと予想していましたが、結果的に続くようなものは出てきていません。以前に、他社さんに「今からだと『龍が如く』に勝てないからやらない」と言われたのが印象に残っていますが、それは僕らが攻め続け、常に進化し続けたからこそ確立できたことだと思いますし、あのチームだからこそできたことだと思います。

そんな「龍が如く」も、海外ではついこの間まで販売本数は数万本程度に留まっていましたが、段々と評価されてきており、最近では海外での販売本数も増加しつつあります。これまで、日本で徹底的に攻め抜いた魅力が、時間をかけて伝播し、そこには作り手のエネルギーがこもっているので、それをユーザーが感じて手に取ってもらえているのではないでしょうか。

今更ではありますが、あの仕事を通じて自分を高めることができたという実感がありますし、その背中を部下がまた見てくれる。それが次世代に「創造のDNA」を受け継いでいくということではないかと思います。

星野 歩

星野

攻め続けることの重要性ということでは、新基準機の申請がまさにその通りです。2018年2月に施行された遊技機の規則改正に伴い、各メーカーは新規則での型式試験に臨んでいます。最初は無難なスペックの機械で申請して適合をとり、徐々にステップアップしていくのが普通かもしれませんが、サミーは適合を取得できない可能性を恐れず、魅力的な機械を追求し、最初から妥協のないスペックで試験に挑んでいます。

セガもサミーも業界の中では開発において、スピードよりもクオリティを重視しているという点で同じではないでしょうか。サミーは、中途半端な状態で発売するくらいなら、次の期に回す意識で臨むべきという考えです。「Road to 2020」で取り組んでいる開発期間の短縮化の目的も、機械を早く世に出すことではなく、開発期間を短縮してできた時間で、機械を徹底的にブラッシュアップしていくことが真の狙いです。

足元の業績目標達成を重視するがあまり、数字合わせのためだけのモノづくりはしてはいけないと思っています。いつでも最高の機械で遊びたいと思っていただいているお客様の期待は裏切らないです。数字にもこだわるとすれば、少し前倒しで開発を進めることで、いったん完成してからその機械を何度も試打して、より面白く磨き上げていくことが重要だと思います。

名越 稔洋

名越

「クオリティを上げるための時間はやるが、数字を下げるな」という相反するものを実現できたときが、変化に対応するための基礎体力がついた時だと思います。セガは以前、計画通りにやっても、赤字になることがありました。何が足りなかったかというと「変化」だったと思います。今のマネジメント層は変化を好むため、毎日のように指示が変わります。正直言うと、あの厳しさに現場は大変もまれていますが、数字は断然良くなっています。そういった変化を続けていくことが今の混沌とした時代の中で勝ち抜くことなのだと思いますね。

星野 歩

数字合わせだけの
ものづくりはしていません。

星野 歩

名越 稔洋

攻めた仕事は
必ず次に繋がります。

名越 稔洋

星野 歩

星野

やはり、前に進むためには変化し続けていくことが重要だと思います。サミーでは、積極的に変化を重ねていいものを作るという事に加えて、部品のリユースやリサイクルといった面でのコスト意識がかなり高まってきています。開発者の創りたいものに資金をかけてきた過去の姿勢から、費用をかけるべきところと抑えるところのメリハリをつけ、投資に対するリターンを追求しながらも、ユーザーが満足できるモノづくりをしていくべきだと現場の意識がまさに変化してきています。

名越 稔洋

名越

セガも「Road to 2020」のもと、新たなIPの創出や過去のIPのリバイバルなど、IPに対する投資を積極的に行っています。リバイバルIPでは一定の成果を上げていますが、IPは当時のファンだけでなく、現在のユーザーに対してお届けするということを忘れてはならないと考えています。過去の成功体験を過信し、単純にそれをなぞるだけでは、今の世の中に受け入れられるものを生み出すことはできません。2020年のさらにその先も見据え、今まで以上に強気に先を行く開発姿勢で、主軸級の商品を増やしていきたいと考えています。

今年は夏にオフィスが統合されるなど、セガサミーグループにとって大きな変化の1年です。これまでも、プロジェクトテーマごとにサミーとの関わりはそれなりにありましたが、どうしても物理的な時間のズレが生じていました。オフィス統合によって、お互いの情報交換も活発化して、連携のスピードも上がると期待しています。

製品開発に携わるセガ社員にとっても、サミーの開発と話ができることが、いい刺激に繋がるのではないかと思います。

星野 歩

星野

そうですね、サミーの社員にとっても非常にいい刺激になると思います。物理的な距離が縮まることで、人財交流の場も増えると思いますし、例えば、新オフィスでは食堂ができるので、食堂で飲みながらでも新しいイノベーションが生まれて、お互いにいいモノづくりの考え方が共有できれば、今までの体制では思いつかなかったまったく新しい開発プロジェクトが生まれることもあるんじゃないかと思います。日常的な交流の活性化から人財流動性の向上に繋げていき、多くの社員にグループの多様性を経験させられる体制を中長期的に整えていきたいですね。

名越 稔洋

名越

世間からはセガはセガ、サミーはサミーと分けて見られることがまだ多く、「セガサミー」という括りで評価される場面を増やしていくことが今後の課題だと思っています。オフィス統合が、両社がそれぞれ受け継いできた「創造のDNA」は活かしつつ、セガサミーブランドとしての価値観を一致させることで、グループのブランド力を高めていくきっかけになればと考えています。

知財とビジネスの持続性の関係性

知的財産(IP)は、価値創造の源泉です。競争力あるIPを保有するエンタテインメント企業は、安定的な収益が実現でき、その有効活用を通じて、IPの価値を幾重にも拡大できます。IPの新規創出力、外部からの導入に際しての目利きの能力、並びにIPの保護体制の整備も、エンタテインメント企業の競争力に大きな影響を及ぼします。