• TEAM T
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • R
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  • E
  • 三菱自動車岡崎
  • 0
  • 1
  • 0
  • 0
  • 2
  • 0
  • 1
  • 2
  • 0
  • 6
  • 0
  • 0
  • セガサミー
  • 0
  • 0
  • 3
  • 1
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 3x
  • 7
  • 0
  • 0

BATTERY

上津原、木村-坂田

HOMERUN

大西(9回2ラン)

戦評COMMENT

桜満開!打線爆発!!第57回JABA静岡大会1回戦は、2点を追う9回裏、代打大西主晃の2ラン本塁打で同点、さらに攻め立て最後は主将照屋真人の執念の一打でサヨナラ勝利を収めた。同大会は3年連続の初戦突破。11安打7得点と勢いづくチームは、東京スポニチ大会で苦汁を飲まされたHondaとの2回戦に駒を進めた。

 

日は、どっぷりと暮れていた。漆黒の闇と同様、2点のビハインドに一塁側ベンチは沈みかけていた。3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシックでのイチローの言葉を借りれば、まさに心が折れそうになった。
だがそんな負のイメージは、極度の打撃不振に喘いでいた男の意地のひと振りで払拭される。
9回裏、この回先頭の7番手塚翔が「大きかった」と振り返る四球で出塁。続く8番城下尚也は3回裏に左翼線への同点二塁打、4回裏にも追加点となる犠飛をマークし、結果を残していた。試合前、城下はこう語っていたものだ。 「(今シーズンは)大学時代も含めて一番苦しい。結果が出ない。でも、今この時期の苦しさは、今後絶対にプラスになると思います」
そんな中、この試合で「第一打席からいい感じで振れていた」城下は、失いかけていた自信を取り戻していた。だが、ここでベンチが動く。
「手塚の四球で流れがくると思った」
佐々木誠監督の直感と眼力で、代打に指名されたのが大西主晃だった。
「割り切って、思いきり振りました」
三菱自動車岡崎の1年目右腕・倉谷投手が投じた初球、膝元に食い込んでくるスライダーだった。体勢を崩しながらも、バットの芯でとらえた打球が右翼スタンドへ一直線に伸びる。同点の2ラン本塁打――。
「まったく結果が残せない中でも代打で使ってもらっていたので何とかしたかった」
今シーズン、城下同様に打撃に精彩を欠いていた大西はオープン戦を含めて1安打。この試合の一発は、公式戦初安打だった。
沸きあがるベンチ。完全に息を吹き返したチームは、さらに9番宮之原裕樹の四球、1番久保穣のバント内野安打で無死一、二塁と攻め立てる。2番佐藤琢真の絶妙な三塁線への犠打で一死二、三塁。1回裏の第一打席、無死一塁で犠打を失敗した佐藤琢は「最初のバント失敗がこの試合の苦しい流れを作ってしまった。でも最後、何とか仕事ができてよかった」と胸を撫で下ろした。続く打者は、3番照屋真人。初球を叩いた打球が、前進守備の一、二塁間を破る。三塁走者の宮之原が7点目のホームを踏むと、一塁側ベンチの前に歓喜の輪ができた。照屋が語る。
「(サヨナラ打は)飛んだコースがよかっただけ。今日は大西ですよ!」
試合を振り返る佐々木監督の声も力強い。
「先発の上津原(詳)の調子が上がらない中で野手がよくカバーしてくれました。勝負は、下駄を履くまでわかりませんね。次の試合も野手の奮起に期待しています」
勝利の瞬間、疲労感は充実感に変わった。早朝8時に東京八王子市の野球部寮を出発してから10時間40分後のことだった。4番捕手として出場、スタメンで唯一無安打に終わった坂田精二郎が言う。
「今日は長い1日でしたね」
だがその顔には、自身の結果よりもチームの勝利を噛み締めるベテランの味わい深い笑顔が広がっていた。