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BATTERY

上津原-乗替、谷澤

戦評COMMENT

先発の上津原詳が5安打無失点の完封勝利だ!打線は5回表、9番宮之原裕樹、3番宮﨑祐樹のタイムリー安打で一挙3点を奪う。全国大会初優勝に輝いたチームは、秋に行なわれる日本選手権への出場権を獲得した。

 

上津原詳が両手を突き上げる。6-4-3の併殺が決まり、三塁手の久保稔が、遊撃手の宮之原裕樹が、捕手の谷澤恭平がいち早く右腕に駆け寄るなか、マウンド上には大輪の花が咲いた。
この瞬間を多くの人と共有したい――。
創部5年目にして初めて辿り着いた全国大会の頂。その勲章を手にした瞬間、心の底から、そう思えた。
準決勝で見せた力は本物だった。第58回JABA静岡大会決勝。試合が動いたのは中盤だった。両チーム無得点で迎えた5回表、この回先頭の7番手塚翔が中前安打で出塁すると、8番乗替寿朗が犠打を決めて一死二塁。ここで9番宮之原がカウント2-3と追い込まれながら、しぶとく左前安打を放って先取点を奪う。さらに攻撃の手を緩めないチームは二死二、三塁として、打席に3番宮﨑祐樹を迎える。初球はボール球だった。ここで宮﨑が、打席の立ち位置をバッターボックス後方(捕手寄り)に変えた。真相はこうだ。
「初めはチェンジアップを狙っていたので投手寄りに立っていました。でも、2球目の前に黒川(洋行)コーチの『自分らしく行け』という言葉が聞こえて。『当てに行っている』、確かにそう思って自分本来のバッティングに戻そうと立ち位置を変えました」
小細工はいらない。来た球を持ち味のフルスイングでとらえる。原点回帰で勝負に挑んだ。また、打席に入る前に犠打でチャンスを広げた2番照屋真人から声を掛けられていた。
「お前に任せた」
宮﨑は、その言葉を再びかみ締めた。
カウント0-3からの4球目(ファール)を強振できたのも、自らのバッティングスタイルを取り戻していたからこそ。結果的に5球目の内角ストレートを叩いて左翼線への2点タイムリー二塁打。それは、4球目を強振できた積極的な気持ちがもたらした一打だったとも言える。
主導権を握ったあとの先発・上津原のピッチングは、さらに躍動した。
「初戦(東海REX戦)で、ああいうピッチング(勝利投手も7回11安打4失点)をしたので、最終日までの3日間で気持ちと投球フォームをしっかりと調整して臨みました。今日は、思い通りに投げられました。連打がなく、ランナーを出しても集中力を切らさずに投げることができました」
昨年09年のJABA岡山大会。決勝で先発を託された上津原は2回6安打6失点と打ち込まれた。自らの不甲斐ない投球で優勝を逃した苦い記憶だ。だからこそ、「同じように先発をさせてもらったので、何とか期待に応えたかった」とも話す。
大会MVPにつながる完封勝利は、昨年のリベンジを果たすとともに、チームの新たな扉を開く原動力となった。
試合後の三塁側ベンチ。安堵と達成感に包まれた表情で佐々木誠監督はこう言った。
「いつも厳しいことばかり言っていますが、今日は(試合レポートで)選手たちを褒めておいてください」
そして、言葉を加える。
「創部5年目の節目の年に結果を出すことができました。大会を振り返れば、投打の中心がよく頑張って、それを周りの人間がよくカバーしてくれた。地に足をつけた大人の野球ができたと思います。監督が選ぶ大会MVP?投手なら木村。野手では、打線の中軸を担った宮﨑と十九浦、捕手の谷澤と乗替といった2年目の選手たち、そして、つなぐバッティングと堅守で貢献した照屋と宮之原かな」
そう語り終えた指揮官の表情は、さらに柔らかさを増した。
実はこの日、佐々木監督は準決勝前から帽子の中に桜の花びらを2枚忍ばせていた。
「お守りですよ。今日こそは(優勝を)獲りたいね」
決勝進出を決めた直後にはそう語り、球場周辺に舞う桜の花びらをジッと見つめていた。
2010年4月7日、鮮やかに色づいた桜が満開を迎えた浜松市営球場。その地で指揮官の思い、そしてチームの積み重ねてきた努力は結実した。