• TEAM T
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  • 6
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  • 8
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  • 東邦ガス
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  • 7
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  • セガサミー
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BATTERY

上津原、齊藤、南-坂田

HOMERUN

川端(3回ソロ)

戦評COMMENT

闘将は、静かに語り始めた。
「……力を発揮できませんでした。都市対抗予選もそうでしたが、ここ一番でのメンタルの弱さが出てしまった。流れが悪かったですね。点を取っても取り返される、悪い流れでした」
あれだけ打たれては――。度重なる失点シーンを思い起こし、佐々木誠監督はそうも語る。
止まらない。1回表、先発の上津原詳が一死三塁から左翼への犠飛で1点を先制される。2回表には7番打者に左中間へソロアーチを食らう。先制の起点となった三塁打、2回表の一発は、ともに3ボール1ストライクと不利なカウントからの一撃だった。バックネット裏でサポートに回っていた渡邉裕之が語る。
「本来とは違い、ボールがきてなかった。全体的に高く、コントロールが悪かった」
上津原の不調は、東海大相模高時代からエースナンバーを競い合った球友の目にも明らかに映っていた。
時折、小さな雨粒が雨雲からこぼれる。まるで鏡のように、穏やかではない空は右腕の心中を映し出しているかのようだった。3回表には連打と死球で一死満塁とされると、6番打者に初球を左翼に運ばれて犠飛で1失点。攻撃陣が2回裏、8番赤堀大智の左前適時打で1点、3回裏には1番川端裕也の右翼席へのソロアーチで追いすがるも、この日の上津原は立ち直るきっかけを完全に失っていた。捕手の坂田精二郎がかばう。
「球種を狙われていた云々よりも、相手打線が一枚上でした。ああいう流れになってしまっては、なかなか勢いを止められない」
佐々木監督も、同様の気持ちはあった。
「信用しているピッチャーが打たれてしまったのだから仕方がない。これまでウチは上津原で勝ってきたチームですからね。そのあとの齊藤(勝)も今年一年よく頑張ってくれましたし……」
2番手で登板した齊藤は4回表、一死から中前安打で出塁した走者を犠打で二塁に進められると、3番打者に左前へ弾かれて1失点。さらに四球で二死一、二塁とすると5番打者には中前適時打を放たれ、このイニング2点目を献上する。5回表も一死一塁から犠打で走者を送られ、後続に単打、長打を浴びて2点を失う。初回から主導権を握り、勝負と見るや一死からでも手堅く走者を得点圏に進め、その好機を逃さぬ一打で点を積み重ねた相手攻撃陣。前半5回まで毎回失点。序盤の反撃ムードも、強打、試合巧者の東邦ガスの前に一掃された。
試合後、今大会を最後に勇退となる佐々木監督の脳裏をコーチ時代も含めた5年の歳月が駆け足で過ぎた。
「社会人野球を経験して、野球の厳しさや楽しさを改めて実感できました。しびれる試合の連続は新鮮でした。人には出会いもあれば、別れもある。選手たちには、これから先の新しい出会いを大切にしてほしい。歴史を積み重ねた伝統あるチームとの差は、正直まだあると思います。でも、5年という年月で積み重ねてきた力は大きなものがあります。勝ち続けるにはどうするか。そのことを考えて、これからさらにレベルを上げていってほしいと思います。今日は、力を発揮させてやれなかったことが悔しいし、申し訳ない」
選手に囲まれたミーティングでは、こらえていたはずの感情が涙と変わり、光った。
そして、佐々木監督は万感の思いで選手たちにこう語りかけた。
「強くなってくれ」
その言葉を実らせたときこそが、新たな部史の始まり。そして、それこそが野球部の礎を築いた闘将への何よりの恩返しになるはずだ。