HOME 試合情報 試合結果 第三代表決定戦 試合日程・結果 2012.06.05 [Tue] 第83回都市対抗野球大会 東京都二次予選第三代表決定戦 vs 東京ガス 神宮球場 前の試合へ 次の試合へ TEAM T 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E 東京ガス 東 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 セガサミー セ 1 0 1 0 1 0 0 1 x 4 0 0 BATTERY 浦野-乗替 HOMERUN 十九浦(5回ソロ) 選手成績 戦評 速報 戦評COMMENT 心のダムが決壊した。涙に変わった感情を、抑えることができなかった。 止まらない。喜びに沸く三塁側ベンチで、宮崎敏郎、乗替寿朗、川端裕也、宮之原裕樹、そして照屋真人までもが男涙を流した。今予選を迎える前、照屋は心に誓っていた。 「たとえヒットを打ってもガッツポーズはしない」 この試合でも、3回裏に二死一、二塁から大きな追加点を生み出す中前安打を放ったが感情は表に出さなかった。2日前の第二代表決定戦で敗れ、チームは沈んだ。「それでも平常心。いや、そういう時こそ平常心」。創部年からチームを支え続け、2006年の第一代表決定戦からの5連敗を知る照屋は、最後まで冷静な自分であり続けようとした。それでも、9回表。右翼への飛球を自らのグラブに収めると、自然と涙が溢れてきた。 勝てる――。そう確信した瞬間だった。 重圧はあった。負ければ最後、本大会出場を逃す大一番だ。「負けられない」状況は選手たちを追い詰めた。宮崎敏郎が振り返る。 「絶対に負けられない、勝たなければいけないというプレッシャーは相当ありました。それでも、体の疲れもありながら最高のパフォーマンスをしなければいけない。打たなければいけなかった」 心の重荷を振り払ったのが1回裏だ。一死二塁、3番宮崎はフルカウントからのストレートを強振して、右中間へ先制打を放った。「頼む、抜けてくれ!」。心の奥で叫んだ。 「とにかく、この試合では先制点がほしかった。チャンスだったので何とかしようと思いました。自分にはバットしかない。打ったらどうにかなる。ただそう思って振り抜きました」 その一打で、宮崎の心は少しだけ晴れた。それでも試合後は涙が止まらなかった。 「第一代表から落ちてきた中で第三代表決定戦を迎え、これまでなかなか味わったことのない緊張感がありましたから。勝てて本当によかったです」 宮崎の先制打、3回表に飛び出した照屋の適時打に続いたのは、4番の十九浦拓哉だった。5回裏、二死となって回ってきた第三打席。フルカウントから、十九浦曰く「スライダーかカーブ」の変化球を右翼スタンドに完璧に運んだ。勝利をグッと手繰り寄せる豪快弾は、十九浦にとって入社以来初めてとなる都市対抗予選でのメモリアルアーチだった。 「変化球だけを待っていました。打った瞬間は『行け~!』『頼む、入ってくれ』と思いました。とにかく自分の役割をすること。ただそれだけを考え、そして浦野(博司)がしっかりと投げていたので『1点でも多く点を取ってやろう』という思いでした。その中で結果が出てよかったです」 野手の思いと力は先発浦野のピッチングを加速させた。1回表にヒットと死球で一、二塁のピンチを迎えたが、2回以降は一度も得点圏に走者を進めない。4回表、5回表と2イニング連続でヒットを浴びたが、ともに併殺で切り抜けて点を与えなかった。浦野が振り返る。 「今日は多少の失点は覚悟しました。相手は初戦で対戦した東京ガス。それだけに簡単には勝てないだろうと思っていました。それでも野手の守備に助けられながら、乗替さんのミットをめがけて開き直って投げることができました」 宮澤久嗣トレーナーが明かす。 「今日の浦野は試合に入り込んでいました。試合前の集中力はすごかった」 「隙を見せたくないですから」という浦野は、どれだけスコアボードに『0』を並べても冷静さを失わなかった。 「常に『0対0』のつもりで、気を緩めずに最後まで投げました。結果的に点を与えなかったのでよかった。1年目からこんな良い経験をさせていただいて、本当にありがたい」 3安打完封。今予選を通じても5試合中4試合で先発して3勝をマークするなど、安定感は際立った。チームの信頼は絶大だ。西詰嘉明監督が1年目右腕をこう語る。 「浦野は崩れることがない。2点以内に抑えてくれると思っていたので、攻撃陣には『3点は取ろう』と試合前に言っていました。でも結果的に点を与えない。後ろ(抑え)には信頼する木村(宜志)が控えていて、いつでも代えられる状態ではあったんですが、終盤まで3安打でいきましたからね。代えるタイミングがありませんでした。本当は7年目の木村にも投げさせたいという思いはありましたよ。だから、木村には『東京ドームで優勝する時にマウンドに立ってもらう』と言いました。まあいずれにせよ、今日の試合も含めて予選の浦野はよかった」 そして、西詰監督は予選をこう総括する。 「苦しみました。最後は『技術ではない』というところで選手たちがよく気持ちを切り替えて頑張ってくれました。今年1月5日にシーズンをスタートさせ、その時に『予選は通過点。日本一を獲ろう』と選手たちに言いました。予選では苦しみましたが、代表権を獲り、今こうして日本一を獲るチャンスを掴みました。本大会では、もう一度その気持ちを強く持って戦いたいと思います」 苦しみ、耐えて乗り越えた予選を終え、挑む本大会での戦い。東京ドームには、予選で流した涙より、喜びに満ちた溢れんばかりの笑顔がよく似合う。 前へ 1 次へ 前の試合へ 試合結果一覧 次の試合へ
戦評COMMENT
心のダムが決壊した。涙に変わった感情を、抑えることができなかった。
止まらない。喜びに沸く三塁側ベンチで、宮崎敏郎、乗替寿朗、川端裕也、宮之原裕樹、そして照屋真人までもが男涙を流した。今予選を迎える前、照屋は心に誓っていた。
「たとえヒットを打ってもガッツポーズはしない」
この試合でも、3回裏に二死一、二塁から大きな追加点を生み出す中前安打を放ったが感情は表に出さなかった。2日前の第二代表決定戦で敗れ、チームは沈んだ。「それでも平常心。いや、そういう時こそ平常心」。創部年からチームを支え続け、2006年の第一代表決定戦からの5連敗を知る照屋は、最後まで冷静な自分であり続けようとした。それでも、9回表。右翼への飛球を自らのグラブに収めると、自然と涙が溢れてきた。
勝てる――。そう確信した瞬間だった。
重圧はあった。負ければ最後、本大会出場を逃す大一番だ。「負けられない」状況は選手たちを追い詰めた。宮崎敏郎が振り返る。
「絶対に負けられない、勝たなければいけないというプレッシャーは相当ありました。それでも、体の疲れもありながら最高のパフォーマンスをしなければいけない。打たなければいけなかった」
心の重荷を振り払ったのが1回裏だ。一死二塁、3番宮崎はフルカウントからのストレートを強振して、右中間へ先制打を放った。「頼む、抜けてくれ!」。心の奥で叫んだ。
「とにかく、この試合では先制点がほしかった。チャンスだったので何とかしようと思いました。自分にはバットしかない。打ったらどうにかなる。ただそう思って振り抜きました」
その一打で、宮崎の心は少しだけ晴れた。それでも試合後は涙が止まらなかった。
「第一代表から落ちてきた中で第三代表決定戦を迎え、これまでなかなか味わったことのない緊張感がありましたから。勝てて本当によかったです」
宮崎の先制打、3回表に飛び出した照屋の適時打に続いたのは、4番の十九浦拓哉だった。5回裏、二死となって回ってきた第三打席。フルカウントから、十九浦曰く「スライダーかカーブ」の変化球を右翼スタンドに完璧に運んだ。勝利をグッと手繰り寄せる豪快弾は、十九浦にとって入社以来初めてとなる都市対抗予選でのメモリアルアーチだった。
「変化球だけを待っていました。打った瞬間は『行け~!』『頼む、入ってくれ』と思いました。とにかく自分の役割をすること。ただそれだけを考え、そして浦野(博司)がしっかりと投げていたので『1点でも多く点を取ってやろう』という思いでした。その中で結果が出てよかったです」
野手の思いと力は先発浦野のピッチングを加速させた。1回表にヒットと死球で一、二塁のピンチを迎えたが、2回以降は一度も得点圏に走者を進めない。4回表、5回表と2イニング連続でヒットを浴びたが、ともに併殺で切り抜けて点を与えなかった。浦野が振り返る。
「今日は多少の失点は覚悟しました。相手は初戦で対戦した東京ガス。それだけに簡単には勝てないだろうと思っていました。それでも野手の守備に助けられながら、乗替さんのミットをめがけて開き直って投げることができました」
宮澤久嗣トレーナーが明かす。
「今日の浦野は試合に入り込んでいました。試合前の集中力はすごかった」
「隙を見せたくないですから」という浦野は、どれだけスコアボードに『0』を並べても冷静さを失わなかった。
「常に『0対0』のつもりで、気を緩めずに最後まで投げました。結果的に点を与えなかったのでよかった。1年目からこんな良い経験をさせていただいて、本当にありがたい」
3安打完封。今予選を通じても5試合中4試合で先発して3勝をマークするなど、安定感は際立った。チームの信頼は絶大だ。西詰嘉明監督が1年目右腕をこう語る。
「浦野は崩れることがない。2点以内に抑えてくれると思っていたので、攻撃陣には『3点は取ろう』と試合前に言っていました。でも結果的に点を与えない。後ろ(抑え)には信頼する木村(宜志)が控えていて、いつでも代えられる状態ではあったんですが、終盤まで3安打でいきましたからね。代えるタイミングがありませんでした。本当は7年目の木村にも投げさせたいという思いはありましたよ。だから、木村には『東京ドームで優勝する時にマウンドに立ってもらう』と言いました。まあいずれにせよ、今日の試合も含めて予選の浦野はよかった」
そして、西詰監督は予選をこう総括する。
「苦しみました。最後は『技術ではない』というところで選手たちがよく気持ちを切り替えて頑張ってくれました。今年1月5日にシーズンをスタートさせ、その時に『予選は通過点。日本一を獲ろう』と選手たちに言いました。予選では苦しみましたが、代表権を獲り、今こうして日本一を獲るチャンスを掴みました。本大会では、もう一度その気持ちを強く持って戦いたいと思います」
苦しみ、耐えて乗り越えた予選を終え、挑む本大会での戦い。東京ドームには、予選で流した涙より、喜びに満ちた溢れんばかりの笑顔がよく似合う。