• TEAM T
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • R
  • H
  • E
  • セガサミー
  • 0
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  • 2
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  • 1
  • 0
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  • 0
  • 0
  • 3
  • 0
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  • 三菱重工神戸
  • 2
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  • 1
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  • x
  • 4
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BATTERY

陶久、大山-乗替

HOMERUN

宮之原(3回2ラン)

戦評COMMENT

グラウンドからわずかに離れた静かな場所で、宮之原裕樹は言葉をかみ締めた。
「勝ちたかった・・・」
散りゆく桜の花びらが、風に揺られて目の前を通り抜けていった。
勝ちへの執念は最後まで持ち続けた。
初回の攻防。2つの四球をもらいながら無得点に終わった直後の1回裏、先発の陶久亮太が手痛い一発を食らう。死球と盗塁で二死二塁とされると、三菱重工神戸の4番大島選手に1ストライクからの2球目を左翼スタンドに運ばれた。2ラン本塁打。捕手・乗替寿朗のサインは、打者の様子を見るためのウエストボール(見せ球)だった。乗替が悔やむ。
「ボール球を要求した中で甘く入ってしまった。今思えば、(見せ球は)必要なかったかもしれない。僕の配球ミスです」
立ち上がりの失点に、一度はチームに暗雲が立ち込める。
2回表には5番谷澤恭平の四球を足がかりに二死二塁と攻め、8番乗替に三遊間安打が飛び出す。だが、二塁走者の谷澤がホームでタッチアウト。反撃の芽を摘み取られ、嫌な空気を払拭することはできなかった。
だが、3回表。立ち込める暗雲を切り裂く、豪快な一発が飛び出した。
一死から1番江藤圭樹が中前安打を放って出塁。打席に2番宮之原が立つ。いぶし銀の2番打者は、追い込まれながらもファールで粘った。迎えた6球目。高めのストレートをバットがとらえた。「逆方向に打つイメージを持っていた」という宮之原が振り返る。
「結果的に一番打球が飛ぶコースに来ました。勝手に体が反応しました」
打球はイメージとは逆方向の左翼へ舞い上がった。100メートルの左翼フェンスを越えると、一塁側ベンチに熱気に漲った。同点となる2ラン本塁打。7年目のシーズンを迎えた宮之原にとって、記念すべき一発だった。
「オープン戦では3年ぶりぐらいのホームラン。公式戦では初です」
反撃に転じたチームの勢いは止まらない。5回表には一死から9番政野寛明が右中間への二塁打で出塁。1番江藤の進塁打で二死三塁とすると、再び好機で宮之原が打席に立つ。簡単に2ストライクと追い込まれたあとの3球目はチェンジアップ。ボール球になり、1ボール2ストライクとなった直後の4球目、スライダーをバットがとらえた。右前に落ちる勝ち越し打。チームのボルテージが一気に高まった。宮之原が語る。
「向こうのピッチャーは、カウントを取る球が甘かったので、それほど怖さはなかった。打った球は、外角から真ん中に入ってきたスライダー。その前の3球目(チェンジアップ)をしっかり見逃せたのが大きかったですね」
劣勢の中、前半で追いつき、そして勝ち越しに成功した粘りは今シーズの強みだ。だが、勝ち越し直後の5回裏に同点とされ、終盤7回裏に再びリードを許した展開には、チームの底力は感じられない。また、攻撃陣は6回以降、2番手の左投手に3番安井正也の1安打のみに封じられた。再び訪れた劣勢を跳ね返す底力がほしい。勝利への執念はあった。その気持ちをしっかりと結果に結びつける個々の技量とチーム力の成長こそが、今後の大きなテーマになりそうだ。捕手で主将の乗替が、大会を総括する。
「濃い部分が見えた大会でした。バッテリー間の配球ミスがあった試合もありましたが、投手陣は『2つ目の球種』という課題が見えました。ある程度、球種が絞られる状況では相手の打者に一発で仕留められるので、それぞれが自信のある球種を2つは持ち、そして勝負できたら、もっと楽なピッチングができると思います。逆に攻撃陣は、狙った球を一発で仕留められる力をつけていかなければいけないと思います。接戦に強いチームを目指していく中で、今後の富山大会や京都大会でも優勝を目指して頑張ります」
勝利と敗北を繰り返しながら、チームは今、真の力を蓄えている。
(文・写真:佐々木亨)