• TEAM T
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  • 4
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  • 履正社学園
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  • セガサミー
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  • 4x
  • 8
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BATTERY

木村、田中、上津原-佐藤

HOMERUN

大久保(2回ランニング)

戦評COMMENT

バットがとらえたのはストレートだった。打球が左前へ飛ぶ。左翼手が猛烈に突っ込む。だが、打球はグラブに触れることなく、左翼の芝を転々とした。
打者走者の8番大久保泰成は二塁ベースを蹴ると、一段階ギアを上げて激走した。三塁コーチスボックスに立つ黒川洋行コーチの右腕がグルグルと回る。三塁ベースも蹴り上げた大久保が一気にホームを駆け抜けると、バックスクリーンにはヒットを表す『H』のランプが点った。
ランニングホームラン――。二死二塁の場面でその一打が飛び出したのは、同点で迎えた2回裏だった。公式戦初スタメンの第一打席で結果を残した新人の大久保は、幸運かつ記念の一発をこう振り返る。
「第一打席は、打った瞬間『落ちてくれぇぇ!』と思いました。結果的にホームランになりましたが、初めての試合でヒットが出てとにかくよかったです」
3回裏には、同じく新人で、東京都企業春季大会以来のスタメン出場となった2番坂本一将が魅せる。一死からショートへの内野安打で出塁すると、二盗、三盗とダイヤモンドを駆け回った。さらに3番神野達哉の6球目が暴投となり、坂本は自慢の足で4点目のホームを陥れた。
だが4回以降は、チームのバットが湿る。6回裏までの3イニングスは三者凡退。力なき攻撃が続き、三塁側ベンチには重苦しい空気が充満した。
その兆候は、序盤からすでにあった。1回表、先発の木村佳吾が先頭打者に対してストレートの四球を与える。その後、4番打者に2ボール1ストライクから安易にストレートで勝負にいったところを痛打されて先取点を奪われた。失点はしょうがない。だが、その内容が悪かった。木村は2回以降も制球に苦しむ。5回を投げて5安打1失点と、それなりに試合をまとめたが本来の投球からはほど遠い内容だった。
前半は3点リードも、リズムに乗り切れずに完全に主導権を握っていたとは言い難い。それでも、8回裏。やっと目覚めた打線が一気に試合を決めた。
先頭の1番大西主晃が四球と盗塁で得点圏に進む。続く2番坂本がフルカウントから左中間へ三塁打を放って、まずは1点を追加した。3番神野は中前安打。136キロのストレートを、バットを折りながらも弾き返した。神野が打席を振り返る。
「実戦から離れ、ピッチャーの球を見ていなかったので正直どうなるか不安でしたが、とりあえず結果が出てよかったです」
神野は、2月のオープン戦で打者の打球を右頬に当て、陥没骨折で戦線を離脱していた。手術をして全体練習に戻ったのが4月5日。この試合は、神野にとっての復帰戦だった。その中で放った適時打は、自身にとって大きな意味を持ち、またチームにとっても完全に流れを引き込む大きな一撃だった。
目覚めた打線は止まらない。4番澤良木喬之が左翼線へ二塁打を放って7点目。そして、5番谷澤恭平がセンターの頭上を高々と越えていく適時打を放って8点目。コールドゲームが成立して初戦を突破した。
新人2人の活躍と、神野の復帰という明るい材料はあった。だが、チームが求めるものはさらに上にある。次戦に向けて、選手たちは表情を引き締めて球場をあとにした。
(文・写真:佐々木亨)