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BATTERY

浦野-乗替

戦評COMMENT

三塁側から放たれた紙テープ越しに見える浦野博司は、青空の下で輝いていた。
眩しいほどに躍動した先発の浦野は、JR東日本打線を寄せつけなかった。1回表、先頭打者を142キロのストレートで空振り三振に仕留めたエースは、序盤から「気持ち」で圧倒する。3回表は三者連続三振。その右腕は、完全にトップギアに入った。4回以降も衰えない右腕は、6回表まで一人の走者も許さないパーフェクトピッチングを見せた。
浦野が前半のピッチングを語る。
「毎回ベストの状態で臨めるわけではないので、気持ちだけは切らさないように投げました。マウンドではいつもそうですが、点を与えないピッチングを心がけました」
先発マスクの乗替寿朗は、相手打線の一巡目を見て手ごたえを感じた。
「JRの各打者は、(球種を絞りきれずに)迷っているなと思った。浦野のペースで投げられる。そう思ったので、浦野には『力む必要はないよ』と言っていました」
また、乗替は「初回からうまくカーブを使えたのがよかった」と振り返る。カーブは、投球時に力むことなくバランスの取れたフォームで投げられる。無意識のうちに力が入ってしまう代表決定戦のマウンド。乗替の冷静なリードが、浦野の快投を後押しした。
だが、7回表。先頭打者に四球を与え、続く2番打者に投手前へのバントヒットを決められて無死一、二塁とされる。一死後、再び四球を与えて満塁。その直後、5番打者の初球が暴投となり1点を失った。さらにピンチは続き、二死からこのイニング3つ目の四球を与えて再び満塁とされた。点差は1点。打球によっては、逆転を許す場面だ。
マウンドの浦野は空を見上げ、大きく息を吐いた。
気持ちをこめた7番打者への初球。145キロのストレートが相手のスイングを上回った。一塁ゴロに仕留め、ベンチに引き上げる浦野は再び空を見上げ、感情を露にした。
「シャァ!!」
浦野が7回表のマウンドを振り返る。
「必ずピンチは訪れると思っていました。結果的に力んでしまいましたが、最少失点で抑えられたのでよかった」
8回表も内野安打2本で二死一、二塁のピンチを迎えたが、浦野に動揺する様子はなかった。
最終回を前に、スコアは2-1。
チームの得点は、まずは2回裏、4番照屋真人の一打から生まれた。カウント1ボール2ストライクの4球目、インコース寄りの143キロのストレートをとらえた打球が右翼へ高々と舞う。ライトフライ――。誰もがそう思った瞬間、相手の右翼手が完全に打球を見失った。右翼線に跳ねる打球を見て、照屋は一気に二塁ベースを蹴る。さらに、「中継の送球が少しだけ高い」と見るや、三塁ベースも蹴り上げてホームへ突進した。一度は「アウト」の判定。だが、捕手がボールを落としているのを確認すると、審判の両腕が左右に広がった。「セーフ」。照屋が2回裏の打席を振り返る。
「インコースの球を狙っていましたが、完全に打ち損じ。でも、打球を見失っているのが見えてとにかく走りました。ホームへ行ったのは、中継の送球を見ての判断でしたが、勝手に体が反応して突っ込んでしまいました。結果的にセーフになりましたが、先頭バッターでしたし、状況を考えれば無理をするところではなかった。完全な暴走でした」
だが、その果敢な走塁なくして先取点はなかったかもしれない。
2点目は5回裏。一死後、7番谷澤恭平が四球で出塁。8番乗替が2ストライクと追い込まれながらも犠打を決めて二死二塁。ここで9番政野寛明が右翼越えの適時二塁打を放って追加点を挙げた。政野の狙い通りだった。
「初球が外の真っ直ぐ。次は内にくると思った。城下(尚也=アナライザー)さんからも『ピンチになったら内にくる』と言われていたので、思い切り振ることができました。打った球は、内角の抜けたフォークだったと思います。乗替さんがつないでくれたチャンスだったので、何としてでも打ちたかった。あと、同期の浦野が頑張っていたので、助けてあげたいと思った」
好投を続ける浦野を援護したい――。この試合、チームの思いは一つだった。
1点リードの9回表。エースはすべての思いを背に、マウンドに上がった。先頭打者をショートゴロ、続く打者を144キロのストレートで空振り三振に仕留めると、三塁側スタンドのボルテージは一気に高まった。そして――。三人目の打者を2球で追い込むと、最後は真骨頂でもあるフォークボールで空振りを奪った。
三振。創部以来初となる第二代表が決まった瞬間だった。浦野が言葉をかみ締める。
「あの瞬間のために一年間やってきたので、とにかく嬉しかったです」
ポーカーフェイスに、何とも言えない笑顔が浮かんだ。
戦いを終えた西詰嘉明監督は言った。
「浦野の先発は、天沼(秀樹)ピッチングコーチと相談して決めました。いつも一番近くで見ているコーチが『浦野で行きましょう』と言ってくれた。今日の勝利は、天沼コーチのファインプレーです。浦野本人も、バッターを見ながら見せ球、誘い球でカウントをしっかりと整えて、よく粘って投げてくれました。7回表を最少失点で守れたのがすべてですね。攻撃陣も、春先から言い続けてきた『一つ一つ、つなげていこう』という言葉をしっかりと実践してよく戦ってくれました。前の試合まで8番を打っていた政野を9番に打順を変えたのも、結果的に功を奏した形になりました。また、今日は『絶対に第二代表を獲るんだ』という選手たちの思いが伝わってきました。チームが一つになっていた。本大会でも、日本一を目指す中で、しっかりと上位へ行けるように頑張ります」
新たな扉を開いてもなお、視線は戦いの場にある。その目はすでに、7月に行なわれる東京ドームでの本大会を見つめていた。
(文・写真:佐々木亨)