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BATTERY

大山、木村-乗替、佐藤

HOMERUN

川端(7回満塁)

戦評COMMENT

川端裕也は、半信半疑だった。
「外野の間を抜けるとは思いましたが、入るとは思わなかった」
だがその打席には、はっきりとした裏付けがあった。
2点を追う7回表。7番照屋真人の右中間への二塁打を足がかりに、二死満塁と攻め立てた。ビッグチャンスで2番川端が打席に立つ。初球と2球目がボール球となり、川端は思った。
「(相手は)絶対に3球目はボールにしたくない。必ずストライクゾーンで勝負にくる」
その狙い通り、ストライクゾーンに流れてきたスライダーをバットがとらえた。「ドンピシャ」。会心の打球が右中間の空に伸びる。
カクテル光線に包まれた白球と漆黒の闇。そのコントラストに目を奪われる中、打球は右中間の最深部、スタンドの芝で跳ねた。
逆転満塁本塁打――。
「記憶にない」という起死回生の一発を、試合後の川端はかみ締めた。
「絶対に打ってやろうと思っていました。とにかく、嬉しいです。本当に嬉しい。(6回裏に)2点差になっても、自分の中では『まだ何かある』と信じていました。負ける気がしなかった。だから、あの打席もしっかりと準備はできていましたし、気後れすることなく相手に向かうことができました」
的確な読みと積極的なスイング、そして諦めない思いが終盤の奇跡を生んだ。
川端の一撃につながる投手陣の粘りも見逃せない。
立ち上がり、先発の大山暁史は「力んでしまった」。1回裏の先頭打者への四球、その直後のパスボールが大山の状態を物語っていた。無失点で切り抜けたが、2回以降も二死からヒットを浴びるなど、「抑えたい」気持ちと体のバランスが微妙にズレてしまった。バランスの乱れが失点につながったのが、拙攻で追加点を奪えずに嫌なムードが流れた4回表の攻撃直後だ。
4回裏、二死から四球と左中間へのヒットで一、三塁のピンチを迎えると、8番打者への5球目、決め球に選んだ変化球が暴投となり同点とされた。さらにグラウンド整備直後の6回裏には、3連打で2点を失う。6回途中で自責点3。その内容に、試合後の大山は肩を落とした。
「もっと安定したピッチングができないといけない。今日は、攻撃陣に助けられました」
それでも、悪いなりに3失点でしのいだマウンドは、先発としては一定の評価ができる。
そして、『打』のヒーローが川端なら、『投』のそれは、大山からマウンドを譲り受けた木村佳吾だった。7回以降は得点圏に走者を進めないピッチング。8回裏には、一死から四球で出塁を許した一塁走者を自らの牽制でアウトにした。9回裏も、木村のピッチングは衰えない。先頭打者に右前安打を許すも、2つの左飛で二死を奪う。そして、2番打者を簡単に追い込むと、最後は渾身のストレートで見逃し三振に仕留めた。
「久しぶりの感覚でした。気持ちよかった」
今シーズン前半は登板機会が少なかった木村は、勝利の瞬間をそう振り返った。
前半戦に苦しみを味わったのは、川端も同じだった。今シーズン初めての公式戦となった東京都企業春季大会1回戦(東京ガス)で、川端は左足を剥離骨折した。治療に専念したが、都市対抗予選には間に合わなかった。本大会こそ出場機会を得たが、2三振を含むノーヒット。チームも散発3安打で初戦敗退となった。
「都市対抗の負けが悔しくて・・・。周りの方々が期待してくれていたのに、何もできなかった。だから、都市対抗が終わってからは、『秋は絶対に野手で勝とう』とチーム内で言い合ってきました。チームとして『5点』を目標にやってきた中で、打ち勝った今日の試合は本当に嬉しい」
そして、川端はこうも言う。
「今日は『野手で勝ちました』と胸を張って言えます・・・よね?」
初めて予選を勝ち上がり、手にした2大会ぶり2度目の日本選手権出場。勝利を手繰り寄せる豪快弾を放ったヒーローの言葉に、無論、何の異論もない。
(文・写真:佐々木亨)