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  • 新日鐵住金かずさマジック
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BATTERY

横田、木村、山崎-乗替、佐藤

戦評COMMENT

球春と呼ぶにはいささか違和感を覚える冷たい風が、上空を激しく舞っていた。風は右へ左へ、時にはバックネットとバックスクリーンを結ぶ直線上で、前後にその流れの勢いと方向を変えた。いたずらに心変わりする強い風。それは、試合の行方をも変えた。
1回表。先発左腕の横田哲が先頭打者に四球を与える。だが、後続をセンターフライに討ち取り1アウト。続く3番打者もレフトフライ……打球を見る限りはそう思った。左翼手の安井正也も、定位置からやや後ろに下がり、一度は足を止めた。だがその直後、安井が一瞬驚いた表情を見せ、慌ててグラブをはめる左手をグッと伸ばした。予想以上に飛距離が出た打球。結果は左越えの二塁打となり、一塁走者が一気にホームを陥れて1点を先制された。
3回表も同じだった。二死一塁から相手の4番打者にセンターへ打球を運ばれる。打者のスイングと打球の角度を見て、一瞬前に足を踏み出したのは中堅手の富田裕貴だ。だがここでも、ホームからセンター方向に流れる風に打球が乗って富田の頭上を軽々と越えていく。二塁打。一塁走者がホームに還り、1点を失った。
6回表は逆に、手前に「戻される」打球で1点を失った。無死一、三塁。相手の5番打者の打球が、レフト方向に高々と舞う。前半の教訓から、やや深めに守備位置を取っていた左翼手の安井が猛ダッシュで前進する。その高さから考えれば、捕れない打球ではなかったはずだ。だがちょうどその時、レフトからホーム方向に強く流れていた風に押し戻された打球は勢いを止め、一気に急降下を始める。ポトリ……。記録は左前安打となり、三塁走者が生還して3点目を失った。
グラウンドコンディションは、両チームともに同じだ。「条件」は変わらない。それだけに、「風」を言い訳にするわけにはもちろんできない。それでも……。一つ一つの失点シーンに、風を感じずにはいられなかった。
8つ――。この試合で投手陣が与えた四死球の数だ。
「四死球が失点につながった。それがすべて」
初芝清監督が試合をそう振り返ったように、計5失点はすべて四死球をきっかけに生まれたものだった。半数にあたる4つの四死球を与えた先発左腕の横田は5安打4失点で6回表のマウンドを最後に降板した。横田が自身の投球を振り返る。
「風があったので、ボールが高めにいかないように意識して投げました。低めに投げようという意識が強過ぎて結果的に四球になったところはありました」
投球が高くなれば、打球がフライになる確率が高くなる。前述した失点シーンのように、強風が舞うグラウンドではフライが予想外の軌道を描くことがある。つまり、本来はフライアウトになる打球でさえも、100%の確信とともに「討ち取った」という感覚を持つことはなかなか難しい。打球を転がしてもらったほうが、より討ち取る確率は高くなる。横田の狙いは間違っていなかった。だが、低めを意識し過ぎたあまりに制球が微妙に狂った。
風は、本来は打者の胸元をつき、攻撃的な投球をする横田のピッチングを消した。
今シーズンの開幕戦は、抗うことのできない力との戦いでもあった。その中で、収穫もあった。初芝監督がいう。
「一気に点を取ることは、これまでのオープン戦になかったことです。その攻撃力を続けられるチームになっていきたい」
指揮官がいう「収穫」は、1点を追う2回裏の攻撃だ。まずは、イニングの先頭となった4番川端裕也が右翼フェンス直撃の二塁打を放ってチャンスを作る。5番谷澤恭平は、投手前の犠打。だが、その打球を処理した相手ピッチャーが一塁へ悪送球。二塁走者の川端がホームを陥れて同点とした。なおも、6番安井が右前安打で続いて一、二塁。7番坂本一将の初球、相手バッテリーにミスが出てチャンスは二、三塁と広がった。ここで坂本が一、二塁間に打球を運ぶ。二塁手の好捕でセカンドゴロになったが、その間に三塁走者の谷澤が生還して勝ち越しに成功した。さらに、8番富田が左前に適時打を放って3点目。相手チームのミスにも助けられた形となったが、一気に畳みかける力強さがそこにはあった。それは、これから続くシーズンの戦いに向けて、一つの希望となった。
(文・写真:佐々木亨)