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BATTERY

横田-佐藤

戦評COMMENT

身長171センチの背中に浮かぶ「16」の数字が、イニングを重ねるごとに大きく見えた。マウンドを支配し続けた先発の横田哲が巨大な光となり、ヤマハ打線を牛耳った。
「初回、まずはスッと入れたのがよかった」
わずか7球で三者凡退に仕留めた1回表のピッチングを横田はそう振り返る。
2回表は、さらに圧巻のピッチングを見せる。4番打者から空振り三振を奪うと、左腕から繰り出される緩急あるボールがヤマハの各打者を翻弄した。三者連続三振。3回表からの3イニングは、いずれも三振1つと内野ゴロ2つで討ち取った。
後半になっても、横田のピッチングは衰えない。6回表は8球で三者凡退。7回表は、先頭打者に初球を左翼フェンス手前まで運ばれたが、横田の球威が勝って1アウト。2番打者を3球勝負の見逃し三振に仕留めると、続く3番打者をショートライナーに討ち取り、この試合7度目の三者凡退をマークした。7回表の3アウト目は、あわやセンターに抜けるかと思われた打球を半身になりながら好捕した遊撃手・坂本一将のファイプレーによるものだった。得てして、大記録達成のプロセスでは、そんなスーパープレーが一つや二つあるものだ。7回表を終わって一人の走者も許さなかった横田のピッチングに、誰もが「完全試合」を期待するのは自然の流れだった。
迎えた8回表。先頭の4番打者に対し、横田はボール球が先行して3ボール1ストライクと苦しいカウントでの勝負を余儀なくされた。四球は出したくない。その思いが、わずかに制球を甘くした。この試合、横田が投じた94球目。左打者のバットが、チェンジアップをとらえた。打った瞬間、センター前へのヒットとわかる打球が頭上を通過していくのを見て、横田は思わず心の中で「ウワッ」と叫んだという。大記録達成が夢と消えた瞬間だった。
それでも「気持ちを切り替えた」左腕は、後続を討ち取り8回表も無失点。9回表は三者凡退に討ち取る。4回裏に一死満塁から9番富田裕貴の左前適時打で挙げた1点を最後まで守り抜き、完封勝利を手にした。
試合後の横田はピッチングをこう振り返った。
「変化球、真っ直ぐともに、今日はしっかりとコースに投げ分けることができました。変化球では特にスライダーがよかったですね。でも、やっぱり悔しい……。これまで完全試合を達成したことがなかったので、本当に悔しいですね」
苦笑いを浮かべながらも、8回表の「1安打」を思い起こす。その表情には、大魚を逸した無念さが確かに含まれていた。
とは言え、「準完全試合」の1安打無四球のピッチングだ。この試合の主役は、間違いなく横田だった。捕手の佐藤貴穂はいう。
「8回表にヒットを打たれた場面は、カウントを不利にしたことがすべてでした。それでも、今日の横田は本当によかった」
初芝清監督は、リーグ戦初戦での勝利を素直に喜んだ。
「今日は捕手の佐藤がうまくリードする中で、横田のピッチングが冴えました。九州大会は、都市対抗予選に向けての集大成として位置付けています。そういう中で、まず1勝したことは、チームの自信になると思います」
8安打で1点しか奪えなかった攻撃の課題はあったとは言え、粘り強く勝利を手にした試合にはスコア以上の価値があった。
その価値をさらに高めたのは、他ならぬ横田の快投だった。
(文・写真:佐々木亨)