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BATTERY

上津原、木村-乗替

戦評COMMENT

苦しんだ。最後の最後まで、苦しんだ。勝利を手にした瞬間さえも、選手たちの顔には笑顔がなかった。
1回裏は2つの四球で無死一、二塁とした。だが、3番江藤圭樹がショートライナー、4番高島秀伍がショートゴロ、そして5番照屋真人がセンターフライに倒れ、結局は無得点に終わった。その攻撃がすべてとは言わないが、一気に主導権を握るチャンスだったことは間違いない。初芝清監督の言葉からも、1回裏の拙攻に対する反省の思いが伝わる。
「昨日試合をやっていることで、ホワっとゲームに入ってしまったところがあったかもしれない」
6安打を放って3点リードする中、5回途中で降雨ノーゲームとなった前日の試合が、選手たちの精神状態をわずかに狂わせてしまったのだろうか。気持ちを切り替えて臨んだはずだ。「いつでも打てる」。そんな油断や慢心といった類の気持ちも、選手たちの中にあったとは思いたくない。ただ、結果を見れば、そう思ってしまうほどに淡白な攻撃になってしまったことは事実だ。2回裏は三者凡退。二死から2番宮之原裕樹、3番江藤圭樹の連打で1点を先制した3回裏の攻撃ですら、どことなく物足りなさを感じた。
3回表まで1安打無失点の先発・上津原詳がピンチを迎えたのはその直後だった。4回表、先頭打者に右前安打を許すと、一死後、4番打者に再び右前へ運ばれて一、三塁とされる。ここで5番打者をサードゴロに討ち取るが、併殺を狙った三塁手・宮之原が二塁へ悪送球。アウトを一つも重ねることができない中、三塁走者のホームへの生還を許して同点とされた。
攻守のリズムが掴めない。重苦しい空気が、徐々に一塁側ベンチに漂い始める。中盤になると、さらにその空気感は色濃くなり、終盤からは都市対抗予選独特のプレッシャーが攻撃陣の「焦り」につながっていった。初芝監督は言う。
「イニングが進むにつれて、打者は気持ちだけが先走ってしまった」
追い込まれる状況下で、「打ちたい」気持ちとスイングのバランスが崩れた。7回裏は、二死から代打・安井正也が気迫のヘッドスライディングを見せて内野安打で出塁した。だが、9番坂本一将がレフトフライに倒れて無得点。8回裏は右前安打の1番政野寛明が、2番宮之原の犠打、3番江藤のセカンドゴロで三塁まで進んだが、代打・松延卓弥の一、二塁間への打球を相手二塁手に好捕され、またしても無得点に終わった。
マウンドでは、8回表から登板した二番手の木村佳吾がチームに勢いを与えるピッチングを心がけていた。
「苦しい展開だったので、何とか流れを持ってこられるようにテンポを意識して投げました」
三者凡退の8回表に続き、9回表も無安打に抑えた木村は攻撃陣の奮起を待った。
迎えた9回裏。一死から6番谷澤恭平が、この試合2本目となる中前安打を放って出塁した。7番富田裕貴の犠打で二死二塁。チャンスで打席に立ったのは途中出場の8番佐藤貴穂だった。2ボール1ストライクからの4球目。外寄りの球をとらえた打球が、左翼へ向かって伸びる。左翼手が諦め、打球が外野の芝に落ちる。その行方を確認しながら代走の大西主晃がホームを踏み、試合は終わった。
サヨナラ――。試合後、決勝打を放った佐藤は実感を込めて言った。
「打った瞬間は『ヨッシャー』というより、ホッとしました。勝ててよかったです。本当によかったです……」
その言葉は、チーム全員の思い。佐藤が続ける。
「都市対抗予選ともなれば、厳しい試合は必ずあるものです。それが今日の試合だったと振り返られるように、とにかくこの試合をきっかけにチームがまとまり気を引き締めて、勝ち上がって行きたいと思います」
次戦に向けて、初芝監督は言う。
「都市対抗予選の怖さを感じた試合でした。ただ、見方を変えれば緊迫したゲームができた。そういうふうにプラスに考えていきたいと思います。次の試合まで期間があるので、しっかりと調整したい。次の試合は、初回から相手チームに襲いかかるぐらいの攻撃ができるように準備をしたいと思います」
もがき苦しんだ経験は、きっと大きな力になる。そう信じて前へ進むしかないチームは、次なる戦いの準決勝、NTT東日本戦に挑む。
(文・写真:佐々木亨)