HOME 試合情報 試合結果 第二代表3回戦 試合日程・結果 2014.05.30 [Fri] 第85回都市対抗野球大会 東京都二次予選第二代表3回戦 vs 東京ガス 大田スタジアム 前の試合へ 次の試合へ TEAM T 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E 東京ガス 東 1 0 0 0 3 0 0 0 0 4 0 0 セガサミー セ 0 2 3 0 0 0 0 0 x 5 0 0 BATTERY 松永、上津原、横田-乗替 HOMERUN 乗替(2回2ラン)、川端(3回3ラン) 選手成績 戦評 速報 戦評COMMENT 雄叫びが二つ、鳴り響いた。 立ち上がり。先発の松永大介が3、4番の連打で1点を失った。 「初回は力んでしまった」 都市対抗予選初先発の右腕は悔やんだ。 だが、2回以降は気持ちの高ぶりをコントロールし、凡打の山を築いた。 「力まずに、打たせて取るピッチング、テンポのあるピッチングだけを意識しました」 一つ目の雄叫びが響いたのは、松永が自らのピッチングを取り戻した直後だった。 2回裏は、一死から左中間へ二塁打を放った6番澤良木喬之が牽制球で刺され、一度はチャンスが潰えたかに見えた。だが、7番富田裕貴が仲間のミスをカバーする左前安打を放ち、再びチャンスが訪れた。二死一塁。8番乗替寿朗は集中していた。カウント1ボール1ストライクからの3球目。主将・乗替のバットが真ん中高めのストレートをとらえる。振り抜かれた打球が大田スタジアムの青空に舞い、そして左翼席の芝に落ちた。試合を引っ繰り返す逆転の2ラン本塁打。ホームベースを踏み、仲間に迎えられた乗替は、こみ上げてくる感情を思い切り吐き出すかのように雄叫びを上げた。 「これまでの戦いは苦しかった。今、チームは苦しんでいる。選手みんなが苦しんでいると思います。だから、とにかくチームの空気を変えたかった。ホームランの場面は、無我夢中でしたが、ボールに対して集中はできていたと思います」 勝利した敗者復活2回戦を終えた後、選手だけの緊急ミーティングをした。「このままでは、これからの試合は勝てない」。勝ってもなおチームが一つになっていない空気を感じ取っていた主将は、仲間の前で厳しい言葉を発した。それだけに、打ちたかった。打たなければいけなかった。言ったからには、自らがその思いを形として、結果として表す必要があった。乗替は、その自身に課したプレッシャーをホームランという結果で跳ね返した。 主将の一撃、そしてその雄叫びはチームの空気を変えた。3回裏は、乗替の思いに仲間が応えた。一死から2番神野達哉の四球、3番江藤圭樹の右前安打で一、二塁と攻めた。ここで4番・川端裕也が打席に立つ。カウント1ボール2ストライクからの4球目。低めのカーブを4番打者のバットがとらえる。打球が右翼スタンドに吸い込まれると、三塁側ベンチに陣取る選手たちのボルテージは一気に高まった。 「序盤から試合が動いていたので、点が入ると思っていました。ホームランの場面、打ったのはカーブの抜け球。変化球を狙っていた中で、低めのボールにうまく反応できました」 ベンチにいる仲間の視線の先には、様々な思いを雄叫びに替えて三塁ベースを回る川端の姿があった。川端は春先から我慢の日々を続けていた。シーズン当初は4番を任せられ、東京スポニチ大会でも打の中心を担っていた。だが、4月に入ると出場機会が減った。代打での出場が続いた。久しぶりに公式戦でスタメンに名を連ねたのは、今予選の敗者復活2回戦だった。 「この前の試合が、スポニチ大会以来のスタメンでした。試合に出られない期間は、正直、悔しかった。でも、いつかチャンスは来ると思っていました。仲間からも『気持ちだけは切らすな』と言われてきました。そんな中での今日のホームランは、本当に嬉しい」 試合後の川端はそう言って、一つ一つの言葉を噛み締めた。 二つの雄叫びが響く中、試合は勝利で終わった。4回以降は無安打に抑えられ、1点差に詰め寄られる中で追加点を挙げられなかった反省はあるにしろ、とにかく勝った。 勝利を手にして改めて思ったこと。それは、厳しくもあり、最高の喜びが詰まっている場所でもある都市対抗予選を熟知した者の力の大きさだ。 川端は誓う。 「代表決定戦でも吠えます」 その言葉は、何とも頼もしかった。 (文・写真:佐々木亨) 前へ 1 次へ 前の試合へ 試合結果一覧 次の試合へ
戦評COMMENT
雄叫びが二つ、鳴り響いた。
立ち上がり。先発の松永大介が3、4番の連打で1点を失った。
「初回は力んでしまった」
都市対抗予選初先発の右腕は悔やんだ。
だが、2回以降は気持ちの高ぶりをコントロールし、凡打の山を築いた。
「力まずに、打たせて取るピッチング、テンポのあるピッチングだけを意識しました」
一つ目の雄叫びが響いたのは、松永が自らのピッチングを取り戻した直後だった。
2回裏は、一死から左中間へ二塁打を放った6番澤良木喬之が牽制球で刺され、一度はチャンスが潰えたかに見えた。だが、7番富田裕貴が仲間のミスをカバーする左前安打を放ち、再びチャンスが訪れた。二死一塁。8番乗替寿朗は集中していた。カウント1ボール1ストライクからの3球目。主将・乗替のバットが真ん中高めのストレートをとらえる。振り抜かれた打球が大田スタジアムの青空に舞い、そして左翼席の芝に落ちた。試合を引っ繰り返す逆転の2ラン本塁打。ホームベースを踏み、仲間に迎えられた乗替は、こみ上げてくる感情を思い切り吐き出すかのように雄叫びを上げた。
「これまでの戦いは苦しかった。今、チームは苦しんでいる。選手みんなが苦しんでいると思います。だから、とにかくチームの空気を変えたかった。ホームランの場面は、無我夢中でしたが、ボールに対して集中はできていたと思います」
勝利した敗者復活2回戦を終えた後、選手だけの緊急ミーティングをした。「このままでは、これからの試合は勝てない」。勝ってもなおチームが一つになっていない空気を感じ取っていた主将は、仲間の前で厳しい言葉を発した。それだけに、打ちたかった。打たなければいけなかった。言ったからには、自らがその思いを形として、結果として表す必要があった。乗替は、その自身に課したプレッシャーをホームランという結果で跳ね返した。
主将の一撃、そしてその雄叫びはチームの空気を変えた。3回裏は、乗替の思いに仲間が応えた。一死から2番神野達哉の四球、3番江藤圭樹の右前安打で一、二塁と攻めた。ここで4番・川端裕也が打席に立つ。カウント1ボール2ストライクからの4球目。低めのカーブを4番打者のバットがとらえる。打球が右翼スタンドに吸い込まれると、三塁側ベンチに陣取る選手たちのボルテージは一気に高まった。
「序盤から試合が動いていたので、点が入ると思っていました。ホームランの場面、打ったのはカーブの抜け球。変化球を狙っていた中で、低めのボールにうまく反応できました」
ベンチにいる仲間の視線の先には、様々な思いを雄叫びに替えて三塁ベースを回る川端の姿があった。川端は春先から我慢の日々を続けていた。シーズン当初は4番を任せられ、東京スポニチ大会でも打の中心を担っていた。だが、4月に入ると出場機会が減った。代打での出場が続いた。久しぶりに公式戦でスタメンに名を連ねたのは、今予選の敗者復活2回戦だった。
「この前の試合が、スポニチ大会以来のスタメンでした。試合に出られない期間は、正直、悔しかった。でも、いつかチャンスは来ると思っていました。仲間からも『気持ちだけは切らすな』と言われてきました。そんな中での今日のホームランは、本当に嬉しい」
試合後の川端はそう言って、一つ一つの言葉を噛み締めた。
二つの雄叫びが響く中、試合は勝利で終わった。4回以降は無安打に抑えられ、1点差に詰め寄られる中で追加点を挙げられなかった反省はあるにしろ、とにかく勝った。
勝利を手にして改めて思ったこと。それは、厳しくもあり、最高の喜びが詰まっている場所でもある都市対抗予選を熟知した者の力の大きさだ。
川端は誓う。
「代表決定戦でも吠えます」
その言葉は、何とも頼もしかった。
(文・写真:佐々木亨)