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BATTERY

横田-佐藤

HOMERUN

安井(8回2ラン)

戦評COMMENT

雨は、恵みの雨となった。
前日、小雨が降りしきる中でスタートした富士重工業戦は、2回表の途中で雨脚が強まった。結局、雨はその勢いをさらに増し、そのまま降雨ノーゲームに。両チーム無得点で中断になった試合は、仕切り直しとなった。
「もしあのまま試合をやっていたら、結果はどうなっていたか……」
初芝清監督はそう言い、言葉をつなげる。
「前日は1イニングだけの攻撃でしたが、相手の小野(和博)投手に対して、各打者のタイミングが合っていないと感じました。また、何より試合の入りが悪かった。都市対抗の時のような、どこか嫌な流れが前日の試合にはありました」
野球部の寮に帰ったチームは、すぐさま全体ミーティングを行なった。対富士重工業、対小野投手の対策を改めて確認し合い、チームの共通意識を深めるとともに、各選手はそれぞれに相手チームのイメージを膨らませた。
「結果的に、天気が味方になりましたね。選手たちは修正して試合に挑むことができました。どう修正したか……それは、企業秘密ということで」
少しだけ含み笑い、それでいて目に力のこもった表情を浮かべてそう語った初芝監督は、恵みの雨に感謝しながら、勝機を感じた。
再試合。手ごたえが結果として最初に表れたのは5回裏だった。二死から1番政野寛明が変化球をとらえて右翼線二塁打で出塁する。二死二塁。打席には、前日の試合では控えにまわっていた2番神野達哉。神野のスタメン起用を初芝監督はこう説明する。
「(バッティングの)状態はずっとよかった。改めて対小野投手を考えた時、神野のほうがタイミングは合うんじゃないかと思った。都市対抗でも小野投手からヒットを打っていましたし、その相性の良さに賭けました」
初球、神野はその一球に集中していた。
「真っ直ぐ(ストレート)でした。チームに貢献できたヒットが出て本当によかった」
中前安打は、二塁走者の政野をホームに迎え入れる先制打となった。
さらに、「相手投手が気落ちしている場面だったので、初球からいこうと思った」という3番江藤圭樹が右翼線へ二塁打。一塁走者の神野が一気にホームを陥れて2点目が入った。二死からの3連打。その集中力には、勝利への執念を感じた。
主導権を握ったチームは、6回裏に7番富田裕貴の犠飛で1点を加える。そして、8回裏には、代打・安井正也が初球を左翼ポール際に運ぶ、ダメ押しの2ラン本塁打を放った。一振りで決めた安井は、打席をこう振り返った。
「ベンチの声、みんなの気持ちが後押ししてくれたホームランでした」
まさにチーム力で掴み取った5点だった。
その得点は、先発の横田哲には十分過ぎるほどの援護射撃だった。先頭打者にヒットを許し、さらに死球でピンチを迎えた1回表を無失点で乗り切った左腕は、その後、本来の「打たせて取るピッチング」で凡打の山を築いた。連打は許さない。2回以降で得点圏に走者を進めたのは、6回表の1イニングのみ。先発した前日からしっかりと気持ちを切り替え、“連戦”となったこの試合でもタフなピッチングを見せた。
都市対抗で敗れた相手へのリベンジ。その強い気持ちも、好投を生み出した要因の一つだった。散発4安打の完封勝利。初芝監督が横田のピッチングを振り返る。
「横田の意地を見ました。同じ相手にやられっぱなしでは終われない。その強い気持ちがピッチングに表れていました」
当の本人は、自身の完封をこう語る。
「初回のピンチを凌いだのが大きかった。今日は最後まで低めにボールを集められた。それが一番よかったですね」
チームは、今夏のリベンジを果たした。
雨のち晴れ――。
空色の移り変わりと同様に、都市対抗から続くストーリーは晴れやかな勝利で完結した。そして、いざ本大会へ。2年連続3度目の出場となる日本選手権本大会に向けて、主将の江藤は言葉に力をこめる。
「全国の舞台で勝つために、これからさらに強いチームになります」
晴天は、11月1日から始まる本大会でも続く。
(文・写真:佐々木亨)