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BATTERY

前原、石垣、鈴木-佐藤

HOMERUN

佐藤(8回3ラン)

戦評COMMENT

下手投げの2年目右腕、前原侑宜は心地良さすら感じていた。
「いい緊張感のなかで投げられました」
2015年の初陣。その先発マウンドという大役にも動じなかった前原は、5イニングスを1失点にまとめた。
立ち上がりは、心地よさとは裏腹にハラハラドキドキのマウンドだった。1回裏、ヤマハの先頭打者に右中間を深々と破られる三塁打を浴びると、続く2番打者にセンターへの犠飛を放たれて1点を奪われた。わずか8球での失点に、暗雲が立ち込める。後続を討ち取り二死としたが、4番、5番打者に連打を浴びて一、三塁。さらに四球を与えて満塁とされた。だが、そこからが昨シーズンまでの前原とは一味違った。7番打者を106キロの緩い変化球でセカンドフライに討ち取り、ピンチを脱した。
どちらかと言えば、「緊張するタイプ」だ。新人だった昨シーズンは、緊張と「自信がなかった」という弱気な部分が顔を出し、与えられた登板機会で結果を出すことができなかった。公式戦での勝ち星は「0」。前原は「このまま社会人でやっていけるのかなあ……」と思ったという。だが、昨年の日本選手権、準々決勝の先発マウンドを託されて勝利につながる快投を演じて「変わった」。その流れのまま迎えた今シーズン。前原の顔は、明らかに昨年とは違う。表情からも、はっきりと「自信」が伝わってくる。
ピンチを迎え、失点すれば、軌道修正ができなかったのが昨シーズンまで。だが、今シーズンの前原には、失点してもなお本来のピッチングを貫ける強さがある。この試合でも、その「強さ」が随所で見られた。2回以降は、毎回走者を背負いながらも点を与えなかった。長打と2つの四球で満塁のピンチを迎えた5回裏も、後続を討ち取って無失点。結局、5イニングスを投げて6安打1失点。チームの期待に応えるとともに、社会人では自身初となる公式戦初勝利を挙げた。
「打たせて取るのが自分の持ち味。今日の試合では、走者を出しても慌てずに、粘り強く投げられました」
前原の好投は攻撃陣にリズムをもたらした。1回表に四番高島秀伍のセンターの頭上を越える三塁打で1点を奪うと、2回表も二死から8番宮之原裕樹のショートへの内野安打と9番坂本一将の右翼線二塁打で攻め立てた。結果的に2回表は得点につながらなかったが、簡単に三者凡退で終わらない粘りがその後の得点シーンにつながったとも言える。
佐藤俊和コーチは言う。
「初回に1点を奪って、その裏すぐに同点とされました。相手チームは一瞬、『いける』と思ったはずです。でも、その勢いを消したのが2回表だった。同点とされた直後の攻撃で、簡単に三者凡退で終わっていたら相手チームの勢いはそのままだったはず。得点にこそなりませんでしたが、宮之原と坂本がヒットで出塁したことで、その後の流れは変わったと思います」
3回表は新人の2番宮川和人がレフトオーバーの二塁打で出塁。犠打で一死三塁とすると、4番高島が初回に続いてタイムリーヒット(左前安打)を放って勝ち越した。さらに5番澤良木喬之が右前安打で続いて一、三塁。6番佐藤貴穂のセンターへの犠飛で1点を追加した。
終盤にはトドメの一発だ。8回表、先頭の3番江藤圭樹が中前安打、犠打のあとに5番澤良木が死球をもらって一死一、二塁とする。打席には6番佐藤。1ストライクの2球目、本人曰く「完璧だった」という打球が左翼席後方にあるネットに突き刺さる。点差を4点に広げる特大の3ラン本塁打。一塁側ベンチに歓喜が溢れた。佐藤が打席を振り返る。
「初球、2球目ともに球種はツーシームでした。2球目はストレートを待っていましたが、体がうまく反応しました。社会人に入ってから一番のアタリでした」
昨シーズンの佐藤は、オープン戦も含めて本塁打を一本も記録していない。また、昨年までの4年間は公式戦での本塁打がなかった。入社以降「最高の一打」にして公式戦初本塁は、勝利を決定づける、まさに2015年の初陣を飾る一発となった。
試合後の初芝清監督だ。
「中盤以降はヤキモキしましたが、選手たちがよくやってくれました。3ラン本塁打? そりゃあ、大きいですよ。大会前のオープン戦では2戦連続で完封負け。この試合はどうなるかと心配していましたが、攻撃陣が何とか結果を出してくれました。投手陣も、先発の前原がピンチを迎えながらも抑えてくれた。今日のピッチングを自信にしてほしいですね。いずれにせよ、開幕戦で勝てたのはよかった」
「勝利」の船出は、今シーズンの希望となる。
(文・写真:佐々木亨)