HOME 試合情報 試合結果 第1戦 試合日程・結果 2015.04.06 [Mon] 第44回JABA四国大会第1戦 vs JR西日本 レクザムスタジアム 前の試合へ 次の試合へ TEAM T 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 R H E JR西日本 J 0 0 0 0 0 1 0 0 0 2 3 0 0 セガサミー セ 0 0 0 0 0 0 1 0 0 3x 4 0 0 BATTERY 横田、前原-佐藤 選手成績 戦評 速報 戦評COMMENT 2点を追う延長10回裏。タイブレークの一死満塁で、4番川端裕也が三振に倒れる。4回裏に二塁打を放つなど、今シーズンも打線の核として存在感を示している川端が倒れ、一瞬だけ「敗戦」が頭をよぎった。 追い詰められた。もう後がない。 だが、その絶体絶命の場面からチームは底力を見せた。 二死満塁。5番佐藤貴穂はフルカウントまで粘った。6球目はスライダー。見逃せばボール球だったかもしれない低めの変化球に、佐藤のバットが食らいつく。体勢を崩しながら、左手一本でとらえた打球はライト前に落ち、二人の走者がホームを還って同点に追いつく。 「その前にスライダーを空振りしていたので、また同じ変化球で勝負にくることも想定していました。粘り腰です」(佐藤) なおも二死一、三塁とチャンスは続き、打席には6番澤良木喬之。 初球だった。低めのストレートをとらえた強烈な打球が、右翼手の頭上を越えていく。三塁走者の江藤圭樹が悠々とホームに還り、打った澤良木をチームメイトが満面の笑顔で迎え入れる。 「2打席目(4回裏一死一、三塁での打席)でチャンスを潰していたので、何とか挽回したかった。その一心でした」(澤良木) 悔しさをエネルギーに換え、最後まで諦めなかった先にサヨナラ勝利が待っていた。 その流れを引き込んだのは、三人の選手だった。 「投」では、2番手でマウンドに上がった前原侑宜だ。 先発の横田哲は7回途中まで投げて5安打1失点。何度も得点圏に走者を進められながら、要所を抑えたピッチングは「さすが」のひと言。今シーズンは、いまだ本調子とは言えない中で見せた1失点のピッチングに、横田自身も「何とか抑えられてホッとしました」と言う。だが、本来の姿と比較すれば、内容としてはまだまだ物足りなさが残るピッチングだった。「1失点で何とかしのぎましたが、横田に求めるものはもっと高いものですし、その実力はある」とは初芝清監督。本人も「これからさらに状態を上げていきたい」と、この試合でのピッチングを満足している様子はなかった。そして、横田はこうも言う。 「今日は前原に助けられました」 7回表一死二塁の場面で横田からマウンドを譲り受けた前原は、2者連続三振でピンチを切り抜けた。8回表、9回表は三者凡退。自身「初めての経験だった」というタイブレークの10回表には2点を失ったが、全体的には安定したピッチングが光った。 「今日はスライダーを多めに投げました。それなりに自分のピッチングはできたと思います。ただ、10回表は低めを意識し過ぎるあまりにボール先行のピッチングになって、ストライクを取りにいったところを狙われて失点しまった。そこは反省点。最後は野手に助けてもらいました」 前原がいう「野手の助け」とは、10回表の右翼手・政野寛明のビッグプレーだ。1点を失ってなおも二死満塁のピンチで、前原はライト前ヒットを浴びた。三塁走者がホームに還り2失点目。さらに二塁走者の生還も覚悟したが、政野のホームへの好返球で3点目を阻止した。「2点」と「3点」。タイブレークでは、その1点の差は大きな意味を持つ。途中出場の政野のプレーは、その裏の攻撃に希望を与えるものだった。 好投した前原、好返球を見せた政野。そしてもう一人、チームを救ったのは「2番・DH」で先発出場した喜多亮太だった。 1点を追う7回裏。二死二塁から喜多のライト前ヒットで同点に追いついた。1回裏の第一打席でもチーム初安打となるライト前ヒットを放っていた喜多の勝負強さが、終盤での同点劇を生み、チームに勢いをもたらした。 初芝監督が試合を振り返る。 「前原は、流れを呼び込むピッチングを見せてくれました。政野のバックホームも大きかった。そして、喜多ですね。大会前からバッティングの状態はよかったんですが、あの終盤でよく打ってくれました」 チームにはそれぞれ勝ちパターンというものがある。エースが抑え、主軸が打つ。それは野球における勝利の定石であり、その確固たる形を持ったチームほど強い。この試合は、決して定石通りの野球ではなかった。それでも、最後は勝利を手にした。互いに助け合い、これまで日の目を見ることがなかった選手たちが活躍しながら。 だからこそ、価値がある。 初戦の勝利は、今シーズンこれまで燻っていたチームにとって大きな意味を持つ勝利だった。 (文・写真:佐々木亨) 前へ 1 次へ 前の試合へ 試合結果一覧 次の試合へ
戦評COMMENT
2点を追う延長10回裏。タイブレークの一死満塁で、4番川端裕也が三振に倒れる。4回裏に二塁打を放つなど、今シーズンも打線の核として存在感を示している川端が倒れ、一瞬だけ「敗戦」が頭をよぎった。
追い詰められた。もう後がない。
だが、その絶体絶命の場面からチームは底力を見せた。
二死満塁。5番佐藤貴穂はフルカウントまで粘った。6球目はスライダー。見逃せばボール球だったかもしれない低めの変化球に、佐藤のバットが食らいつく。体勢を崩しながら、左手一本でとらえた打球はライト前に落ち、二人の走者がホームを還って同点に追いつく。
「その前にスライダーを空振りしていたので、また同じ変化球で勝負にくることも想定していました。粘り腰です」(佐藤)
なおも二死一、三塁とチャンスは続き、打席には6番澤良木喬之。
初球だった。低めのストレートをとらえた強烈な打球が、右翼手の頭上を越えていく。三塁走者の江藤圭樹が悠々とホームに還り、打った澤良木をチームメイトが満面の笑顔で迎え入れる。
「2打席目(4回裏一死一、三塁での打席)でチャンスを潰していたので、何とか挽回したかった。その一心でした」(澤良木)
悔しさをエネルギーに換え、最後まで諦めなかった先にサヨナラ勝利が待っていた。
その流れを引き込んだのは、三人の選手だった。
「投」では、2番手でマウンドに上がった前原侑宜だ。
先発の横田哲は7回途中まで投げて5安打1失点。何度も得点圏に走者を進められながら、要所を抑えたピッチングは「さすが」のひと言。今シーズンは、いまだ本調子とは言えない中で見せた1失点のピッチングに、横田自身も「何とか抑えられてホッとしました」と言う。だが、本来の姿と比較すれば、内容としてはまだまだ物足りなさが残るピッチングだった。「1失点で何とかしのぎましたが、横田に求めるものはもっと高いものですし、その実力はある」とは初芝清監督。本人も「これからさらに状態を上げていきたい」と、この試合でのピッチングを満足している様子はなかった。そして、横田はこうも言う。
「今日は前原に助けられました」
7回表一死二塁の場面で横田からマウンドを譲り受けた前原は、2者連続三振でピンチを切り抜けた。8回表、9回表は三者凡退。自身「初めての経験だった」というタイブレークの10回表には2点を失ったが、全体的には安定したピッチングが光った。
「今日はスライダーを多めに投げました。それなりに自分のピッチングはできたと思います。ただ、10回表は低めを意識し過ぎるあまりにボール先行のピッチングになって、ストライクを取りにいったところを狙われて失点しまった。そこは反省点。最後は野手に助けてもらいました」
前原がいう「野手の助け」とは、10回表の右翼手・政野寛明のビッグプレーだ。1点を失ってなおも二死満塁のピンチで、前原はライト前ヒットを浴びた。三塁走者がホームに還り2失点目。さらに二塁走者の生還も覚悟したが、政野のホームへの好返球で3点目を阻止した。「2点」と「3点」。タイブレークでは、その1点の差は大きな意味を持つ。途中出場の政野のプレーは、その裏の攻撃に希望を与えるものだった。
好投した前原、好返球を見せた政野。そしてもう一人、チームを救ったのは「2番・DH」で先発出場した喜多亮太だった。
1点を追う7回裏。二死二塁から喜多のライト前ヒットで同点に追いついた。1回裏の第一打席でもチーム初安打となるライト前ヒットを放っていた喜多の勝負強さが、終盤での同点劇を生み、チームに勢いをもたらした。
初芝監督が試合を振り返る。
「前原は、流れを呼び込むピッチングを見せてくれました。政野のバックホームも大きかった。そして、喜多ですね。大会前からバッティングの状態はよかったんですが、あの終盤でよく打ってくれました」
チームにはそれぞれ勝ちパターンというものがある。エースが抑え、主軸が打つ。それは野球における勝利の定石であり、その確固たる形を持ったチームほど強い。この試合は、決して定石通りの野球ではなかった。それでも、最後は勝利を手にした。互いに助け合い、これまで日の目を見ることがなかった選手たちが活躍しながら。
だからこそ、価値がある。
初戦の勝利は、今シーズンこれまで燻っていたチームにとって大きな意味を持つ勝利だった。
(文・写真:佐々木亨)