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BATTERY

前原、横田-佐藤

HOMERUN

澤良木(11回ソロ)

戦評COMMENT

同点の延長11回表、二死走者なしで迎えた第5打席だった。5番・澤良木喬之は、はっきりと言う。
「狙っていました」
カウント2ボール2ストライクからの5球目は「おそらく外角のストレートだったと思う」。そう振り返るように、澤良木は無我夢中でバットを振り抜いた。打球が大田スタジアムの上空に舞い上がる。
「打った瞬間は、しっかりととらえた感覚はありました。でも、風(センターからホームへ流れる上空の風)もありましたし、スタンドに入るとは思わなかった」
勝利への強い思い、そして第4打席までの悔しさも加わった一打は、逆風を切り裂いて右中間スタンドに吸い込まれた。澤良木が実感をこめる。
「それまでの打席が三振ばかり(4打席で3三振)で、チームに迷惑をかけていたので何とかしたかった。我慢強く使い続けてくれた監督のためにも打ちたかった」
チーム全体としても苦しい展開が続いた。5回表まではノーヒット。唯一の出塁は4回表の1番・本間諒の死球のみ。鷺宮製作所の先発左腕・野川拓斗投手を攻略できずに無得点を続けた。
何とかしたい――。選手たちの思いは一つ一つのプレーから伝わってきたが、攻撃の糸口すら見つからない。それでも6回表、二つの四球をきっかけに一死二、三塁とチャンスを築くと、2番喜多亮太のスクイズ(記録は内野安打)で待望の先制点を奪った。
「(スクイズの)準備はしていました。絶対に決めてやると思った」(喜多)
だが、7回表以降は再び各打者のバットが沈黙を続ける。先頭の9番坂本一将が四球を選び、1番本間がチーム2本目となるヒットを放った8回表も、後続が倒れて得点のチャンスを逸した。流れがこない。ヒットが生まれない。選手たちの表情には、悔しさと焦りが浮かぶ。そんな劣勢を振り返ったのが澤良木の一発だった。
勝因は何か。もちろん、執念で決めた喜多のスクイズ、そして澤良木の起死回生の本塁打が勝利を呼び込んだことは間違いない。だが、最大の勝因は最後まで我慢強く耐えたチームとしての守備力だったことは明白だ。先発の前原侑宜は7イニングスを投げ切って7安打を浴びながらも要所を締めて1失点にまとめた。
「ヒットを打たれても野手に助けてもらいながら落ち着いて投げられました」
先頭打者にセンター前ヒットを浴びるなど一死一、三塁とピンチを迎えた1回裏は、内野の堅守で併殺を奪い無失点。2回裏は、無死一塁からの犠打を三塁手の宮之原裕樹がダイレクトで好捕して相手の勢いを食い止めた。4回裏、先頭打者のレフト前の打球をスライディングキャッチした左翼手・川端裕也のプレーも見逃せない。さらに、前原が「野手に助けられて1点でしのいだのは大きかった」と振り返る6回裏は、野手陣の堅守がもっとも光った。同点とされてなおも一死一塁。相手の5番打者の打球は右中間に飛んだ。一塁走者が三塁ベースを蹴って一気にホームを狙う中、中堅手の富田裕貴、二塁手の江藤圭樹、そして捕手の佐藤貴穂と渡った中継プレーで勝ち越しを許さなかった。試合展開からすれば、勝敗を大きく左右するビックプレーだった。
そして、この試合最大のポイントと言える9回裏だ。8回裏から登板していた横田哲は、二死満塁でフルカウントという絶体絶命のピンチを迎えた。
「生きた心地がしませんでした。とにかく必死に最後はストレートを投げました」
結果はショートゴロ。左腕の球威と思いが勝った。結局、4イニングスを投げて無失点に抑えた横田が、改めてマウンドを振り返る。
「試合前に前原に言っていたんです。『きれいにバトンを渡してくれよ』って。その言葉通りに前原はしっかりと投げてくれた。それだけに、絶対に試合をぶち壊してはいけない。そう思って最後まで投げました。今日は粘り強く投げられた。次につながるピッチングだったと思います」
粘って、耐えて、最後に笑った敗者復活2回戦。この試合の勝利は、代表権獲得に向けて価値ある1勝だった。
(文・写真:佐々木亨)