HOME 試合情報 試合結果 第1戦 試合日程・結果 2016.04.15 [Fri] 第39回JABA日立市長杯選抜野球大会第1戦 vs JR東日本東北 日立製作所会瀬球場 前の試合へ 次の試合へ TEAM T 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E JR東日本東北 J 0 2 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 セガサミー セ 0 5 0 0 0 0 0 0 x 5 0 0 BATTERY 森脇-喜多、須田 選手成績 戦評 速報 戦評COMMENT 春の呼吸は勇ましく、右へ、左へ、時にはセンターからバックネット方向へ、気まぐれに上空を流れていた。球場脇のサクラの花びらが、我先にとグラウンドに舞い散る。 風が吹いていた。 それは三塁側ベンチにとって幸運の風だった。神風とも言える強風に乗った打球が、相手チームの野手を惑わせ、何度もスコアボードにヒットを示す『H』のランプが灯ったのは2回裏のことだった。 イニングの先頭となった4番根岸晃太郎の飛球がセカンド後方に舞い上がる。通常なら、難なく二塁手が捕球できただろうか。だが、上空で不規則に流れる風が影響し、打球は二塁手のグラブをすり抜けてグラウンドに落ちた。記録は二塁打。さらに、5番赤堀大智のライトへの飛球も風に押し戻され、一瞬、打球の判断が遅れた右翼手の前に落ちる。またしても記録は二塁打。幸運なヒットが続き、無死二、三塁と攻め立てた。6番澤良木のライトへの犠飛で、きっちりと1点を奪ったのはその直後だ。なおも一死三塁とチャンスが続くと、7番大月将平にセンター前への適時打が飛び出す。今シーズンの公式戦初スタメン。その第一打席で結果を残し、チームの期待に応えた大月は言う。 「ここ最近はバッティングの状態がよかった。特に左投手に対しては今、自信を持ってバットが振れています」 JR東日本東北の長身左腕・西村祐太投手から放った大月の一打は、三塁側ベンチの勢いを加速させる貴重な同点打だった。二死後、8番喜多亮太の左翼線二塁打で再び息を吹き返した攻撃陣は、9番高島秀伍のレフト前への適時打で勝ち越しに成功。さらに、高島の盗塁と1番江藤圭樹の死球で一、二塁とチャンスが広がると、またしても風が得点シーンを演出した。2番砂川哲平の打球がショート後方に上がる。高々と舞った飛球が遊撃手の足もとにポトリと落ちたのはその直後だ。記録はヒット。二塁走者の高島に続き、一塁走者の江藤が一気にホームを陥れて一気に点差は3点に広がった。 その後、得点にこそつながらなかったが3番本間諒にもセンター前ヒットが生まれ、2回裏の安打数は計7本。そのうち3安打は、風が影響したもの。しかも、そのいずれもが得点につながったのだから、まさに「神風が吹いた」と言えるだろうか。だが、幸運の風を逃すことなくしっかりとらえ、得点に結びつけた攻撃陣の集中力と打力は、風とは関係なく価値のあるものだった。 その価値をさらに際立たせ、勝利につなげたのが先発の森脇亮介だった。「ピッチングの状態が悪かった」序盤は、適時二塁打と暴投で2失点。特に森脇が悔やむのは2回表に先制点を奪われた場面だ。二死から6番打者にレフト前ヒットを浴びて走者一塁。続く7番打者には、甘く入った初球のストレートを左中間に運ばれて1点を失った。 「もっと厳しいコースをつくべきだった」 捕手の喜多が要求したコース通りではなかった失投。試合後の右腕は、痛恨の一球を悔しさとともに思い浮かべた。 それでも、3回表からは徐々に本来の投球を取り戻していった。JR東日本東北の各打者が「狙い球をストレートに絞っていた」と見るや、緩いカーブを多めに使いながら緩急で勝負した。ともに満塁のピンチを迎えた7回表と9回表も、粘り強いピッチングで決定打を許さずに無失点。結局、9安打を浴びながらも2失点にまとめた森脇は、入社以来初となる公式戦での完投勝利を手にした。 「最後は疲れました」 そう言いつつも、その表情には充実感が見え隠れする。 攻撃陣がワンチャンスを大量点に結びつけ、右腕エースが主戦らしく最後まで投げ切ったリーグ戦初戦。 勝利の風に乗ったチームは勢いそのままに、次なる戦いへ向かう。 文・写真:佐々木亨 前へ 1 次へ 前の試合へ 試合結果一覧 次の試合へ
戦評COMMENT
春の呼吸は勇ましく、右へ、左へ、時にはセンターからバックネット方向へ、気まぐれに上空を流れていた。球場脇のサクラの花びらが、我先にとグラウンドに舞い散る。
風が吹いていた。
それは三塁側ベンチにとって幸運の風だった。神風とも言える強風に乗った打球が、相手チームの野手を惑わせ、何度もスコアボードにヒットを示す『H』のランプが灯ったのは2回裏のことだった。
イニングの先頭となった4番根岸晃太郎の飛球がセカンド後方に舞い上がる。通常なら、難なく二塁手が捕球できただろうか。だが、上空で不規則に流れる風が影響し、打球は二塁手のグラブをすり抜けてグラウンドに落ちた。記録は二塁打。さらに、5番赤堀大智のライトへの飛球も風に押し戻され、一瞬、打球の判断が遅れた右翼手の前に落ちる。またしても記録は二塁打。幸運なヒットが続き、無死二、三塁と攻め立てた。6番澤良木のライトへの犠飛で、きっちりと1点を奪ったのはその直後だ。なおも一死三塁とチャンスが続くと、7番大月将平にセンター前への適時打が飛び出す。今シーズンの公式戦初スタメン。その第一打席で結果を残し、チームの期待に応えた大月は言う。
「ここ最近はバッティングの状態がよかった。特に左投手に対しては今、自信を持ってバットが振れています」
JR東日本東北の長身左腕・西村祐太投手から放った大月の一打は、三塁側ベンチの勢いを加速させる貴重な同点打だった。二死後、8番喜多亮太の左翼線二塁打で再び息を吹き返した攻撃陣は、9番高島秀伍のレフト前への適時打で勝ち越しに成功。さらに、高島の盗塁と1番江藤圭樹の死球で一、二塁とチャンスが広がると、またしても風が得点シーンを演出した。2番砂川哲平の打球がショート後方に上がる。高々と舞った飛球が遊撃手の足もとにポトリと落ちたのはその直後だ。記録はヒット。二塁走者の高島に続き、一塁走者の江藤が一気にホームを陥れて一気に点差は3点に広がった。
その後、得点にこそつながらなかったが3番本間諒にもセンター前ヒットが生まれ、2回裏の安打数は計7本。そのうち3安打は、風が影響したもの。しかも、そのいずれもが得点につながったのだから、まさに「神風が吹いた」と言えるだろうか。だが、幸運の風を逃すことなくしっかりとらえ、得点に結びつけた攻撃陣の集中力と打力は、風とは関係なく価値のあるものだった。
その価値をさらに際立たせ、勝利につなげたのが先発の森脇亮介だった。「ピッチングの状態が悪かった」序盤は、適時二塁打と暴投で2失点。特に森脇が悔やむのは2回表に先制点を奪われた場面だ。二死から6番打者にレフト前ヒットを浴びて走者一塁。続く7番打者には、甘く入った初球のストレートを左中間に運ばれて1点を失った。
「もっと厳しいコースをつくべきだった」
捕手の喜多が要求したコース通りではなかった失投。試合後の右腕は、痛恨の一球を悔しさとともに思い浮かべた。
それでも、3回表からは徐々に本来の投球を取り戻していった。JR東日本東北の各打者が「狙い球をストレートに絞っていた」と見るや、緩いカーブを多めに使いながら緩急で勝負した。ともに満塁のピンチを迎えた7回表と9回表も、粘り強いピッチングで決定打を許さずに無失点。結局、9安打を浴びながらも2失点にまとめた森脇は、入社以来初となる公式戦での完投勝利を手にした。
「最後は疲れました」
そう言いつつも、その表情には充実感が見え隠れする。
攻撃陣がワンチャンスを大量点に結びつけ、右腕エースが主戦らしく最後まで投げ切ったリーグ戦初戦。
勝利の風に乗ったチームは勢いそのままに、次なる戦いへ向かう。
文・写真:佐々木亨