HOME 試合情報 試合結果 1回戦 試合日程・結果 2016.05.24 [Tue] 第87回都市対抗野球大会 東京都二次予選1回戦 vs NTT東日本 大田スタジアム 前の試合へ 次の試合へ TEAM T 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E セガサミー セ 0 2 0 0 0 0 2 1 0 5 0 0 NTT東日本 N 2 0 0 3 0 0 0 2 x 7 0 0 BATTERY 森脇、横田-喜多 HOMERUN 澤良木(2回2ラン) 選手成績 戦評 速報 戦評COMMENT 勝ちたい、負けられない――。その想いは、決して劣ってはいなかったはずだ。 取られたら、取り返す――。その姿勢は、確かな形として終盤まで示し続けた。 先発の森脇亮介は立ち上がりから苦しんだ。1回裏は先頭打者への四球を皮切りに2安打を浴びて2失点。25球を要した球数が、右腕の状態の悪さを物語っていた。それでも、直後の2回表、すかさず攻撃陣が右腕エースを援護する。 イニングの先頭となった5番赤堀大智はフルカウントまで粘って四球を選んだ。一球一球、自身の間合いで対峙する赤堀の打席での立ち振る舞いが、テンポ良く投げたい相手投手のペースを微妙に崩す。決して相手の「土俵」で勝負させないその姿勢が、直後の歓喜をもたらしたと言っても過言ではない。無死一塁から6番澤良木喬之がセンターバックスクリーンのやや右寄り、最深部に飛び込む豪快な同点弾を放つ。 「打った球はツーシーム」 そう振り返る澤良木の一撃が、沈みかけていたムードを一掃したのは言うまでもない。 森脇もまた、同点となった2回裏からは自身のピッチングを少しずつ取り戻していった。2回裏に続いて無失点に抑えた3回裏は、2者連続三振を奪うなど復調の兆しを見せた。だが、4回裏。先発マスクの喜多亮太が「表情もよくなかった」と振り返るように、本来のピッチングを完全に取り戻すことができなかった森脇は、長短打4本を浴びて3失点。主導権を再び相手に与え、イニングの途中で降板した。 またしても劣勢を強いられた一塁側。だが、都市対抗予選の独特な緊張感の中、選手たちの試合に賭ける想いが失われることはなかった。7回表は8番喜多の左翼線二塁打を皮切りに2番砂川哲平のライト前適時打で点差を2点に縮める。なおも二死一、二塁で、3番江藤圭樹のセカンドゴロが相手内野手の失策を誘う。打球が外野へ逸れるや、二塁走者の富田裕貴が好判断でホームを陥れて4点目。確かな足音とともに相手に迫る。 そして、勝利への執念が一気に高まったのは8回表だ。5番赤堀が失策で出塁して無死一塁。6番澤良木が犠打を二度失敗するも、アウトコースのスライダーを左中間へ運び、チャンスを一、三塁と拡大させた。続く7番根岸晃太郎は、打席に入る前に初芝清監督からこう言われた。 「おまえの持ち味は何だ? 『若さ』だよな」 そのアドバイス通りに、根岸は若さ溢れる思い切りの良いスイングを見せた。カウント1ボール1ストライクの3球目だった。興奮状態にあった根岸は「どんな球を打ったのか、はっきりと覚えていませんが、おそらくツーシームだったと思います」。打球がレフト前へ抜け、三塁走者の赤堀がホームへ還って同点。その瞬間、一塁側ベンチ、さらにスタンドのボルテージは最高潮に達した。 同点に追いついた直後の8回裏に2番手の横田哲が2点を失い最後は敗れた。それでも、4回途中から7回裏まで無安打無失点に抑えた横田のピッチングは、次なる戦いに向けて大きな収穫だったと言える。そして何よりも、劣勢が続く中で最後まで諦めなかった攻撃陣の姿勢は、これからの戦いに必ずや生きてくるはずだ。悔やまれるのは、同点に追いつき、なおも無死一、二塁と攻め続けながら一気に勝ち越せなかった場面。犠打を試みるが、併殺を決められてチャンスを拡大できなかった拙攻だけは今後の課題として残る。それでもやはり、この試合には見えた。勝利に対する熱い想いと、それを形として表す力強さが。 負けられない試合が続く敗者復活戦。チームは気持ちを新たに挑み続ける。 文・写真:佐々木亨 前へ 1 次へ 前の試合へ 試合結果一覧 次の試合へ
戦評COMMENT
勝ちたい、負けられない――。その想いは、決して劣ってはいなかったはずだ。
取られたら、取り返す――。その姿勢は、確かな形として終盤まで示し続けた。
先発の森脇亮介は立ち上がりから苦しんだ。1回裏は先頭打者への四球を皮切りに2安打を浴びて2失点。25球を要した球数が、右腕の状態の悪さを物語っていた。それでも、直後の2回表、すかさず攻撃陣が右腕エースを援護する。
イニングの先頭となった5番赤堀大智はフルカウントまで粘って四球を選んだ。一球一球、自身の間合いで対峙する赤堀の打席での立ち振る舞いが、テンポ良く投げたい相手投手のペースを微妙に崩す。決して相手の「土俵」で勝負させないその姿勢が、直後の歓喜をもたらしたと言っても過言ではない。無死一塁から6番澤良木喬之がセンターバックスクリーンのやや右寄り、最深部に飛び込む豪快な同点弾を放つ。
「打った球はツーシーム」
そう振り返る澤良木の一撃が、沈みかけていたムードを一掃したのは言うまでもない。
森脇もまた、同点となった2回裏からは自身のピッチングを少しずつ取り戻していった。2回裏に続いて無失点に抑えた3回裏は、2者連続三振を奪うなど復調の兆しを見せた。だが、4回裏。先発マスクの喜多亮太が「表情もよくなかった」と振り返るように、本来のピッチングを完全に取り戻すことができなかった森脇は、長短打4本を浴びて3失点。主導権を再び相手に与え、イニングの途中で降板した。
またしても劣勢を強いられた一塁側。だが、都市対抗予選の独特な緊張感の中、選手たちの試合に賭ける想いが失われることはなかった。7回表は8番喜多の左翼線二塁打を皮切りに2番砂川哲平のライト前適時打で点差を2点に縮める。なおも二死一、二塁で、3番江藤圭樹のセカンドゴロが相手内野手の失策を誘う。打球が外野へ逸れるや、二塁走者の富田裕貴が好判断でホームを陥れて4点目。確かな足音とともに相手に迫る。
そして、勝利への執念が一気に高まったのは8回表だ。5番赤堀が失策で出塁して無死一塁。6番澤良木が犠打を二度失敗するも、アウトコースのスライダーを左中間へ運び、チャンスを一、三塁と拡大させた。続く7番根岸晃太郎は、打席に入る前に初芝清監督からこう言われた。
「おまえの持ち味は何だ? 『若さ』だよな」
そのアドバイス通りに、根岸は若さ溢れる思い切りの良いスイングを見せた。カウント1ボール1ストライクの3球目だった。興奮状態にあった根岸は「どんな球を打ったのか、はっきりと覚えていませんが、おそらくツーシームだったと思います」。打球がレフト前へ抜け、三塁走者の赤堀がホームへ還って同点。その瞬間、一塁側ベンチ、さらにスタンドのボルテージは最高潮に達した。
同点に追いついた直後の8回裏に2番手の横田哲が2点を失い最後は敗れた。それでも、4回途中から7回裏まで無安打無失点に抑えた横田のピッチングは、次なる戦いに向けて大きな収穫だったと言える。そして何よりも、劣勢が続く中で最後まで諦めなかった攻撃陣の姿勢は、これからの戦いに必ずや生きてくるはずだ。悔やまれるのは、同点に追いつき、なおも無死一、二塁と攻め続けながら一気に勝ち越せなかった場面。犠打を試みるが、併殺を決められてチャンスを拡大できなかった拙攻だけは今後の課題として残る。それでもやはり、この試合には見えた。勝利に対する熱い想いと、それを形として表す力強さが。
負けられない試合が続く敗者復活戦。チームは気持ちを新たに挑み続ける。
文・写真:佐々木亨