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  • 鷺宮製作所
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BATTERY

氏家、田中、石垣、井上、島津-須田、喜多

戦評COMMENT

照りつける太陽が妙に煩わしく感じたのは、6回表までわずか1安打に封じられた攻撃と無関係ではなかったかもしれない。1回表は2番宮川和人のセンター前ヒットを皮切りに2つの四死球で満塁と攻めたが無得点。その後は三者凡退のイニングが続き、中盤までは6回表の1番砂川哲平の四球が2回以降で唯一の出塁だった。

打てない。走者が出ない。

まるで試合に流れる重い空気が加勢しているかのように、暑さがいっそう身体に堪えた。

だが、1点を追う7回表。それまでの空気が一変する。身体に溜まっていた熱が一気に噴き出した。

イニングの先頭となった5番澤良木喬之がセンター前ヒットで出塁する。「次の打者につなげる意識でした」。後続の2つの内野ゴロの間に、代走の黒木成が進塁して二死三塁とした。そのチャンスで、6回裏の守備から出場していた8番喜多亮太が打席に入った。

喜多は思った。「入りから勝負してこない」。定石通りならば、相手バッテリーは初球に細心の注意を払い、際どいコースを狙ったり、変化球で打者の打ち気を逸らすことが多い。相手にとってピンチの場面ならなおさらだ。だが、初球は意外なものだった。

「真ん中のストレート。うまく反応できて思い切り振ることができました」

同点打となるセンター前ヒット。一塁側ベンチに視線を送りながら、喜多は右手を強く握りしめた。勝負強さを発揮した喜多は、今予選では試合終盤での途中出場が多い。それでも、来たるべき時のためにしっかりと準備だけはしてきた。

「試合に出た時に結果を出せるように準備は常にしています。(同点打の場面は)澤良木さんが出塁した瞬間、チャンスで必ず打席が回ってくると思ったので『絶対に打ってやろう』と思いました。今日は、集中力がより高まりました」

喜多の一打がベンチの雰囲気、そして試合の流れを大きく変えたのは間違いない。その後は堰を切ったように得点シーンが生まれる。二死満塁から2番宮川と3番赤堀大智が続けて押し出しの四球を選んで労せずして勝ち越すと、4番根岸晃太郎のショートへの痛烈なライナーが内野安打となり4点目。さらに5番澤良木と6番佐藤貴穂の押し出し四球、7番江藤圭樹の2点適時打となるレフト越え二塁打、8番喜多の1イニング2本目となる適時打で、この回一挙9得点。「もらった得点」という見方もあるが、いずにせよ終盤に訪れたビックイニングで試合を決定づけた。

投手陣では、先発の氏家優悟が6回途中まで投げて6安打1失点の好投。毎イニングで走者を背負うピッチングとなったが、要所を締めて先発の役割を十分に果たしたと言える。終わってみれば、6点差での大勝だ。終盤に2番手の田中太一が2失点、5番手の島津瑛向が1失点と大味な試合となってしまったが、とにもかくにも大事な第2代表ゾーンの2回戦を勝ち切った。9回表にもセンター前への適時打を放ち、3安打3打点と勝利に貢献した喜多は言う。

「どんな形であろうと、今は出場したらチームの力になることだけを考えています。とにかく、みんなで勝ちたい」

代表権獲得に向けて一つ一つの階段を駆け上がっていかなければいけないチームにとって、喜多が言う「みんなで」という言葉こそが今後のキーワードになっていく。

(文・写真:佐々木亨)