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  • セガサミー
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  • 鷺宮製作所
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BATTERY

横田-佐藤

HOMERUN

根岸(5回ソロ)

戦評COMMENT

長く、長く、時には重圧に押し潰されそうになった都市対抗予選を終え、彼らは薄っすらと涙を浮かべた。その光るものは、神宮球場のカクテル光線に照らされていた。

ベンチの手すりに寄りかかり、目頭を熱くしながらスコアボードに視線を送った主将の赤堀大智は言う。

「昨年の都市対抗予選敗退からの1年間、この日が来ることを信じ、そのために頑張ってきました。今シーズンはJABA大会も含めて大事な試合で勝つことができずに苦労しましたが、予選最後の大一番で勝つことができて本当によかった。チームみんなでつないだ勝利だったと思います」

主将が語る勝因を明確に、そして力強く示したのが5回表だ。4回表まではノーヒット。四死球や失策の出塁もなく、逆に4回裏に1点を先制されて迎えた中盤だった。イニングの先頭打者は、前日(JR東日本戦)の6番降格から再び4番に戻った根岸晃太郎。その初球だった。鷺宮製作所の先発・西村純季投手のフォークボールをとらえた打球が、神宮の空に舞った。滞空時間の長い一撃がレフトスタンドへ吸い込まれる。根岸が振り返る。

「甘いコースならどんどん振っていこうと思っていました。ここ一番の場面で、やっと4番の仕事ができました」

重苦しい空気を振り払う主砲の同点弾は、試合の流れを大きく変えた。一死後、指名打者の6番須田凌平がライトフェンス直撃の二塁打を放つと、攻撃陣の勢いは一気に加速していった。7番江藤圭樹の打球がショートの失策を誘い一、三塁。8番佐藤貴穂の技ありの勝ち越し打(ライト前ヒット)が飛び出したのは、その直後だ。9番富田裕貴がライト前ヒットで続き3点目。なおも1番砂川哲平が四球を選んで満塁とすると、2番宮川和人が「(スタンドに)入ると思った」と振り返る会心のレフトフェンス直撃打(二塁打)を放って2点を追加。さらに二、三塁から、3番澤良木喬之がセンターの頭上を強烈なライナーで越えていく適時二塁打を放って7点目。そして、ビッグイニングにさらに彩りを加えたのが、1イニング2度目の打席となった6番須田の2点適時打となる左中間への二塁打だった。

根岸のソロアーチから始まり、7者連続出塁を含む長短打7本で一挙9得点。

同じ相手である鷺宮製作所との第2代表ゾーンの2回戦でも1イニング9得点というシーンがあったが、その内容は明らかに違う。ヒットを量産し、チームとして「つないだ」攻撃には、相手を圧倒する力強さがあった。

9回表にも2番宮川のセンター前ヒットからの4者連続ヒット、さらに7番江藤の2点適時打となるライト前ヒットもあって3点を追加したチームは、計13安打で12点を奪った。

大量得点を背に、マウンドに立ち続けたのは先発の横田哲だ。点差が広がれば広がるほどに、どうしても気持ちに隙が生まれるものだが、エースは最後まで集中力を絶やさずに左腕を振り続けた。9安打を浴びながらも2失点。横田は言う。

「チームは前日の試合(第三代表決定戦)で大敗しましたが、その敗戦を引きずることなく、逆に開き直って投げることができました。気負いもなく、緊張もせずに投げられた。今日はタカさん(佐藤貴穂)と約1年半ぶりにバッテリーを組みましたが、一球一球、納得して投げることができました」

先発マスクは経験豊富な7年目捕手だった。今シーズン、佐藤が捕手として出場したのはオープン戦の3試合のみ。公式戦では一度もマスクを被ったことがなかった。そんな佐藤を大一番で先発マスクに起用したベンチワーク。リスクもあっただろうが、高い経験値に勝利を託し、その期待に佐藤は応えた。5回表の貴重な適時打も含めて攻守で勝利に貢献した佐藤は言う。

「横田は気持ちを切らさずに、よく投げてくれました。最後にマウンド上で(横田と)抱き合えてよかった」

9回裏。最後の打者をセンターフライに討ち取った横田はマウンドで両手を突き上げた。駆け寄る佐藤が「投の主役」を抱え上げ、そのバッテリーを中心に歓喜の輪ができた。

試合を終えた初芝清監督は激闘の予選をこう振り返った。

「これまでの今シーズンは、ピッチャーが抑えれば打線が打てず、逆に打線が打てばピッチャーが点を取られ、本当にしんどいゲームが続きました。予選では打線がまったく打てずに……。でも、負けたら終わりの今日の試合は、選手たちが本当によく頑張ってくれました。感無量です」

予選の最優秀選手賞に選出された横田は、試合後に笑顔と安堵の表情を浮かべた。同じく優秀選手賞に選ばれた根岸は最高の笑顔ととともにこう話した。

「今日、この大事な試合で勝ててよかった。この日のためにバットを振り続けてきて、本当によかったです」

さあ、2年ぶりの東京ドームだ。苦しい予選を経て挑む、9度目の夏の祭典。主将の赤堀は力強く誓う。

「本戦までしっかりと準備をして、東京ドームでも頑張ります」

(文・写真:佐々木亨)