HOME 試合情報 試合結果 1回戦 試合日程・結果 2017.07.19 [Wed] 10:30 第88回都市対抗野球大会1回戦 vs 東邦ガス 東京ドーム 一塁側 前の試合へ 次の試合へ TEAM T 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E 東邦ガス 東 0 2 1 0 1 0 0 0 0 4 12 1 セガサミー セ 0 5 0 0 0 0 3 0 x 8 8 1 BATTERY 横田、石垣、氏家、田中-佐藤、喜多 HOMERUN 井村(7回2ラン) 選手成績 戦評 速報 戦評COMMENT 閉ざされていた重い扉は、今シーズンを象徴する『集中打』によって開かれた。 単打3本を集められて2点を先制されたのは2回表だ。2014年の都市対抗1回戦、先発として敗戦投手になった富士重工業(現・SUBARU)戦を思い浮かべながら、先発の横田哲は言う。 「力が入り過ぎた3年前の反省から、今日は良い意味での『脱力』をテーマに投げたんですが・・・。球種が偏ってしまったところが反省点です」 チェンジアップに頼り過ぎたピッチングを悔やんだ。 だが、失点直後の2回裏。ストレートの四球を選んだ4番・根岸晃太郎の出塁から反撃が始まる。「イニングの先頭として大きな仕事ができた」(根岸)。一死後、6番井村滋(明治安田生命からの補強選手)の四球で一、二塁。その好機で、7番須田凌平が初球の変化球を左中間へ運んだ。根岸に続き、一塁走者の井村も一気にホームを陥れて同点。試合の流れを引き寄せる適時二塁打を放った須田は言う。 「相手バッテリーとすれば、四球が2つ続いていたので、初球はストライクを取りたい場面。(ストライクを)取りに来る変化球を狙っていました。バットの先でしたが、タイムリーヒットになってくれてよかった」 指名打者としての打席で、本職である捕手の読みが勝った。 須田の一打で攻撃のスイッチが入った打線は、その後も9番宮川和人からの3連打で加点。結局、打者一巡の猛攻で5点を奪って一気に勝ち越しに成功した。 3回表と5回表にそれぞれ1点を返されて1点差に詰め寄られるが、迎えた7回裏には4番打者の一振りで貴重な追加点を挙げた。イニングの先頭となった3番澤良木喬之が四球で出塁。終盤に訪れた無死一塁の好機でベンチが動く。代走に1年目の俊足・草海光貴を送った。4番根岸の右中間を破る二塁打が飛び出したのは、その直後だ。三塁ベースコーチの前田忠節コーチは、打球を見た瞬間に一塁走者が本塁を狙う姿がはっきりとイメージできたという。前田コーチが回す右腕に導かれながら、草海が三塁ベースを蹴った。 「普通に走っていれば問題はなかったのですが、三塁ベースを蹴ってから草海のスピードが失速した」 前田コーチが言うように、本塁のクロスプレーは微妙なタイミングになった。だが、中継プレーの返球よりも一瞬早く、草海の左手がホームベースに触れる瞬間を球審の目がとらえる。欲しかった追加点がスコアボードに刻まれたのは、その直後だった。さらに三塁に走者を置き、6番井村がレフトポール際へ2ラン本塁打を放ち、このイニングだけで3得点。点差が4点に広がり、試合は落ち着いた。 投げては、横田からマウンドを譲り受けた2番手の石垣永悟、3番手の氏家優悟、そして4番手の田中太一とつないだ投手陣が、中盤以降は相手打線をわずか1点に抑えた。特に際立つピッチングを見せたのは、4回表の石垣だ。二死一、二塁のピンチで登板した右腕は、140キロ台の勢いあるストレートを多投して左打席に立つ1番打者に向かっていた。最後はインコースへの140キロのストレート。点差は2点、相手の反撃を食い止めたい勝負所で見せた見逃し三振は、この試合の行方を左右する重要なポイントとなった。 吉井憲治コーチは言う。 「石垣は大会前のオープン戦でしっかりと結果を出した。今日の登板機会は、石垣自身が自分の力で勝ち取ったもの。よく投げてくれました」 初芝清監督にも同じような思いがある。 「選手たちがそれぞれに、自分のスタイルでよく頑張ってくれました」 5年ぶりとなる東京ドームでの勝利。現在、プロの世界で活躍する宮﨑敏郎選手(現・横浜DeNA)の逆転満塁弾で勝利した2012年以来の初戦突破だ。初芝監督にとっては、初めて味わう都市対抗での勝利――。 その喜びを、試合後の指揮官は手渡されたウイニングボールとともにバックにそっとしまい込んで噛みしめた。 (文:佐々木亨/写真:政川慎治) 前へ 1 次へ PHOTO GALLERY 一覧を見る 前の試合へ 試合結果一覧 次の試合へ
戦評COMMENT
閉ざされていた重い扉は、今シーズンを象徴する『集中打』によって開かれた。
単打3本を集められて2点を先制されたのは2回表だ。2014年の都市対抗1回戦、先発として敗戦投手になった富士重工業(現・SUBARU)戦を思い浮かべながら、先発の横田哲は言う。
「力が入り過ぎた3年前の反省から、今日は良い意味での『脱力』をテーマに投げたんですが・・・。球種が偏ってしまったところが反省点です」
チェンジアップに頼り過ぎたピッチングを悔やんだ。
だが、失点直後の2回裏。ストレートの四球を選んだ4番・根岸晃太郎の出塁から反撃が始まる。「イニングの先頭として大きな仕事ができた」(根岸)。一死後、6番井村滋(明治安田生命からの補強選手)の四球で一、二塁。その好機で、7番須田凌平が初球の変化球を左中間へ運んだ。根岸に続き、一塁走者の井村も一気にホームを陥れて同点。試合の流れを引き寄せる適時二塁打を放った須田は言う。
「相手バッテリーとすれば、四球が2つ続いていたので、初球はストライクを取りたい場面。(ストライクを)取りに来る変化球を狙っていました。バットの先でしたが、タイムリーヒットになってくれてよかった」
指名打者としての打席で、本職である捕手の読みが勝った。
須田の一打で攻撃のスイッチが入った打線は、その後も9番宮川和人からの3連打で加点。結局、打者一巡の猛攻で5点を奪って一気に勝ち越しに成功した。
3回表と5回表にそれぞれ1点を返されて1点差に詰め寄られるが、迎えた7回裏には4番打者の一振りで貴重な追加点を挙げた。イニングの先頭となった3番澤良木喬之が四球で出塁。終盤に訪れた無死一塁の好機でベンチが動く。代走に1年目の俊足・草海光貴を送った。4番根岸の右中間を破る二塁打が飛び出したのは、その直後だ。三塁ベースコーチの前田忠節コーチは、打球を見た瞬間に一塁走者が本塁を狙う姿がはっきりとイメージできたという。前田コーチが回す右腕に導かれながら、草海が三塁ベースを蹴った。
「普通に走っていれば問題はなかったのですが、三塁ベースを蹴ってから草海のスピードが失速した」
前田コーチが言うように、本塁のクロスプレーは微妙なタイミングになった。だが、中継プレーの返球よりも一瞬早く、草海の左手がホームベースに触れる瞬間を球審の目がとらえる。欲しかった追加点がスコアボードに刻まれたのは、その直後だった。さらに三塁に走者を置き、6番井村がレフトポール際へ2ラン本塁打を放ち、このイニングだけで3得点。点差が4点に広がり、試合は落ち着いた。
投げては、横田からマウンドを譲り受けた2番手の石垣永悟、3番手の氏家優悟、そして4番手の田中太一とつないだ投手陣が、中盤以降は相手打線をわずか1点に抑えた。特に際立つピッチングを見せたのは、4回表の石垣だ。二死一、二塁のピンチで登板した右腕は、140キロ台の勢いあるストレートを多投して左打席に立つ1番打者に向かっていた。最後はインコースへの140キロのストレート。点差は2点、相手の反撃を食い止めたい勝負所で見せた見逃し三振は、この試合の行方を左右する重要なポイントとなった。
吉井憲治コーチは言う。
「石垣は大会前のオープン戦でしっかりと結果を出した。今日の登板機会は、石垣自身が自分の力で勝ち取ったもの。よく投げてくれました」
初芝清監督にも同じような思いがある。
「選手たちがそれぞれに、自分のスタイルでよく頑張ってくれました」
5年ぶりとなる東京ドームでの勝利。現在、プロの世界で活躍する宮﨑敏郎選手(現・横浜DeNA)の逆転満塁弾で勝利した2012年以来の初戦突破だ。初芝監督にとっては、初めて味わう都市対抗での勝利――。
その喜びを、試合後の指揮官は手渡されたウイニングボールとともにバックにそっとしまい込んで噛みしめた。
(文:佐々木亨/写真:政川慎治)