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  • JX-ENEOS J
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戦評COMMENT

試合開始予定時刻は午前9時。選手たちは午前3時半に起床し、その1時間後から打撃練習に励んだ後、東京都八王子市にある野球寮を出発した。試合前に行なう打撃練習は通常の流れ。選手一人一人が変わらぬ準備をして公式戦に挑んだ。
だが、この日はいつもと少しだけ違った。朝からグングンと上昇する気温は、試合開始の午前9時前には、すでに30度以上はあった。容赦なく照りつける太陽。体に突き刺さる熱波に体力が奪われる。時間の経過とともに太陽の勢いは一層増して猛暑日に。さいたま県にある岩槻川通公園野球場には、厳しい暑さが広がった。
そんな中、涼しげな表情で淡々とアウトカウントを積み重ねる左腕がいた。実際には、暑さが体力を奪ったに違いない。それでも、集中力を絶やすことなく丁寧なピッチングを見せた。
越智洸貴。1年目の長身左腕だ。都市対抗後のオープン戦で登板機会を増やし、公式戦での先発マウンドを託された。序盤からチェンジアップなどの変化球が冴える。何よりもよかったのは、コーナーギリギリに決まったアウトローのストレートだった。角度がある。伸びがある。JX―ENEOSの各打者が、そのストレートに詰まり、空振りをする場面も何度かあった。
「ストレートの感覚はよかった」
越智本人も納得のピッチングだ。4回裏までに許したヒットは、2回裏二死から浴びた二塁打の一本だけ。4つの三振も奪いながらゼロ行進を続けた。
だが、5回裏。突如としてコントロールが乱れる。「ボール先行の苦しいピッチングになってしまった」と越智が振り返るように、先頭打者にライト前ヒットを浴びた後、6番打者にストレートの四球を出して無死一、二塁とピンチを迎えた。犠打を決められて一死二、三塁。前進守備の遊撃手・根岸晃太郎の左横を抜ける適時打を浴びて先取点を許したのは、その直後だ。さらに9番打者の犠飛で追加点を与え、5回裏のスコアボードに「2」を刻まれた。結局、越智はさらに1点を失った6回裏途中で降板した。しかし、越智が失った3点目は、試合展開を考えればそれほど手痛い1点ではなかった。その直前、攻撃陣が逆転に成功し、すでに試合の主導権は三塁側にあったためだ。
とりわけ、その逆転シーンが強烈だった。6回表、2番宮川和人の四球と3番須田凌平のセンター前でチャンスを築くと、その後一死満塁と攻めて、6番江藤圭樹のライト前ヒットでまずは1点差に迫った。なおも一死満塁。7番赤堀大智は3ボール1ストライクから狙っていた。内角高めのストレート。打球がレフトスタンドへ吸い込まれる。打った瞬間にホームランとわかる一発は、一気に点差を広げる逆転満塁弾。5回表まで散発3安打の無失点に抑えられていた打線が嘘のように、ビッグイニングを築いて先発・越智の好投に応えた。
8回表には、6番赤堀の左中間への2打席連続本塁打で1点を追加。「(ボールを)擦った当たりでしたが、風にうまく乗ってくれた」(赤堀)。攻撃陣の勢い同様に、投手陣も安定したピッチングを見せた。6回裏の途中から登板した松永大介は犠飛での1失点のみ。8回裏は、3番手の浦塚翔太が2三振を奪う中で三者凡退に抑えた。そして9回裏。「最近になっていろいろと試しています」という鈴木直志が、オーバースローとサイドスローを織り交ぜた変幻自在のピッチングで無失点に抑えた。
衰え知らずの猛暑は、試合後も続いていた。
「これから帰って練習です」
勝利の余韻に浸ることなく、選手たちはそう言ってバスに乗り込んだ。
(文・写真:佐々木亨)