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BATTERY

森脇ー喜多

HOMERUN

根岸(8回ソロ)、神野(9回ツーラン)

戦評COMMENT

高揚感がたっぷりと詰まった口調で、試合後の初芝清監督は何度も同じ言葉を繰り返した。

「ビックリです」

その脳裏には、積み重ねた得点シーンが色濃く浮かんでいた。

東京ドームの初戦に流れる緊張感がスイングを鈍らせたのは序盤だけだ。中盤以降の打線には、逞しさしかなかった。先取点を奪ったのは4回表だ。イニングの先頭となった2番砂川哲平が右中間へ二塁打。3番須田凌平の犠打が相手捕手の失策を誘い、無死一、三塁。4番澤良木喬之がセンターへきっちりと犠飛を放って先制点を奪った。

5回表は9番喜多亮太の三塁線を破るタイムリー二塁打、1番本間諒の技ありのタイムリーヒットで2点を追加。6回表には、一死満塁から7番宮川和人がライト前へ運び、なおも満塁で代打の政野寛明がレフトへ犠飛を放って、さらに2点を加えた。

終盤は一発攻勢だ。8回表は、東京都二次予選で15打数1安打と苦しみ、この試合でスタメンから外れた8番根岸晃太郎がバックスクリーンのやや左に飛び込む特大のソロアーチを放って1点。眠れる主砲の豪快弾に一塁側ベンチの熱気は最高潮になった。

そして、9回表は二死一塁から代打で登場したベテラン・神野達哉の一撃である。2ボール2ストライクからファール3つで粘った8球目。神野曰く「抜けたフォークボール」を完璧にとらえた打球が、レフトの頭上を高々と越えていく。自身初の東京ドームでのホームラン。打球を目で追い、ダイヤモンドを回りながら、神野の涙腺は緩んだ。

「いい場面で打てました。努力してきたことが報われました」

先制、中押し、効果的かつ「驚き」でもあった2本のアーチで挙げたダメ押し点。計8点を挙げた攻撃力には、これまでの東京ドームにはなかった破壊力さえ感じた。

「ビックリです」

初芝監督の言葉は、活発な打線と同様に、相手に得点を許さなかった守備力にも向けられた言葉である。

野手陣は無失策。それ以上に、NTT西日本打線を散発4安打に抑え、今大会初の完封劇を演じた森脇亮介の快投が光った。「今日は出る場面がなかった」と言うのは、投手陣を支える一人である田中太一だ。控えの投手たちがそう思うほどの森脇のピッチングは、序盤からエネルギッシュだった。

2三振を奪って三者凡退に抑えた初回が、すべての始まりだった。3回裏には、二死満塁とされるが3番打者を空振り三振に仕留めてピンチを脱した。そこでの決め球となったフォークボールが、この試合におけるピッチングの肝だった。森脇が振り返る。

「都市対抗予選前からフォークボールの精度にこだわって練習をしてきました。高めに浮いてもオッケー。とにかく腕を振ることだけを意識して、この試合でもフォークボールを投げることができました」

奪った三振は12個。その大半で、決め球にフォークボールを使った。「自信を持って腕を振れた」ピッチングは終盤になっても衰えない。序盤に要した球数の多さが気がかりだったが、その心配を打ち消す集中力とタフさがあった。9回裏は先頭打者にライト前ヒットを浴びた。だが、「今日は要所で織り交ぜた」スライダーを軸に6番打者を空振り三振に仕留めて一死。最後はショートゴロでの併殺に討ち取り、森脇の完封勝利は完結した。

初芝監督が森脇のピッチングを語る。

「とにかく『力むなよ』『力まなければ大丈夫』と言い続けた。ストライク先行のピッチングができたことがよかった」

そして、主役の一人となった森脇はこう言うのだ。

「最後までピンチになっても動揺せずに投げられた。試合が終わってから少しは疲れを感じましたが、投げているときはまったく疲れを感じることなく投げられました」

145球の熱投を振り返る右腕の顔には充実感しかなかった。

投打に圧倒した初戦だった。だが、手にした1勝は、部史を塗り替える軌跡の第一歩。

「次の試合も挑戦者のつもりで戦っていきます」

森脇の言葉が頼もしい。

(文:佐々木亨 / 写真:政川慎治・セガサミーホールディングス広報部)