• TEAM T
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • R
  • H
  • E
  • JR四国 J
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 1
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 1
  • 5
  • 1
  • セガサミー
  • 1
  • 0
  • 0
  • 1
  • 2
  • 2
  • 0
  • 1
  • x
  • 7
  • 10
  • 0

BATTERY

氏家、陶久、田中、石垣‐喜多

戦評COMMENT

鬼門の2回戦を落ち着かせたのは、先発左腕の氏家優悟だった。

立ち上がりの先頭打者に対し、最後はスライダーで空振り三振を奪う。後続も難なく抑えて三者凡退に抑えた左腕は、2回表もつけ入る隙を与えずに2三振を含む三者凡退でリズムを築いた。この試合初めての被安打となる一塁線を抜ける二塁打を浴びた3回表も、要所ではスライダーとシュートを効果的に使って得点を許さなかった。序盤だけで奪った三振は6つを数えた。

その好投を生んだ要因の一つは1回裏の攻撃だ。1番本間諒のセンター前ヒットと2番砂川哲平の犠打で得点圏に走者を置くと、3番須田凌平がフルカウントからピッチャーの足もとを抜けていくセンター前ヒットを放って先取点を奪った。須田が語る。

「打った球はストレート。気持ちをこめた。チームとして、とにかく先取点が欲しかった」

電光石火の得点シーンが、氏家の気持ちを落ち着かせたのは言うまでもない。4回裏には5番赤堀大智の三塁線を抜ける二塁打を起点に、6番吉田大成(明治安田生命からの補強選手)のショートへの内野安打で1点を追加。マウンドを守る左腕を援護し続けた。

しかし、5回表。イニングの先頭である右打席に立つ6番打者にライト前ヒットを浴び、犠打とセカンドゴロで二死三塁とされると、9番打者のレフト前ヒットで1点を返された。さらに、氏家は連続四球を与えてピンチを広げた。ボールの精度自体は悪くない。変化球のキレも序盤とさほど変わった様子はない。ただ、コースを丁寧に狙うピッチングが裏目に出てしまった。

「ボール自体は悪くなかったと思います。もっと投げたかった……」

そう振り返る氏家は、塁上に3人の走者を残して無念の降板となった。

一打同点。長打を浴びれば逆転と、一気に情勢が変わる可能性もあった場面でマウンドに向かったのは右腕の陶久亮太だった。

今シーズンの陶久は、同じようなピンチの場面での登板を何度となく経験してきた。それは、チームの信頼の証でもある。東京ドーム初マウンドに「緊張もあった」と陶久は言うのだが、これまでの経験が大きな自信となり、マウンドに立つ姿は落ち着いていた。

「氏家が頑張ってくれていたので、何としてでも点を与えたくなかった」

二死満塁の状況にも動じなかった陶久は、得意のシュートで3番打者のバットをへし折った。セカンドゴロ。ピンチを脱して、試合を再び落ち着かせた。

「投手陣は、初戦で完封した森脇(亮介)から勇気をもらいました。だからこそ、氏家も気持ちのこもったピッチングをしていましたし、僕も同じ気持ちだった」

7回表まで無安打無失点に抑えた陶久の好投の裏には、投手陣全体の思いが詰まっていたのだ。

右腕のピッチングに導かれるように、打線は中盤から得点シーンを何度も築いた。3者連続四球で満塁とした5回裏は、6番北阪真規のライト前ヒットで1点。なおも一死満塁とチャンスが続くなかで、7番宮川和人がきっちりとセンターへ犠飛を放って4点目が入る。6回裏には、一死から1番本間がライト前ヒット。2番砂川が左中間を抜ける三塁打を放って加点。さらに一死一、三塁の場面では、途中出場の根岸晃太郎がレフト前へクリーンヒットを放って6点目が加わった。

8回裏には、途中出場の大野大樹(明治安田生命からの補強選手)のセンターオーバーの三塁打を皮切りに1点を追加した。気づけば二桁安打の7得点だ。1回戦同様の攻撃力がそこにはあった。

8回表を田中太一が、9回表は石垣永悟が、ともに無失点に抑えた投手陣。投打ががっちりとかみ合った戦いぶりに、初芝清監督もチームの成長を感じた。

「厳しい予選を戦ってきたなかで貴重な経験をした。この舞台では、それを自信に換えて、選手たちは思い切りプレーができている」

そして、今夏の東京ドームで手にした2つ目の勝利を噛みしめるかのように、指揮官はこうも言うのだ。

「チームとしての壁を越えた。僕自身もそう、選手たちや会社にとっても、2つ勝てたことは大きい。今日の勝利は通過点ではありますが……やっぱり壁を越えたというのは大きいですよね」

過去9度の東京ドームにあった「2回戦の壁」。創部以来初のベスト8進出を決めたチームは、大きな一歩を踏み出した。10度目の挑戦で壁を乗り越えた今、チームにあるのは自信と勢いだ。迎える準々決勝。都市対抗で初めて見るその景色のなかで、「本物の力」を手にする。

(文:佐々木亨、写真:政川慎治)