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BATTERY

森脇、陶久、氏家ー喜多

HOMERUN

喜多(2回3ラン)、本間(2回ソロ)

戦評COMMENT

まさにエンターテインメントだ!

東京ドームに詰めかけた一塁側スタンドの大応援団を歓喜に包む、色とりどりの速攻劇を見せたのは2回裏だった。

2者連続三振で走者はいない。6番北阪真規の打球も一塁手の守備範囲に転がるボテボテのあたりだった。三者凡退か……。そう誰もが思うなか、JR東海の連係プレーが乱れたのはその直後だった。一塁手からの送球をベースカバーに入った投手が落球。記録は投手の失策となった。

その綻びが、試合展開を大きく変えるのだから野球はわからない。

続く7番大野大樹(明治安田生命からの補強選手)は死球で出塁した。直前の2回表、先頭打者の一塁線を襲う強烈な打球を好捕し、先発の森脇亮介を助けていた今大会初スタメンの右打者がチャンスをつなげた。走者一、二塁となり、打席に8番宮川和人が立つ。初戦のNTT西日本戦でも貴重なタイムリーヒットを打った勝負強さが、この試合でも光る。1ボール1ストライクからの変化球を三遊間へ運ぶ。打球はレフト前に。二塁走者の北阪がホームを陥れて1点を先制した。

なおも、一、二塁。続くチャンスを豪快な一振りで得点に変えたのは、9番喜多亮太だった。1ボールからの2球目。「狙っていた」というストレートをとらえた打球が、東京ドームの天井をめがけて高々と上がった。打った瞬間、「それ」とわかる完璧なあたりだ。

「宮川さんが打ってくれて、僕もつなぐ意識で打席に立ちました。ホームランは出来過ぎ。ただ、打った瞬間、(狭い)ドームなので『いった』と思った」

喜多自身、東京ドーム初アーチである。レフトスタンドの中段に飛び込む豪快な3ラン本塁打で、点差は一気に4点に広がった。

だが、2回裏の“ショー”は続きがあった。喜多の一発の余韻が残るなかで1番本間諒が左打席に立った。インコースへスッと入ってきた124キロのスライダーを、本間は体の軸回転をうまく利用して完璧にとらえた。ライトスタンドに飛び込む2者連続のビッグアーチに、一塁側スタンドは揺れた。本間が振り返る。

「プレッシャーがなく、楽な気持ちで打席に入れました」

ダイヤモンドを回り、ベンチに戻る本間は「スタンドの熱を感じた」とも言う。

序盤に築いたビッグイニングは、チームに希望を与え、大きなアドバンテージとなった。その流れに乗り、先発の森脇は4回表まで無安打ピッチングを続けた。与えた出塁は、2回表と4回表の四球だけ。得点圏に走者を進めない、完璧に近いピッチングで点を与えなかった。初安打となるレフト前ヒットを浴びた5回表、9番打者に「唯一の失投」と振り返る高めのストレートをレフトスタンドへ運ばれて2点を失うが、この試合でも森脇は冷静かつ、安定したピッチングを見せた。気持ちを切り替えてマウンドに上がった6回表は三者凡退に抑えた。

「もしも失点した5回表で降板していたら、気持ちの整理がつかなかったかもしれない。僕にとっては6回表まで投げ、しっかりと三者凡退に抑えられたことが大きかった。そこまで投げさせてくれた初芝(清)監督、吉井(憲治)コーチに感謝したいと思います」

試合中盤を迎えて点差は3点だ。決してセーフティーリードとは言えない。打線も中盤以降は相手投手の継投の前に追加点を奪えない。やや重苦しい空気が流れた。

だが、焦りはなかった。3試合連続で先取点を奪い、常に優位な試合運びができているという自信の表れだろうか。今大会を象徴するピッチャーの絶妙な継投、そこにある投手陣の抜群の安定感も、一塁側ベンチに「勝てる」空気をもたらしている要因の一つだろうか。

7回表からの2イニングスを完璧に抑えた陶久亮太。9回表は、前日の2回戦で先発を担った氏家優悟がマウンドに上がり、二死からヒットを浴びるも最後はサードゴロに仕留めて歓喜の瞬間を迎えた。試合後の選手たちは口々に話す。

「勝ち上がるたびにチームが一つになっているのを実感します。ベンチの雰囲気が、とにかく良い」

「勝利」の二文字しか頭に浮かばない。初のベスト4進出を決めてもなお、彼らの見据えるものは、さらに先にある。残すは「2つの山」だ。頂上の景色は今、はっきりと見えてきた。

(文:佐々木亨、写真:政川慎治・セガサミーホールディングス広報部)