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BATTERY

森井、石垣、井上、横田、陶久-須田

HOMERUN

北阪(2回ソロ)

戦評COMMENT

帽子のツバを握りしめる右手には、悔しさと自責の念が詰まっていた。ベンチ裏に退いた先発の森井絃斗は、溢れる涙を止めることができなかった。

2回途中での降板である。三者凡退に抑えた1回表から一転、2回表は自慢のストレートをことごとく狙われて連打を浴びた。先頭の4番打者には初球をレフト前へ。5番打者には、センター前―ヒットを浴びて無死一、二塁とされた。犠打で一死二、二塁。左打席に立つ7番打者には、内角のストレートをライト前へはじき返され、2人の生還を許した。さらに、8番打者にもレフト前ヒットを浴びて一、二塁。背負うピンチから脱却できないままに、森井はマウンドを降りた。

大会直前のオープン戦では無失点を続けていた。手ごたえを掴む中で迎えたマウンドだった。東京都企業春季大会は、都市対抗予選の組み合わせに直結する大切な試合だ。その初戦の先発。チームの期待と責任を、森井は十分に感じていた。それだけに、不甲斐ないピッチングをした自分が許せなかった。「申し訳なかった……」。その思いが涙となったのだ。

2回表は、森井が残したピンチからさらに1点を追加されて3失点。一塁側ベンチには、序盤から重い空気が流れた。

だが、1本のアーチが空気を変える。先制された直後の2回裏。5番北阪真規が放ったライトフェンスを越えるソロホームランが、チームに勇気と希望を与えた。4回表、今シーズンの好投が光る三番手の井上和紀が内野ゴロの間に1点を失っても、チーム内には「まだまだ行ける」。そんな熱気があった。自信が大きな結果として表れたのが6回裏だ。先頭の1番本間諒がライトフェンス直撃の二塁打。2番砂川哲平の三塁線へのバントが相手野手の失策を誘い、無死一、三塁。その好機で、3番市根井隆成が三遊間を抜けるタイムリーヒットを放って2点差に迫った。なおも4番根岸晃太郎が手堅く犠打を決めて一死二、三塁。5番北阪がレフト前ヒットを放って1点差に詰め寄ると、さらに6番政野寛明のファーストゴロの間に三塁走者の市根井がホームを陥れて4点目。怒涛の攻撃で同点とした。

終盤に1点ずつを取り合った試合は延長戦へ突入したが、その接戦で輝いたのは6回表からマウンドに上がっていた陶久亮太だった。粘り強く投げ抜いた右腕は、イニングを重ねるたびに気迫が漲った。10回表からの3イニングスで許したヒットは、わずかに1本。13回表には先頭打者のライト前ヒットと犠打で一死二塁とされた。後続を三振に仕留めて二死としたが、6番打者にはレフト前ヒット。だが、そのピンチでは左翼手の本間がホームへ好返球。勝ち越しを許さないビックプレーもあり、「野手のみんなに助けられました」と言う陶久は無失点で切り抜けた。

ロングリリーフの右腕の好投に打線が応えたのは13回裏。一死から7番須田凌平がレフト前ヒットで出塁。犠打で走者を得点圏に進めると、打席に9番宮川和人が立った。途中出場の主将は、なかなか状態が上がらないバッティングに「モヤモヤした気持ちがあった」。だが、13回裏の打席では、そんな不安要素を打ち消して集中力を高めた。「インコースのストレートに絞った」。狙い通りに強振したバットから快音が響く。左翼後方に伸びた打球は、試合を決めるサヨナラ打となった。殊勲の一打を放った宮川は言う。

「自分のバッティングよりも、チームとして勝ったことが何よりも大きい」

先制されても諦めずに攻め続けた攻撃陣。好リリーフで流れを引き寄せた陶久のピッチング。そして、最後は主将の意地のサヨナラ打だ。価値ある勝利に、選手たちは喜びを爆発させた。森井が流した涙は、4時間以上の激戦の末に笑い涙となった。

(文・写真:佐々木亨)