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BATTERY

氏家、石垣、陶久ー吉田

戦評COMMENT

「低めの球は捨てる」

フルカウントになった6番政野寛明はそう割り切っていた。

同点で迎えた9回裏だ。3番市根井隆成が、この試合3本目となるヒットを放ち、一死から5番北阪真規が犠打を決めて二死二塁。政野に対する7球目が暴投となり、走者三塁となっていた。左打席に立つ政野は初球、144キロのストレートをファール。2球目の140キロのストレートを空振りし、2ストライクと追い込まれた。3球目の変化球(ボール球)を挟み、ともにストレートの4、5球目はファール。威力あるストレートで押し込んでくる右腕に対し、粘り強くバットを出し続けた。政野のスイングが相手バッテリーにプレッシャーを与える。6球目はボール球に。そして、前述した7球目の暴投につながる。その一球は、相手バッテリーの勝負球だっただろう。2ストライク2ボールから選んだ球種はフォークボール。だが、明らかなボール球となってフルカウントとなり、しかも暴投になったことで、政野は確信した。

「走者三塁になり、相手ピッチャーはフォークボールを投げづらい。フルカウントになって、ストレート一本に絞った。もしもフォークボールを投げられたとしても、低めの球は振らない。そう割り切ることができました」

8球目はストレートだった。政野はファールで凌いだ。そして、9球目。低めに投げ込まれた球はボール球となり四球。しかも、そのワンバウンドした一球を捕手が後逸し、三塁走者の市根井がホームを陥れる。結末は、サヨナラ暴投。低めの球をしっかりと見極めた政野の目と体が、勝利を呼び込んだ。

「最後の一球はフォークボール……? もしかしたら、指先にかかり過ぎてストレートがワンバウンドになったのかもしれない。いずれにしても、低めに来たのでバットが止まった。しっかりと見極めることができました」

終盤までもつれ、苦しみながらも勝利した瞬間を、政野は安堵しながらそう振り返るのだ。

序盤のピンチを脱し、試合の流れは変わった。

2回表、先発の氏家優悟は先頭の5番打者に四球を与え、6番打者には初球をレフト後方へ運ばれた。左翼手・本間諒の頭上を越えていく大飛球だ。ホームランの判定から一転、ワンバウンドでのフェンスオーバーと認定されてエンタイトルツーベースとなったが、無死二、三塁とピンチは拡大した。だが、そこからの氏家が強かった。7番打者をセカンドゴロに仕留めると、8番打者はアウトコースへの渾身の一球で見逃し三振。9番打者はショートゴロに討ち取ってピンチを脱した。先取点を許さなかった氏家の粘投に打線が応えたのは3回裏だ。先頭の9番草海光貴がセンター前ヒットで出塁。1番本間が四球を選び、2番宝楽健吾が手堅く犠打を決めて一死二、三塁とした。3番市根井は1ボール1ストライクからの3球目をレフト後方へ運んだ。2点適時打となるツーベースヒット。理想的な攻撃で先取点を奪った打線は、4回裏に9番草海のピッチャー前へのスクイズ(記録は犠打野選)で1点を追加した。さらに、5回裏は3者連続四球で満塁として、7番吉田高彰がセンター前へ2点適時打。併殺で二死となり嫌な空気が流れる中での得点だっただけに、一塁側ベンチは一層の盛り上がりを見せた。

中盤にかけて打線が本物の「線」となって得点したシーンには力強さがあった。無論、どんな形であろうとも、9回裏に勝ち切ったことも大きな価値はある。だが、勝利の裏に、いくつもの反省材料があったことも事実だ。4点リードで迎えた6回表に失った2点は、イニングの先頭となった2番打者の内野の失策による出塁がきっかけとなった。2点リードの9回表も、一死二、三塁から内野の送球ミスで同点とされた。いくつかのミスが絡んだ失点は、スコア以上に大きなダメージがあった。

得てして、隙や綻びによって勝利を逃すことは多いものだ。ある意味で、この試合を「負けゲーム」ととらえ、反省を力に換えていかなければいけない。

勝って兜の緒を締めよ。

予選リーグ突破に向け、試合後のチームには気を引き締める顔が並んだ。

(文・写真:佐々木亨)