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BATTERY

森井-吉田

戦評COMMENT

21歳の若き右腕が淡々と、それでいて力強くマウンドを支配する。まさに「エース」と呼ぶに相応しい快投であり、力投だ。試合の中心には先発の森井絃斗がいた。

1回裏は一死からのセンター前ヒットを起点に満塁のピンチを迎えた。それでも、森井が動揺することはない。6番打者をきっちりとセカンドゴロに討ち取り無失点で切り抜けた。

「立ち上がりはスピードも出ていて、真っすぐで押し込めている感覚もありましたが、相手打者が真っすぐに絞っている感じがあったので、2回以降はスライダーやカットボールといった変化球を中心に組み立てました。その中でストライク先行で打たせて取るピッチングができたと思います」

その言葉通りに2回以降は緩急をつけたピッチングで無失点を続けた。森井自身が「一番のピッチングだった」と振り返るのは6回裏、右打席に立つ相手4番打者との対決だ。フルカウントからの6球目、森井が選択したのはインコースへのストレートだった。

「フルカウントになって自信のある真っすぐで勝負しようと思った。右打者の内をつくイメージ通りの真っすぐでした。負けたくない。その気持ちをこめたボールでした」

インコースに完璧に制球された145キロのストレートが、捕手・吉田高彰のミットを鳴らす。球審が三振をコールすると、森井は珍しく感情をむき出しにして雄叫びを上げた。

快投の裏には、打線の力強い援護があった。4回表は一死から3番北阪真規のセンター前ヒット、4番根岸晃太郎の死球、5番澤良木喬之のレフト前ヒットで満塁とする。その好機で、6番植田匡哉が魅せた。本人曰く「スライダーかチェンジアップ」の変化球にうまく反応し、打球はセンター前へ。北阪に続き、二塁走者の根岸もホームに還り、まずは2点を先制した。植田が振り返る。

「5番に澤良木さん、7番に政野(寛明)さんと、いいバッターに挟まれているので気楽に打席に入ることができています。4回表の打席も気楽に思い切ってバットを振ることができました」

5回表に相手外野手の失策絡みで2点を加えたチームは、8回表には二死一、二塁と再び追加点の好機を掴む。そこで魅せたのは、7回表の前打席で二塁打を放っていた9番砂川哲平。初球の変化球をとらえた打球は、右翼手の頭上を越えた。二塁走者の植田をホームに迎え入れるタイムリー二塁打。なおも二死二、三塁と好機が続く中で、左中間を深々と抜ける2点タイムリー三塁打を放ったのは1番中川智裕だ。8回表の3得点は試合を落ち着かせるとともに、森井の心にも大きな余裕をもたらした。

7点リードで迎えた9回裏のマウンド。森井の躍動感は変わらない。簡単に二死を奪うと、7番打者も変化球2球で簡単に追い込んだ。最後に選択したのは、自信のあるストレート。142キロのストレートに相手打者のバットが空を切ると、森井はマウンド上でわずかに笑った。二次予選を含めて都市対抗での初勝利を、社会人では自身初となる完封で飾った。森井は言う。

「カーブやフォークも含め、すべての変化球でしっかりとカウントを整えられたのがよかった。勝ったことは素直に嬉しいです。ただ、まだ(本大会の)代表権を獲ったわけではないので、次の試合もしっかりと投げられるように頑張りたい」

今予選では、いまだ点を奪われていない。初戦のJR東日本戦を含めて15イニング無失点と驚異の安定感を誇る。そんな森井に対して、西田真二監督も「ピッチングに緩急、強弱をつけてうまく投げている」と目を細める。若きエースの躍動と打線の好調さが際立った一戦。試合後の佐藤俊和ヘッドコーチは言った。

「やれることはすべてやって挑んだ試合。森井がよく投げ、植田もよく打ち、選手たちがよく戦ってくれたと思います」

投打に充実感が漂う今、チームは『勢い』というプラスの材料も加えながら成熟の時を迎えようとしている。

 

文:佐々木 亨

写真:政川 慎治