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BATTERY

草海、陶久ー須田

戦評COMMENT

感情を露わに、闘志をむき出しに、マウンド上で声を張り上げる草海光貴の姿があった。普段はクールで物静かな印象だ。だが、この日だけは違った。代表決定戦での先発マウンド。気持ちの昂りが体全体から伝わってくるようだった。

「打者一人一人という意識で投げた」

そう語り、常に集中力を高めて挑んだ草海は、序盤からアクセルを踏み込んで鷺宮製作所打線に立ち向かった。1回表は先頭打者のセンター前ヒットを皮切りに得点圏に走者を背負うも、3番打者を見逃し三振、4番打者を最後は144キロのストレートで空振り三振に仕留めてピンチを脱した。2回表は5番打者を空振り三振に、6番打者を見逃し三振に仕留め、イニングを跨いでの4者連続三振をマークする。先発マスクの須田凌平が振り返る。

「(草海は)丁寧に投げていましたね。各イニングの先頭打者だけは集中して抑えることを意識しながら」

その言葉通りに2回表からの4イニングスは、いずれも先頭打者を討ち取るイメージ通りのピッチングを続けた。だが、6回表は初回以来となる先頭打者の出塁を許す。しかも、ライト線への長打だ。犠打で一死三塁と、この試合最大のピンチを迎える。それでも、草海が動揺することはない。むしろ、ピンチを迎えて一段も二段もピッチングのギアを上げるようだった。3番打者を空振り三振に仕留めると、1ボール2ストライクからの4球目、キレのあるチェンジアップで4番打者から空振り三振を奪いピンチを脱した。

「ヨッシャァァァ!」

バックネット裏のスタンドまで確かに聞こえてくる魂の叫びだ。代表権獲得への思いが、相手チームを呑み込んだ瞬間でもあった。

草海の情熱的なピッチングに攻撃陣が応えたのは、その直後だった。両チーム無得点で迎えた6回裏、一死から3番北阪真規が死球で出塁する。そして、4番根岸晃太郎は初球を狙っていた。アウトコースの球に反応したバットは、打球を右中間へ運ぶ。チャンスを拡大させる大きな二塁打だ。二塁ベース上での根岸は、両手を雨空に突き上げて喜びを爆発させた。三塁側ベンチの熱気が高まる。流れは最高だ。グラウンドに漂うその空気感を、自らのエネルギーに換えたのは5番澤良木喬之だった。場面は一死二、三塁。

「初回のチャンスを潰していた(二死一、三塁でファーストゴロに倒れた)ので、何としてでも打ちたかった。何とか外野にフライを上げれば犠牲フライになるだろう、と。低めのボールには手を出さずに、浮いた球だけを狙っていた」

言葉通りに、澤良木は3球目の高めのストレートを強振して、右翼手後方に飛球を放った。犠牲フライには十分のアタリだ。三塁走者の北阪が悠々とホームへ還り、待望の1点が刻まれた。なおも二死三塁とチャンスが続く中で、6番植田匡哉が初球をライト前へ運んで2点目。貴重な追加点が入り、勝利への道筋が薄っすらと見えた。

道筋に確かな色合いを加えていったのは、7回9奪三振無失点の草海であり、マウンドを譲り受けた陶久亮太だった。8回表を三者凡退に抑えた陶久は、9回表も4番打者を空振り三振に、5番打者をレフトフライに討ち取り、勝利まで「1アウト」と迫った。続く代打の6番打者に二塁打を浴びるも、勝利へのカウントダウンが止まることはなかった。7番打者の打球がセカンド後方に上がる。二塁手の北阪が半身になりながらその飛球を捕ると、陶久が立つマウンドで歓喜の輪ができた。

最優秀選手賞に選出された草海、優秀選手賞に選出された澤良木らを中心として、チームは第3代表を勝ち取った。初戦で敗れ、第2代表ゾーンに回った。そのトーナメントでは好調を維持して3連勝を手にしたが、第2代表決定戦では敗れた。決して簡単な道のりではなかった。ヘッドコーチの佐藤俊和は言う。

「予選を通じては良いことも悪いこともある。苦しかったのは確かです。それでも、主将の怪我もありながらチームみんなでカバーし合って代表権を獲得できたと思います」

初戦で肉離れを再発し、2試合目以降は一塁ベースコーチを務めた主将の宮川和人はこう言うのだ。

「昨年の二次予選の悔しさを持ってやってきた中で、どう勝つかを常に考えてやってきました。勝てば報われる。勝てたことが何よりも嬉しいです。コロナ禍で大変な時期ですが、僕らは野球をやらせてもらっています。そういう環境を作ってくださる関係者、そして会社の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。東京ドームでも、感謝の気持ちを持って戦いたいと思います」

2年ぶり11回目となる本大会出場である。舞台が東京ドームに変わっても、彼らの熱いプレーは変わらない。

 

文:佐々木 亨

写真:政川慎治