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BATTERY

草海-須田

HOMERUN

澤良木(1回2ラン)

戦評COMMENT

初回の攻防が、すべてだった。

1回表は1番根岸晃太郎が空振り三振、2番北川智也がセカンドファウルフライ。早々に二死となった。それでも、3番中川智裕がストレートの四球を選んで出塁する。二死一塁となり、打席に向かったのは4番澤良木喬之だ。一回戦で特大アーチを放っている左の主砲は、初球から狙いを定めていた。

「前の打者(中川)が四球だったので、初球からストライクを取りに来ると思っていた。外角を攻められると思ったんですが、真ん中にストレートが入ってきた。甘い球を一球で仕留められてよかった」

139キロの初球を豪快なスイングでとらえた打球が、右中間スタンドへ一直線に伸びる。主導権を手繰り寄せる先制の2ラン本塁打は、三塁側ベンチに大きな勇気を与えた。

直後の1回裏、マウンドには草海光貴の姿があった。右腕の調子のバロメーターは、立ち上がりのピッチングにある。日本選手権の関東代表決定戦(明治安田生命戦)では初回に4失点したように、今シーズンの草海にとって「立ち上がり」は鬼門だった。逆に、初回さえしっかりと抑えれば、その後のピッチングは抜群の安定感を誇る。それだけに、日本新薬戦の初回のピッチングが勝敗を大きく左右すると言っても過言ではなかった。先頭打者をセカンドゴロに討ち取った草海は、続く2番打者をわずか3球でファーストゴロに仕留める。そして、3番打者はセンターフライだ。計12球で三者凡退。先発右腕の最高の滑り出しに、三塁側ベンチには確信めいた空気が流れたはずだ。

「いける」

そんな空気感が漂う中で、2回以降の草海は根気強く投げ続けた。2回裏は先頭の4番打者に左中間を破る二塁打を浴びるも、後続を討ち取りピンチをしのぐ。三者凡退の3回裏を経て、4回裏には二死から5番打者の左中間への二塁打、6番打者のライト前ヒットで走者一、三塁と攻め立てられた。それでも、草海は動揺しない。むしろ、ピッチングのギアを一段階上げて、7番打者を見逃し三振に仕留めて再びピンチを脱した。右中間への二塁打と四球で二死一、二塁とされた6回裏も、代打の7番打者から最後は渾身のストレートで見逃し三振を奪い、スコアボードに6個目の「ゼロ」を並べた。終盤を迎えて「疲れはだいぶあった」という草海だが、その言葉とは裏腹に7回裏からの2イニングスは危なげないピッチングで三者凡退に抑える。8回裏には二塁手・北川のファインプレーも飛び出すなど、草海のテンポの良いピッチングは守備全体にも良いリズムを生み出した。

攻撃陣が初回に奪った2点を我慢強く守り抜く右腕は、9回裏のマウンドにも立った。先頭打者に四球を与えるも、6番打者をショートフライ、7番打者をサードゴロに討ち取って二死。そして、8番打者をストライク先行のピッチングで追い詰める中でショートゴロに仕留めて完結。立ち上がりからフル回転の草海は、最後までマウンドを譲ることはなかった。

「今日は真っすぐがよかった。気持ちで負けないことだけを考え、強い気持ちを持って投げました」

草海が5安打無失点のマウンドをそう振り返れば、西田真二監督は試合をこう総括する。

「初回に澤良木が一発で決めてくれたのは大きい。そして、草海がランナーを出しながらも最後まで粘って投げてくれた。100点のピッチング。草海と須田(凌平)のバッテリーの勝利ですね」

立ち上がりを制した右腕エースの129球の完封劇。チームは準々決勝に名乗りを上げた。

 

文:佐々木 亨

写真:政川 慎治