• TEAM T
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • R
  • H
  • E
  • セガサミー
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 1
  • 1
  • 8
  • 2
  • 大津町・ホンダ熊本
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 1
  • 0
  • 0
  • 0
  • 2
  • 4
  • 2

BATTERY

草海、陶久-須田

HOMERUN

中川(9回ソロ)

戦評COMMENT

ヒットが生まれ、塁上を賑わせ、何度も何度もチャンスは訪れた。

1回表は一死から2番北川智也がライト前ヒットを放つ。準々決勝までの3試合はノーヒット。打順は2回戦から9番となり、準決勝で再び2番に戻った。145キロのストレートをはじき返したチーム初安打は、北川の意地であり、「チームの勝利に貢献したい」という強い思いの表れだった。さらに、果敢に盗塁を決め、捕手の悪送球の間に三塁へ進んだ。立ち上がりに訪れた先制のチャンス。だが、スタメンに抜擢された3番平田巧がスライダーに苦しみ、空振り三振。4番根岸晃太郎はセンターフライに討ち取られて無得点に終わった。

2回表は、イニングの先頭となった5番市根井隆成が100キロ台のスローカーブをレフト前へ運んで無死一塁。後続が討ち取られて走者が入れ替わる中、二死一塁から三遊間を抜けるヒットを放ったのは8番須田凌平だ。得点圏に走者を進めて再びチャンスを掴んだが、9番砂川哲平がファーストゴロに倒れて得点には至らなかった。

一死から2番北川が自身2安打目となるセンター前ヒットを放った3回表を経て、4回表には森龍馬(明治安田生命からの補強選手)がショートへの内野安打で出塁する。相手バッテリーのミスが続いて三塁まで進んだが、そこでも得点することができない。Honda熊本の先発・片山雄貴投手はスライダーとフォークボールを中心に気持ちで投げる右腕だ。毎イニングでヒットを浴びせ、得点圏に走者を進めるのだが、そのピッチングの前に「あと1本」が出なかった。「先攻だっただけに、何とかヒットが出ている序盤のうちに(相手投手を)つかまえたかった」とは西田真二監督だ。

すると、5回裏に1点を先制されて追いかける展開に。6回表からの3イニングスはノーヒット。走者が出たのは相手投手の失策があった7回表だけだ。一塁側ベンチに、徐々に焦りが広がっていったか。それでも、9回表。二死走者なしから、7番中川智裕がチームを救う。初球を豪快に振り抜いた打球は、レフトスタンドへ一直線。起死回生の同点弾だ。やっとの思いで扉をこじ開けると、一塁側ベンチは熱気に包まれた。なおも、8番須田がライト前ヒットを放ち、9番砂川が四球を選んで二死一、二塁。その勝ち越しのチャンスは得点に結びつけることはできなかったが、その時点で流れは一塁側ベンチにあったか。しかし……。

直後の9回裏。このイニングから登板した陶久亮太が、相手の4番打者にバックスクリーンへ飛び込むサヨナラホームランを浴びて、チームの戦いは終わった。

昨年に続き、初の決勝進出を逃した。勢いとチーム力を考えれば、十分に決勝の舞台に立てたはずだ。それだけに、悔しさは残る。ただ、得るものは大きかった。一、二回戦で先発として2勝をマークし、準決勝のマウンドにも立った草海光貴のピッチングは光った。難しい立ち上がりを凌いで徐々にリズムに乗った右腕は、カーブを効果的に使って準決勝も8回まで被安打3。セカンドゴロの間に失った5回裏の1点だけが悔やまれるが、まさにエースの投球を見せた。「悔しいの一言です」と自身のマウンドを振り返るのだが、大黒柱としての躍動は今大会で際立った。準々決勝までの3試合で計25得点と活発だった攻撃陣にも、これまでにないチームとしての成長を感じたものだ。そして、準決勝での中川の一発だ。敗戦まで「あと一人」と追い込まれる中で飛び出した執念のホームランは、チームとしての粘りでもあった。思えば、東京都二次予選の第三代表決定戦。5時間を超える延長18回の死闘を競り勝った試合でも、驚異的な粘りを見せた。

チームは強くなっている――。黒獅子旗は、もう目の前だ。来年こそは準決勝の壁を乗り越え、頂点に立てる。そう予感させる第92回都市対抗野球大会だった。

文:佐々木 亨

写真:政川 慎治