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BATTERY

草海- 須田

戦評COMMENT

先発マウンドに立った草海光貴は、立ち上がりから気持ちを押し出した。1回表、先頭打者を144キロのストレートでレフトフライに討ち取る。2番打者は、2ボール2ストライクから声を張り上げながら投じた144キロのストレートでセンターフライに。3番打者に対しても集中力は途切れず、巧みな変化球でショートゴロに仕留めた。試合開始から、わずか3分で終えた1回表のマウンドが、草海の試合にかける思いと状態の良さをよく表していた。序盤3イニングスは、いずれも三者凡退。中盤になっても勢いは衰えず、5回表までノーヒットピッチング。許した走者は、四球の一人だけだ。ほぼ完璧なマウンドだった。

草海を援護したい打線は、立ち上がりからチャンスを築いた。いや、チャンスを「もらった」という表現のほうが良いだろうか。1回裏は、先頭の1番黒川貴章が死球で出塁。二死となるが、4番根岸晃太郎も死球で一、二塁とした。だが、5番中川智裕が空振り三振。チャンスを生かし切れなかった。2回裏も二死から8番政野寛明が起点となるのだが、それもまた相手から「もらった」四球での出塁。盗塁が決まって得点圏に走者を進めるも、9番西村僚太が空振り三振に倒れて、やはり得点には至らなかった。1番黒川のチーム初ヒットとなるセンター前ヒットが飛び出した3回裏も、一塁での牽制アウトなど、攻撃にリズムが生まれない。4回裏と5回裏はともに三者凡退。快音が響くことはなかった。

すると、6回表だ。草海が、わずかな綻びを攻められる。イニングの先頭となった8番打者にライト後方への二塁打を浴びた。犠打で一死三塁。この試合初めてのピンチだ。1番打者に対しては、ボール球が先行した。2ボールからの3球目。133キロの変化球をライトへ運ばれて犠飛での1点を失った。

草海のピッチングを無駄にはできない。打線が息を吹き返して反撃に転じたのは、失点直後の6回裏だ。イニングの先頭である1番黒川がライト線への二塁打を放つ。2番北川智也の犠打は相手捕手の野選を誘い、チャンスは無死一、三塁と拡大した。

「同点だ! 一気に逆転だ!」

応援を続ける三塁側スタンドから、そんな声が聞こえてくるようだ。訪れたビッグチャンス。しかし、3番植田匡哉がショートフライ。4番根岸は空振り三振に倒れ、5番中川さえもショートゴロに討ち取られる。一死から7番須田凌平がレフト前ヒット、8番政野が一塁手の失策で出塁して一、二塁とチャンスを築いた7回裏も、後続のバットから快音は響かずに無得点。「あと1本」が生まれなかった。西田真二監督の言葉だ。

「無死一、三塁としながら点を取れなかった6回裏ですね。クリーンナップに『あと1本』が出なかったのは痛かった。草海が点を取られた直後だっただけに……」

打線の援護がない中で、草海は投げ続けた。二死一、三塁とピンチを迎えた7回表。二死からセンター前ヒットを浴びた8回表。そして、2四死球でピンチとなった9回表も、マウンドに立ち続けた。投じた球は、116球。打たれたヒットは、わずかに3本。試合中盤の1失点が悔やまれるが、最後まで投げ続けた姿はエースそのものだった。試合後の草海は、沈んだ表情を浮かべつつ、はっきりとした口調でこう言った。

「明日は、投手陣みんなで投げて勝ちます」

その言葉通り、第四代表決定戦は総力戦となる。チームが一つとなった時、そこには必ず笑顔が待っているはずだ。

文:佐々木 亨

写真:政川 慎治