戦評・コラム
第51回社会人野球日本選手権関東代表決定戦 関東代表決定戦 vs 日産自動車
2026.10.06 [Tue] 10:00VS 日産自動車
場所:等々力球場
最後の全国大会出場はならず セガサミー野球部21年間の歴史に幕を下ろす
歴史を紡いできたユニフォームを身にまとう選手が、その背中を後押しする一塁側スタンドが、誰一人として諦めていなかった。3点を追う9回表だ。四番に座る谷口嘉紀が中前安打を放ち、さらに高本康平が右前安打で続き、その熱量は高まった。無死一、三塁で中川智裕が打席に立つ。勝利への想い、「終わらせない」という執念を乗せた打球が右前へ抜け、三塁走者の谷口が4点目のホームを踏むと球場の空気は変わった。スタンドには多くの笑顔が広がった。
どれだけ劣勢に立たされても、選手たちは笑顔を絶やさなかった。悲壮感はない。ただその瞬間を「楽しもう」。試合前の円陣で、主将の北川智也がチームメイトに語りかけたその言葉を体現するだけだった。先発マウンドを担った樫村佳歩が序盤3イニングで4失点。
「序盤の4点は取り返すチャンスがあると思っていた」
佐藤俊和監督の言葉通り、試合中盤になると球場の空気が変わった。日産自動車の打線に対して、続投する樫村が4回裏を三者凡退に抑えると、5回表に反撃の一発が生まれる。中川の左越え本塁打で3点差。さらに5回裏を樫村が、6回裏を代わった尾﨑完太が無失点に抑えると、再び反撃の機会が訪れる。
7回表。宮浦柚基と加藤巧也が倒れて2死となるが、谷口のセカンドへの内野安打でチャンスが生まれる。続く高本が右翼線へ二塁打を放ち、2死二、三塁。その好機で、前の打席でソロ本塁打を放っていた中川が、左中間へ二塁打を放ち、谷口に続いて高本もホームを陥れる。なおも得点圏に走者を置きながら、代打の立花祥希が三直に倒れて同点機を逃したが、試合終盤を迎えて1点差に詰め寄る執念の攻撃に一塁側スタンドのボルテージはグッと高まった。
「自分が最後まで投げ切るつもりでした」
その思いを胸にマウンドに立ち続けた尾﨑が直後の7回裏に1失点。さらに8回裏。1死二塁から、代わった陶久亮太がバッテリーミスと左前安打で1点を失って点差は広がった。それでも、誰一人として諦めない。9回表の反撃に繋がった。
この試合だけで4打点目となる右前適時打を放った中川を得点圏に進め、セガサミーの攻撃は続く。仲間を信じ、勝利を信じて、最後まで「楽しむ」ことを忘れずに笑顔を絶やさない選手たちが、そこにはいる。歴史を振り返ってみれば、どの時代でもセガサミー野球部には笑顔とともに不思議な力が宿っていた。「負けられない」試合での猛攻や快投。試合終盤に逆転満塁弾で勝利した試合もあった。受け継がれてきた勝負強さは、決して失ってはいなかったはずだ。1死二、三塁とチャンスは続き、その力を信じて疑わなかった。
だが、廣岡隆成がサードゴロに討ち取られ、最後は片岡大和がファーストゴロに倒れて、試合は終わった。第51回社会人野球日本選手権大会の関東代表決定戦での敗戦が決まった瞬間だった。
「いつかこの日が来ることはわかって過ごして来たんですが……受け入れ難かった」
セガサミー野球部としての戦いが終わった瞬間をそう振り返った佐藤監督が言葉を振り絞る。
「野球部創部から21年目の年に私が監督をやらせてもらい、その年に廃部、そして今日、その歴史を終わらせてしまったことは本当に辛い。ただ、選手たちはよくやってくれたと思います。勝ちをつけられなかったのは監督の責任です。都市対抗を含めた二大大会で本戦に出場できず、廃部の年に悔しい思いをして、応援してくださった方々に悲しい思いをさせてしまいました。ルーターズを含めた応援団、セガサミーを応援してくださったすべての方々に申し訳ない気持ちです。同時に『ありがとうございました』という思いでいっぱいです」
主将の北川は「選手全員が最後まで諦めることはなかった」と語り、言葉を加える。
「これまでいろんな方が繋いでくれたチーム。ここで終わらせるわけにはいかないと思って試合に臨みましたが、序盤に相手投手を先に打ち崩せなかったことが、後半のきつい展開になってしまったと思います。最後は日本選手権の本戦に出て終わりたかったのですが、予選で負けて悔しいです」
多くのファンや野球部OBにも見守られて、21年間の歴史が終わった。都市対抗では14回の出場を誇り、ベスト4に3度(18年、20年、21年)。日本選手権には6回出場して、14年に準優勝。多くのプロ野球選手も輩出して、時代を彩ったチームだった。
セガサミー野球部は人々に愛され、そして、強かった。
最後に、その言葉だけは残しておきたい。
文・写真:佐々木 亨