コラム
セガサミー野球部新監督 佐藤俊和―選手の“人間力”向上で目指す土台作り―
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2026年2月24日
2025年、創部20年の節目を迎えた社会人野球チーム『セガサミー野球部』。6年間にわたり監督を務め、都市対抗野球大会ではチームを2年連続ベスト4に導いた西田真二(にしだ・しんじ)さん(元広島東洋カープ)が退任。助監督であった佐藤俊和(さとう・としかず)さんが2026年1月より新監督に就任しました。今回は、セガサミー野球部6代目監督を務めることとなった指揮官へ、指導スタンスや初陣への思いなどを伺いました。
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佐藤俊和(さとう・としかず)
ミキハウス硬式野球部で社会人選手としてのキャリアをスタート後、セガサミー野球部へ移籍。2006シーズンはチームの初代キャプテンを務めた。2011年からはコーチに就任。その後ヘッドコーチ兼打撃コーチ、助監督などを経て、2026年より監督に就任。
野球部の“初代キャプテン”としての経験、糧に
2月初頭、東京都八王子市にあるセガサミー野球部の活動拠点『セガサミー野球場』周辺は、所々に霜が降り、冬の風景が広がっていました。そんな冬のグラウンドで“熱い”指導をする人物が、新たにセガサミー野球部監督に就任された、佐藤俊和(さとう・としかず)さんです。
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佐藤監督
選手たちは朝から毎回ウォーミングアップやキャッチボールを行いますが、その中のメニューの1つが“ペッパー”です。野手が何人かでチームを組んで、軽めの投球、バッティング、そしてボールの捕球がセットになった練習です。こういった基本的な動作をただのルーティンとするのではなく、意識を高く保ち体を動かすことが技術向上に繋がると私は思っていますし、選手たちには“当たり前のことの積み上げ”が大切だと、普段からよく言うようにしていますね。技術向上はもちろんですが、専用球場で自由に野球ができることへの感謝や、挨拶をはじめとした礼節を大切にすることなど、人としての基本を含めた選手たちの“人間的な成長”が、チームの土台になっていくものだと考えています。
『意識』『感謝』『挨拶』―。チームの土台作りに必要な要素は、日々の“当たり前”を積み重ねる力だと語る佐藤さん。元々は関西を拠点に活動する社会人野球チーム『ミキハウス硬式野球部』でキャプテンを務め、同野球部の廃部により(※現在は活動再開)セガサミーへ移籍。2006年のチーム立ち上げ当初、初代キャプテンに抜擢されたご経歴を持っています。
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佐藤監督
セガサミーに移籍した時、自己紹介で一人ずつ喋る機会があり、「チームは家族です」という話をしたんです。野球のホームベースは、家の形をしていますよね。例えばですが、1番バッターが長男だとして、2番バッターの母親がバントで2塁へ送る。3番バッターの次男がセカンドゴロで進塁させて、4番バッターの父親が長男をホームへ返す。家に戻ってくることが家族の幸せだと思うので、チームは家族。だから助け合ってチームを強くしていこうと話をしました。これはミキハウス時代に学ばせてもらった姿勢でもあります。すると、初代監督だった青島健太(あおしま・けんた)さん(元東京ヤクルトスワローズ)が、「佐藤、キャプテンはお前だ」と仰って、引き受けることになりました。
キャプテンを務めた創部1年目。野球部員の経験や年齢もばらばらで、練習環境も今と比べると整っているとは言い難い時期でした。しかし、そんな当時の経験を今でも自分の指導スタイルの軸にしていると、佐藤さんは語ります。
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佐藤監督
とにかく“考える”こと、そして“1分の重み”を勉強させてもらった創部1年目でした。セガサミー野球部立ち上げ当初は千葉県が拠点だったのですが、6畳の部屋に選手2人ずつで住んでいたんです。ボールや用具も部屋に入れなければならなかったので、キッチンなどは常に砂だらけでしたね(笑)。専用グラウンドもなく、各所のグラウンドを予約して使用しないといけません。グラウンドも使用時間が決まっていますので、休憩は最小限に留め、1分たりとも無駄にしない意識、まさに“1分の重み” を感じながらいつも練習に励んでいました。グラウンド付近のコンビニに許可を取ってチームバスを駐車させてもらい、練習後はそのお店でお礼を兼ねて買い物をしたこともいい思い出です。アパートに帰ってからも、練習時間の不足を補うために街灯の下で素振りをして、高校球児のような日々を送っていました。限られた環境や時間で、どうやって強くなれるのか、考え続けていました。
ウォーミングアップから練習一つ一つを無駄にしないという佐藤さんの考え方は、この時の経験が生かされているといいます。
はじめから「無理だ」と思っていないか
佐藤さんが影響を受けた人物がいます。それが、ミキハウス硬式野球部の先輩であり、共にセガサミー野球部へ移籍してきた黒川洋行(くろかわ・ひろゆき)さんです。黒川さんは、ミキハウス硬式野球部で5年に渡ってキャプテンを務め、佐藤さんに引き継いだ人物でもあります。
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佐藤監督
黒川さんはセガサミー野球部入部後コーチに就任されたので、いつもアドバイスをもらっていました。
私は入部した時点で他の選手よりだいぶ年上だったので、若手には体力で勝てません。他にも様々な面で「無理だな」と弱気になってしまう自分がいました。そんな時、黒川さんから「佐藤、はじめから無理だと思っていないか?その時点で、大丈夫なものも無理になる。自分の可能性を絶対に消すな」と、叱っていただきました。その時、自分の心の中に改めて火が付いた感覚があったんです。2006年の冬の出来事ですが、今でも鮮明に覚えています。
冬の厳しいトレーニングにも、より熱が入っていった佐藤さん。結果、セガサミー野球部は創部2年目にして、初の都市対抗野球大会本戦出場を果たします。
都市対抗野球大会で打席に立つ佐藤さん
黒川さんから厳しく伝えられた、“心の置き方”。無理だと思った時点で、無理になる。可能性を閉じるのは、実力よりも、自分自身の心――。その一言が、佐藤さんの中で長く残り、指導者としての今の姿勢にもつながっているのです。
佐藤さんに影響を与えた黒川さん。セガサミーで8年にわたりコーチを務めたのち、社会人野球チームでの監督を経験。現在は野球教室やバッティングセンター経営などを通し、野球に携わっています。
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黒川さん
立ち上がったばかりのセガサミー野球部で一生懸命日々を過ごしていたことは、いい思い出として残っています。寝る時間も惜しんで、練習や他チームのデータ分析に明け暮れていました。新監督の佐藤は優しい性格で周りを引っ張るのが得意ですが、監督としていかに選手たちへ厳しいことも言えるかが、指導者として大切になってくるのではと思います。選手たちは素晴らしい環境でプレーできていると思うので、しっかり準備して都市対抗野球本戦出場を果たしてもらえたらと思います。
黒川さんには、3人のご子息がいらっしゃいます。黒川さんと同じくミキハウス硬式野球部でプレーした、長男の大雅(たいが)さん。東北楽天ゴールデンイーグルスで現役の内野手を務めている、次男の史陽(ふみや)さん。そして、今年新社会人になる、三男の怜遠(れおん)さんです。怜遠さんは、佐藤さんと黒川さんがともに過ごした、セガサミー野球部に入部します。
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黒川怜遠選手
物心ついた時から、たまに父を訪ねてくる佐藤さんにもよく話しかけてもらっていました。二人がともに過ごしたセガサミー野球部に入れることになり、とても嬉しいです。セガサミーは都市対抗野球大会にしばらく出られていないので、自分の持ち味である勝負強さを発揮するとともに、大きな声でも仲間を鼓舞して、チームに貢献したいと思います。
出身の日本体育大学硬式野球部では、通常4年生が任されるキャプテンを3年次から任され、キャプテンシーが高く評価されている黒川怜遠選手。セガサミー野球部を引っ張る存在への成長を期待しています。
トレーニングに励む黒川怜遠選手
3月『JABA東京スポニチ大会』で初陣へ
新体制の試金石となるのが、春の到来を告げる『JABA東京スポニチ大会』です。2026年は3月7日に開幕、11日までの5日間にわたり、神宮球場を主会場に熱戦が繰り広げられる予定です。今季の勢力図を占う重要な位置づけでもある大会は、佐藤さんにとって、まさに“初陣”となる舞台となります。
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佐藤監督
6代目の監督として新たなシーズンに挑むわけですが、過去の指揮官の皆さんから学んだことは大きいです。細かな野球から、コミュニケーションで選手の心を動かす野球、そして、大胆な野球。正解は一つではないと思います。今、チームとして都市対抗野球大会に2年間、日本選手権大会は3年間出場できておらず、崖っぷちだと考えていますし、選手たちからも危機感をひしひしと感じています。社会人野球チームとして、“勝つ”という結果を出すことがすべてです。セガサミー野球部で学んできた様々な戦術、そして“当たり前の積み上げ”で土台を大きくし、勝利を目指します。新人を含めて投手陣もいい仕上がりになってきていますし、試合では堅実な攻め、そしてバッテリーを中心とした『守り勝つ野球』で勝負したいと考えています。そのために必要な体づくりは、セガサミー野球部出身で元横浜DeNAベイスターズの赤堀大智(あかほり・だいち)の繋がりで知り合ったトレーナーの方に今季から指導いただいており、セガサミー野球部の縁に支えられています。試合に入れば、どうしても打撃や投球に目が向きますが、試合は、やってきた過程の発表の場だと思います。勝負の瞬間に頼れるのは、日々の準備でしかありません。
創部21年目。“当たり前”を積み上げ守り勝つ野球で結果を取りにいくと決意を語ってくれた佐藤さん。“人間力”を土台とした新しいセガサミー野球部の、大舞台を目指すシーズンが、間もなく幕を開けます。
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