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世界を駆ける青いハリネズミ――「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」進化と挑戦の歴史

「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」――セガを代表する超音速の青いハリネズミは、1991年の誕生以来、ゲームをはじめ映画やグッズなど多彩なメディアで世界中のファンを魅了してきました。
今年で35周年を迎え、そのスピードとクールなキャラクター性で、今なお新たな挑戦を続けています。
本記事では、「ソニック」の進化と現在地を振り返るとともに、後半ではその誕生と歩み、そして未来への展望について、セガで長年「ソニック」に携わってきた担当者にお話を伺いました。

世界を駆ける青いハリネズミ――「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」進化と挑戦の歴史

超音速の青いハリネズミ、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」

青いボディにツンツンした頭、スラリとした手足に赤い大きなシューズ。株式会社セガ(以下、セガ)を代表するキャラクター「ソニック・ザ・ヘッジホッグ(以下、「ソニック」)」です。普段はお調子もので飄々としているけれども、困っている人は誰でも助けてしまう、そんな「ソニック」の魅力が、これまで国内外を問わずたくさんのファンを惹きつけてきました。

「ソニック」シリーズの全世界ゲーム累計数は17.7億本/ダウンロード(※フルゲーム・F2P合計)を超えており、近年ではゲーム以外にもそのすそ野を広げています。2020年より公開されたハリウッド映画第1作では全米におけるゲーム原作史上最高の興行収入を記録し、続く第2作ではその記録をさらに更新、2024年に公開された最新作『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』の全世界興行収入は4.9億ドルを突破、映画シリーズ3作品の全世界興行収入合計は10億ドルを達成しました。現在は映画にとどまらず、アニメやグッズにも展開するなど、ゲームにとどまらない広範な人気を誇る「超音速の青いハリネズミ」――そんな「ソニック」が、今年で誕生から35周年を迎えます。

「ソニック」35周年キービジュアル

「ソニック」の誕生と歩み

1991年、当時セガが手がけていた家庭用ゲーム機「メガドライブ」用のタイトルとして『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』は誕生しました。高い描画速度を実現する「メガドライブ」の特長をいかした「ハイスピードアクション」がプレイに爽快感を生み、世界的な大ヒットを記録したことで、「ソニック」は瞬く間に世界の人気者となります。

「メガドライブ」
初代『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』パッケージ

続編の『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』で相棒の「テイルス」が仲間に加わったことを皮切りに、その後もさまざまなキャラクターが登場してきました。また、原点であるアクションゲームをはじめ、レースゲームや対戦格闘ゲーム、パーティーゲームなど幅広いジャンルで活躍し続けてきた「ソニック」。2008年には英国紙『The Daily Telegraph』が行った「最も好きなゲームキャラクター」のアンケートでナンバーワンに輝き、2016年には米国立博物館『The Strong』が発表した世界ビデオゲームの殿堂入りを果たすなど、世界のゲーム史にその名を刻んできました。さらに、2020年公開の映画『ソニック・ザ・ムービー』に始まる映画3作品も大ヒットを記録するなど、ゲームの枠を越えてもその人気を証明。現在は、セガが事業計画で掲げるトランスメディア戦略の先駆的存在として、ゲームや映像作品、さらにはぬいぐるみなどのグッズにまで活躍の幅を広げています。

 

※トランスメディア戦略:ゲームを中心としながらも、映画、アニメ、グッズ化など、1つのIP(知的財産:Intellectual Property)で多方面にわたるメディア展開を行い、IP全体の価値の最大化を図るものとして、セガが掲げる事業戦略。

「ソニック」の歴史

そんなセガを代表するキャラクター「ソニック」ですが、その誕生には今につながるさまざまな構想が秘められていました。「ソニック」はどのようにして誕生したのか、そこにはどんな想いが込められていたのか。セガおよびそのアメリカ拠点Sega of America, Inc.(以下、セガ・オブ・アメリカ)で30年以上にわたり「ソニック」に携わる、セガ 執行役員でソニック クリエイティブオフィサーの飯塚 隆(いいづか・たかし)さんにお話を伺いました。

「ソニック」の誕生とその戦略的背景

――「ソニック」はどのようにして生まれたのでしょうか。

飯塚

当時、セガは家庭用ゲーム機も手掛けており、市場でシェア争いをしていました。そんな状況で競合他社を見渡したとき目にとまったのが、看板キャラクターの存在です。セガにはゲーム機の販売を牽引できる看板キャラクターがいない。そんなところがスタートでした。

――そこからどのように「ソニック」のキャラクターをつくりあげていったのでしょうか。

飯塚

セガが新しいキャラクターをつくるうえで大切にしていたのは、他のキャラクターにはない独自の面白さを出せることでした。そこで着目したのが、セガの「メガドライブ」の特長です。「メガドライブ」は当時にして描画の性能が非常に高く、ハイスピードな画面移動にも対応できました。この性能をいかし、ハイスピードアクションをコンセプトにしたゲームをつくろう、ということになったわけです。

――「メガドライブ」の性能をいかしたコンセプトということですが、「ソニック」は超音速のハリネズミ。なぜハリネズミだったのでしょうか。

飯塚

もちろん、ハリネズミには決して足の速い動物というイメージはありません。ですが、これはハイスピードアクションにとっては不可欠な要素から逆算した結果でした。当時の開発チームでは誰もがこのゲームのスピードからくる爽快感に手ごたえを感じていましたが、同時にそのスピードに耐えられる攻撃方法が必要だと感じていました。敵を倒したり、敵にぶつかったりする度に立ち止まってしまっては、せっかくのスピード感が台無しですから。そこで、そのスピード感をいかせるように、ジャンプでぶつかるだけで敵を倒せる、というアクションを思いつきました。では、ジャンプ中にぶつかって攻撃できるキャラクターとはどんなものか?そこから、丸まってトゲ玉のようになるハリネズミという発想が生まれたのです。

――「ソニック」のデザインは、ゲームの性質から生まれるべくして生まれたのですね。外見についてはよくわかりましたが、性格の方はどのように設計されたのでしょうか。

飯塚

「ソニック」はアメリカでヒットさせることを目標につくられました。アメリカンヒーローといえば、どこか尖っていてクール、優等生じゃないけど弱い者は必ず助ける、みたいなイメージがあったので、ソニックにもそのようなクールなイメージを投影しました。また時を同じくして当時のセガ・オブ・アメリカでは、知名度の低い「メガドライブ」を売り込むために、10代の若者をターゲットにニッチだからこそのクールさ、カッコよさを全面に押し出すマーケティング戦略を打ち出していました。この同時期に展開されたクールでかっこいい「メガドライブ」と「ソニック」というマーケティング戦略がアメリカで狙い通り的中し、爆発的にヒットしたんです。最終的にはゲーム機のシェアも北米市場で競合他社を上回りました。その影響もあってか、今でも「ソニック」は北米で大人気です。小学校に行けばクラスメイトの誰かは「ソニック」のTシャツを身に着けています。それほどのメジャーぶりです。

「ソニック」開発当時のゲーム企画資料。丸まってトゲ玉のようになるハリネズミのイメージが表現されています。
初代『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』より、代表的なステージ「グリーンヒル」を駆ける「ソニック」。このステージはアメリカ・カリフォルニア州をイメージしてデザインされました。

「ソニック」の成長と展開

――そんな想いでつくられた「ソニック」ですが、近年はゲーム以外の分野でも目にする機会がたくさんあります。どのように「ソニック」は成長してきたのでしょうか。

飯塚

10年ほど前まではセガ・オブ・アメリカはライセンスビジネスにはあまり積極的ではありませんでした。やはりゲームが本筋ですから、グッズなどの展開はオファーをいただいたときだけ。2016年に私がセガ・オブ・アメリカに赴任したときは、そんな状況でした。

 

※ライセンスビジネス:IPの使用料(ロイヤリティ)を収入源とするビジネス。

――そこからどのように「ソニック」のライセンスビジネスを大きくしてこられたのでしょうか。

飯塚

当初、アメリカでソニックに携わっていたのは私を含めて20名にも満たないほどでした。ビジネスの規模も本当に小さく、赤字になるかならないかというギリギリのところ。そんな状況を打破するため、単にいただいたオファーを受けるだけでなく、こちらから「ソニック」をグッズ化、映像化してもらえるよう繰り返し売り込みました。それが直接利益になることよりも、まずは「ソニック」の認知度を高めることを目的にしていたこともあり、最初の1、2年は赤字と黒字のギリギリを行ったり来たりしていましたね。

――現在の「ソニック」の勢いから考えると少し意外ですね。

飯塚

「ソニック」はセガのキャラクターとして認知はされていました。けれども、それは主に40代、50代くらいのミドルエイジ層。「ソニック」が爆発的に人気になった1990年代の当時を知る世代です。もちろん全世代にわたりコアファンと呼ばれる人たちはいましたが、人気は衰えていたというのが実情でした。そこでまずファンが喜んでくれそうなコンテンツを発信し続け、コアファンを活性化させることに取り組んだのです。

――それが実を結んできたのはいつごろでしょうか。

飯塚

2020年の映画第1作『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の公開が印象的です。私がセガ・オブ・アメリカに赴任したのが2016年ですから、約4年かけての爆発でした。現在までに映画は3作公開されていますが、「ソニック」関連のライセンス収入は10年前と比べて数十倍に膨れ上がっています。これまでは大半のユーザーが「ソニック」のゲームを楽しんで満足していましたが、今はそこから「ソニック」のグッズが欲しい、また逆に「ソニック」の映画やアニメを観てから、「ソニック」のゲームをやってみたい、そんなふうに思う方が増えてきてくれています。「ソニック」というキャラクターそのものが好きだから、「ソニック」の世界観にもっと触れたい。そう思ってくれるユーザーが増えていくことで、マーチャンダイジングの需要がどんどん拡大していって、それがさらに大きな商品展開を可能にするという、好循環が生まれたのです。

「ソニック」IPのライセンス収入の推移(出典:セガサミーホールディングス 2024年3月期通期決算プレゼンテーション)

映画第1作『ソニック・ザ・ムービー』キービジュアル

トランスメディア戦略の「原点」と現在

――まさに現在のトランスメディア戦略につながるお話かと思いますが、「ソニック」というキャラクター自体にはどんな成功の要因があったのでしょうか。

飯塚

「ソニック」は単にゲームとしてだけでなく、キャラクターとしてもしっかりつくり込まれていました。「ソニック」のキャラクター性をたった二頭身のデザインで表現するために、当時は企画段階からいろいろなイラストや立体模型を用意していました。通常、企画段階ではゲームの企画書を使って会社にプレゼンするものですが、当時の開発チームは店頭に置くポップやぬいぐるみ化したときのイメージまで作成して、ゲームの枠を越えて「ソニック」というキャラクターが広がっていくことを熱弁したと聞いています。デザイナーが個人的にアメリカの道端で数パターンのデザイン案を並べてアンケートをとった、なんてことも聞いたことがありますね。彼らには、「ソニック」がセガを代表するエンタテインメントキャラクターになってほしいという強い想いがあったんです。

「ソニック」開発時期のポップデザイン資料。当時の開発メンバーは、ゲームが完成するより前から「ソニック」のキャラクターとしての可能性を模索していました。

――まさか当時から今のトランスメディア戦略を想定されていたのでしょうか。

飯塚

当時からそこまで大きな構想を描いていたかはわかりません。もちろん、「何をそんな夢みたいなことを言っているんだ」「まだゲームをつくってすらいないのに」と思った方もいたと思います。でも、昨年の「SEGA STORE TOKYO」のオープンも含め、今やセガのトランスメディア戦略の急先鋒になって人気を博しているわけですから、当初の構想が現実になったと言えるでしょう。

2025年7月に東京・渋谷にオープンした「SEGA STORE TOKYO」

――現在のトランスメディア戦略では、「ソニック」はさまざまなメディアに展開しています。その中ではどんなことを大切にされているのでしょうか。

飯塚

やはりクールでかっこいい性格とスピードが、「ソニック」の絶対的な特徴。そこは決してブレてはいけないと思っています。もちろん、ユーザーによっては、かわいらしいぬいぐるみが好きという方もいれば、かっこいい立体フィギュアが好きという方もいますから、マーチャンダイジングではいろいろなバリエーションで展開しています。でも、それは見せ方の話で、「ソニック」の芯の部分は決してブレてはいけない。「ソニック」にとって原点でありコアでもあるゲームでは、そこは変えていません。トランスメディア展開によっていろいろな「ソニック」が出ていますが、ゲームを立ち上げればいつだって変わらないあの「ソニック」に会えるんです。

トランスメディア戦略の概念図。映像や商品ではさまざまなバリエーションの「ソニック」が展開されています。

「ソニック」にかける想い

――最後に、改めて飯塚さんにとっての「ソニック」の魅力についてお聞かせください。

飯塚

「ソニック」はいつも新しいことに挑戦しているキャラクターです。先ほどお話しした通り、20年前に「ソニック」が好きだった人がいつ戻ってきても変わらず受け入れられるように、「ソニック」の芯の部分は変えていません。でも、私たち開発者としては、毎回かなりチャレンジングなことに取り組んでいます。『ソニックフロンティア』のように広大でリアルな世界を走り回る「ソニック」もいれば、『ソニックスーパースターズ』のように明るくポップな世界観を走り抜ける「ソニック」もいます。「1」「2」「3」と単に続編を出し続けるだけのゲームではなく、毎回新しいチャレンジをして、新しいゲーム体験をユーザーに届けてきました。グッズを出してみよう、映画をつくってみようという今のトランスメディア戦略もその一環です。もちろん、それはある意味でスリリングではありますが、そうして手を変え品を変えて届ける「ソニック」からは、毎回新しい感動体験が生まれていると思います。

 

今年で「ソニック」は35周年を迎えることができました。来年には「ソニック」の映画第4作の公開を予定しておりまして、制作は順調に進んでいます。トランスメディア戦略を代表する「ソニック」として、コアのゲームではどんどん新しいチャレンジをしながら、より多くのユーザーに「ソニック」を知って好きになってもらえるような取り組みを今後も続けていきたいと思っています。

セガ・オブ・アメリカのオフィスにて

誕生した1991年から35年間にわたっていつも新しい感動体験を世界に届け続けてきた「ソニック」。その在り方は、まさにセガサミーグループのMission/Purpose「Captivate the World 感動体験を創造し続ける ~社会をもっと元気に、カラフルに。~」の体現者ともいえます。いつの時代も新しいことにチャレンジし続ける「ソニック」から、今後も目が離せません。

公式サイト:

©SEGA

©2020 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

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