社外取締役対談
写真右)社外取締役 監査等委員 村崎 直子
信頼回復に向け、社外取締役としての責務を果たしていきます。
これまでの経験を社外取締役の立場から発揮する
勝川 私は金融機関やプライベートエクイティファンドの経営に携わる過程で磨いてきた、事業の成長性を見極める「目利き力」を活かすことが、社外取締役としての自身の責務だと認識しています。取締役会では、5年後や10年後に当社の企業価値を高めるために、今、何をやるべきかという逆算の視点を重視しています。言うべき時に言うべきことを言い、企業価値向上に直結する提言を行うようにしています。
村崎 私は警察庁で勤務したのち、外資系コンサルティング企業でリスクマネジメントの専門知識を培ってきました。そのためリスクを中心としたモニタリングには特に注力しています。当グループには、利益優先でコンプライアンスを軽視するという考え方はありません。多様な意見を尊重し、率直に議論する土壌があるため、取締役会も意見を言いやすい環境だと感じています。私が着任した2021年以降、リスク・コンプライアンスの管理体制がより一層強化され、四半期ごとに詳細な報告が取締役会になされるなど、監督業務の実効性を高めるための透明性は担保されていると感じています。
勝川 そうした透明性ある情報が提供されるからこそ、取締役会では社外取締役が専門性に基づいて忌憚なく発言していますね。私たち社外取締役の厳しい意見を執行側が真摯に受け止めて、速やかに対応した例も数多くあります。
M&Aの実効性を高め、次の成長へ
勝川 一方、2026年3月期のRovioおよびStakelogicの減損損失の計上については、私たちも重く受け止めています。買収の意思決定に至るまでには、グループ経営委員会などで何度も議論を重ね、外部コンサルタントによるデューデリジェンスの結果も考慮し意思決定をしました。しかし、買収後に市場環境や事業上の前提が変化したことに加え、Rovioに関しては被買収先とのシナジーの発揮にも想定以上の時間を要したことが減損損失の大きな要因になったと認識しています。監督する立場として、このような買収リスクを十分に想定し、より多角的な検証を促すことができなかった点については、真摯に受け止め、今後の監督に生かしていく必要があり、2025年9月の経営合宿では直近の大型案件も含め過去のM&A案件のプロセス検証を行いました。今回の経験を今後の投資判断や取締役会、グループ経営委員会の議論に活かしていくことが重要だと考えています。
村崎 モバイルゲームの成長・強化に向けてRovioの知見や技術を活用することを目指しました。しかし買収後、実際の事業へ展開する中で、デューデリジェンスの段階で確認された技術面の活用可能性と、実際の実装・運用に求められる条件には違いがあり、追加的な検証や調整が必要となる課題が明らかになりました。「強みを強化する」のではなく「弱みを補強する」ためのM&Aであったからこそ、買収先が有する強みを十分活かすためには、対象会社の事業や技術に関する理解をさらに深める必要があったと認識しています。
今回の経験を通じて、海外企業のM&Aをする際には、言語や文化の壁、そしてPMIの実務ノウハウが不可欠であり、これらのスキルを持つ人財の確保も含めて大きな教訓となりました。今回の減損を失敗で終わらせることなく、プロセス全体の検証を経て、必ず次の投資の成功へとつなげていかなければなりません。
勝川 同時に、私たちが注意すべきはM&Aだけではありません。ゲーム開発費が高騰する昨今、自社でのゲーム開発そのものが巨大なリスクを内包するようになっています。ゲーム開発自体は各社・各部門へ権限移譲をしているものの、グループ経営委員会へ定期的にタイトルポートフォリオ等の報告をすることで進捗をモニタリングする仕組みを徹底しています。
村崎 その点、数年前に開発の進捗確認プロセスである「インラインプロセス」を改定したことは大きな進歩ですね。開発の遅延やコスト超過といった危険信号を早期に検知できるようになり、早期段階で共有され、開発投資の限界値を議論する仕組みが実効性を持って運用されています。
セガサミーならではのAI時代におけるクリエイティブの考え方
村崎 今後の持続的な企業価値向上を考える上で、生成AIの急速な進化は避けて通れないテーマです。これは開発効率を高める機会である一方、著作権や信頼性の面でリスクも伴います。現在、「グループAI推進分科会」を設置し、生成AIに関するガイドラインを策定するなど、適切な活用のあり方を検討していますね。間接業務の効率化に向けても積極活用を進めているのは評価すべき点だと思います。
勝川 一方で、ゲーム等のクリエイティブな創作部分には生成AIを直接活用しないというグループCEOの方針を、私は強く支持しています。ゲームづくりはファンに感動を提供するものであり、人ならではの創造性を大切にすることが、ファンとの信頼関係を築くことにつながると考えているためです。こうしたクリエイティブに対するこだわりは、ファン株主も多い株主総会でも大きな支持を得ており、セガサミーグループのブランド価値を高めるために、大切にしてほしいと思います。
村崎 開発現場では「この世界観はAIには作れない」という自負を持っていると聞いています。ユーザーはクリエイターの魂がこもった作品と、AI生成物との違いを敏感に感じ取るものですから、この方針は非常に納得できます。当グループには、自社製品を深く愛する真面目で熱量のある人財が多数在籍しており、こうした人財の力こそが最も貴重な経営資源に他ならないと思っています。
勝川 そうですね。一方で、そうした人財やブランドといった素晴らしい無形の価値が十分に収益に結びついているとはいえず、結果、潜在的な企業価値と株価との間にギャップが生まれていると考えています。同業他社と比較して、当グループの稼ぐ力が十分とはいえない状況です。当グループには創業以来、人を大切にする文化があります。また、学生の就職希望ランキングでも常に上位で、毎年優秀な人財が集まっています。現状の殻を打ち破るには、そういった人財がより一層活躍し、力を発揮できる環境を整えることが重要です。そのような環境が整うことで、収益性も向上し、ギャップも着実に埋まっていくのではないでしょうか。セガとサミー両社の無形資産の掛け合わせも重要な課題です。その点では、両社の社名を冠したゲーミング事業が「セガサミー」ブランドとしてグローバルに認知され、第3の柱に成長することを大いに期待しています。
株主の皆様の信頼を取り戻すために
勝川 現中期計画の目標は未達となる見込みとはいえ、最後まで少しでも目標に近づくよう、執念を持って取り組んでほしいと伝えています。ひとたび我々経営陣が諦めの姿勢を見せてしまえば、社員の士気にも影響するからです。事業別にみていけば、遊技機事業は高い収益力を維持していますが、最も重視する合算稼働シェアでもトップを獲得できれば、業界をけん引する圧倒的な存在になるでしょう。エンタテインメントコンテンツ事業も、世界に誇るセガの豊富なIPをさらに効果的に活用していくことで、収益化のポテンシャルは無限に広がっていくはずです。こうした事業部門のポテンシャルを引き出すと同時に、コーポレート部門も含めてグループ全体で効率化を徹底し、より強いセガサミーへと進化していくことを期待します。
村崎 次期中期計画に向けては、まずは足元の信頼回復が最優先の課題となりますが、買収した3社(Rovio、Stakelogic、GAN)を早期に軌道に乗せることで、当グループのM&Aに関する株主の皆様の信頼を取り戻さなければなりません。次期中期計画ではそうしたM&Aに対する信頼回復の道筋に加え、中期計画全体の実現可能性の観点で厳しくチェックしていきたいと思います。
勝川 技術の急速な進化を背景にエンタテインメントを取り巻く環境は、想像を絶する速度で変化しています。そのため、実現可能性を高める一方、現在の計画の延長線上で次期中期計画を描くだけではこの目まぐるしい環境変化に対応できません。セガサミーグループが新たな時代において真の強者として生き残るためには、これまでの殻を破り、生まれ変わるほどの強い決意を持って新たな計画策定に取り組む必要があります。真に強い企業へと進化させるため、厳しい姿勢で監督していく考えです。
※本記事は統合報告書2026から抜粋しています。