戦評・コラム
第94回都市対抗野球大会 1回戦 vs 三菱自動車岡崎
2023.07.19 [Wed] 18:00VS 三菱自動車岡崎
場所:東京ドーム
東京ドームのマウンド、しかも初戦のそれは特別なものだ。何度も経験している先発の草海光貴とて、その空気感に慣れるまで多少の時間を要する。1回裏、先頭打者を空振り三振に、2番打者をセカンドフライに仕留めたところまでは経験値の高さを見せた。だが、3番打者に対しては2ボール2ストライクと追い込みながら死球。4番打者には、1ボールからの2球目であるファーストストライクをレフトスタンド中段に運ばれて2点を先制された。スタメン捕手の須田凌平が、草海の思いを代弁する。
「高めに浮いてしまった……」
それでも、2回以降の草海は本来のピッチングリズムを取り戻して三菱自動車岡崎打線をねじ伏せた。2回裏は15球、3回裏は16球、4回裏はわずか10球で、それぞれ三者凡退に抑えるのだから、エースの貫禄だ。伸びのあるストレートに多彩な変化球。完璧に近いピッチングだった。
声援とともに熱気に包まれた、コロナ禍以前の応援風景が広がるスタンドの後押しを受けて、攻撃陣が反撃に転じたのは5回表だ。一死から7番高本康平がライト前ヒットで出塁する。8番須田が四球を選び、9番片岡大和のレフト前ヒットでチャンスは満塁と広がる。1番植田匡哉がレフト前へのタイムリーヒットを放って1点差。なおも一死満塁で、2番高島大輝が3ボール1ストライクからの5球目をレフト前へ運び、三塁走者の須田に続いて、二塁走者の片岡もホームを陥れて一気に逆転した。4回表までは三菱自動車岡崎の先発・秋山凌祐投手の前に内野安打1本に抑えられていた攻撃陣の意地が、そこにはあった。
だが、直後の5回裏、好投を続けていた草海が9番打者にタイムリーヒットを浴びて同点とされる。7回裏には、6回途中からマウンドに上がっていた古屋敷匠眞が単打5本を集められて4失点。点差が一気に広がる。8回表、代打の北川智也がライトスタンドにソロアーチを放って点差を縮めるが、8回裏には4番手で登板した舘和弥が1点を失って、再び点差は4点に広がった。
9回表は、イニングの先頭となった6番中川智裕がフルカウントまで粘って四球をもぎ取る。7番高本がライト線へ二塁打を放ち、一塁走者の中川がホームに還って5点目。なおも無死二塁と続くチャンスに、三塁側スタンドの応援にも熱が入る。だが、途中出場の8番吉田高彰と9番砂川哲平が、ともに空振り三振。最後は、1番植田が見逃し三振に倒れて敗戦を迎える。西田真二監督は言う。
「逆転してからの展開ですね。3対3で迎えた7回裏、先頭打者をきっちりと抑えていれば……。失点が多過ぎましたね」
東京ドームでの初戦敗退は、2015年の第86回大会以来。チームにとっての夏の祭典は、早々に幕を閉じた。
文 : 佐々木 亨
写真:政川 慎治