戦評・コラム
第69回JABA静岡大会 予選リーグ vs東邦ガス
2023.04.05 [Wed] 9:00VS 東邦ガス
場所:清水庵原球場
試合が動いたのは3回裏だ。8番須田凌平が死球で出塁。9番福森秀太が手堅く犠打を決めて一死二塁。1番根岸晃太郎は空振り三振に倒れるも、二死二塁で打席に立った2番砂川哲平のバットが均衡を破った。2ボール2ストライクからの5球目。砂川は、東邦ガスの辻本宙夢投手に対して「チェンジアップをイメージしていた」というが、ややインコース寄りのストレートに体がうまく反応した。「打った感触がなかった」と言う一方で「完璧にとらえた」という感想は、ホームラン談の常。同じように打席を振り返った砂川の打球は、両翼100メートルの広い球場の右翼スタンドに吸い込まれるのだから、まさに完璧だ。入社9年目での嬉しい公式戦初ホームラン。その弾道をじっくりと味わうかのように、笑みを浮かべた砂川は、ゆっくりとダイヤモンドを回った。
「記念の一打になりました」
メモリアル弾もありながら、先発マウンドに立った草海光貴は快調なピッチングを続けた。1回表は一死から四球と盗塁で得点圏に走者を背負うも、後続を抑えて無失点。2回表は、左中間寄りの飛球に対して中堅手・植田匡哉がダイビングキャッチを決めるなど、味方のスーパープレーにも助けられながら三者凡退に抑えた。一死からライト線二塁打を浴びた3回表も要所を締めて点を与えない。砂川の2ラン本塁打が飛び出した直後の4回表も、センター前ヒットを浴びたが、やはり無失点で相手の反撃を許さなかった。
しかし、5回表。草海のピッチングが、突如として暗転する。イニングの先頭となった8番打者にレフト前ヒットを浴びると、犠打で一死二塁となった直後には1番打者に三塁線へのセーフティバントを決められて走者一、三塁とピンチを迎えた。2番打者は四球で満塁。3番打者をセカンドフライに討ち取って二死とするが、4番打者には初球を狙われ、走者一掃のタイムリー二塁打を浴びた。
「打たれたのはツーシーム」
変化球をバットの先でうまく拾った相手打者の打撃技術を褒めるべきだろうが、草海は逆転打を浴びたシーン、その初球を悔やむのだ。
1点を追う打線は、6回裏に3番植田がライトオーバーの二塁打。第1打席でも二塁打を放っていた右の好打者の一打で追い上げムードができるが得点には至らなかった。7回裏は、二死から8番須田がピッチャーを襲う内野安打を放つも、後続が倒れて無得点。3番手で登板していた伊波友和が二死から四球と長打で追加点を許した9回表の直後、4番高本康平がレフト前ヒット、二死から途中出場の7番黒川貴章がセンター前ヒットを放ってチャンスを築くも、最後まで「あと1本」が生まれずに敗戦を迎えた。西田真二監督は言う。
「チームの状態としては、3月の企業春季大会と比べて良くなっている。先発の草海も、ピッチングは良くなっている。ただ、今日の試合のポイントは『二死』からの攻防ですね。勝負所での点の取られ方、そして点の取り方と言うんでしょうか。そういう所をもっと詰めていかなければいけない」
2点差の敗戦を力に換え、続くブロック2試合目は何としてでも勝利を掴みにいく。
文 : 佐々木 亨