コラム
サンロッカーズ渋谷のスクール事業に迫る!子どもたちに「バスケットボール」や「ダンス」のきっかけ作り
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2025年10月2日
B.LEAGUE 2025-26シーズン開幕を目前に控え、渋谷をホームタウンとしたラストシーズンに向け準備を進めているサンロッカーズ渋谷。そんなサンロッカーズ渋谷はいま、子どもたちを対象にした“スクール事業”を本格的に取り組み始めています。今回は、Jr.SUNROCKERS(以下ジュニアサンロッカーズ)というバスケットボール教室と、サンロッカーズダンススクール、2つのジャンルのスクール運営を通じて子どもたちがスポーツの楽しさや学びを得られる“きっかけ作り”に奮闘するキーパーソン4人へ、取り組みの舞台裏をうかがいます。

バスケットボールを通じて競い合う楽しさを
まずはジュニアサンロッカーズを運営するスタッフを代表して、3人のキーパーソンにお話を伺います。ジュニアサンロッカーズはサンロッカーズ渋谷が運営・展開するバスケットボール教室です。バスケットボールの経験は問わず、それぞれのレベルに合った指導を行い、バスケットボール、ひいてはスポーツや運動そのものの楽しさを経験する場を提供することをコンセプトに運営しています。サンロッカーズ渋谷に所属するコーチが指導し、プロチームの試合観戦や選手との交流を企画するなど、プロチームが運営するスクールならではの体験をお届けしています。現在東京都内4つの地域にスクールを開校しています。
スクールの統括はリーダーを務めるアセニヨス ケネスさん。通訳としてサンロッカーズに加入して以来、今年で12シーズン目を数え、チームマネージャーや運営・興行に携わった後に現職へ。また、渋谷校、SFA(すみだフットサルアリーナ)校、武蔵小金井校の3校でメインコーチを務めるのが粟屋翔真さん(U12ヘッドコーチ兼務)、江戸川校でコーチを務めるのが堀部寿貴さん(U12アシスタントコーチ兼務)です。皆さんはトップチームやユースチームのサポートと並行して、スクールの子どもたちと日々接しています。
※サンロッカーズ渋谷ではスクール事業とは別に、トライアウトを経て入団となるユースチーム(U12、U15、U18)も有しています。ユースではトップチームと一貫した育成システムを基に、サンロッカーズ渋谷からプロとなり日本、世界に羽ばたく選手の輩出を目指して週4~5日程度の練習が行われています。


- ――アセニヨスさんは、マネージャー時代に2度の天皇杯優勝を経験されました。トップチームの経験がある中で、スクールでは何を一番大切にして運営されていますか
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アセニヨス
バスケットボールを通して、子どもたちのアイデンティティーを確立していきたいと思っています。僕はメインコーチの粟屋さん、堀部さんと話をしてジュニアサンロッカーズのプログラム作りや組織の仕組み作りを担うのですが、まずは「挨拶をしっかりする」「人の話を聞く」など人として基本的なところを子どもたちに伝えることを大事にしています。
また、バスケットボールを通じて競い合う楽しさ、挑戦する楽しさを感じてほしいと思っています。
- ――スクール各校はどのような様子なのでしょうか
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アセニヨス
粟屋コーチが3校担当しておりますが、渋谷校の規模が一番大きいです。小学生の低学年、高学年と中学生向けの3クラスあり、バスケットボールを始めて間もない子どもたちが多い印象です。SFA校は、幼稚園・保育園クラスと小学1~4年生クラスがあります。年齢の低いお子さま向けなので、当スクールで初めてバスケットボールに触れるお子さんがとても多いです。
今年4月から開校した武蔵小金井校はハーフコートの施設であるため、小学校高学年から中学生を対象に、1対1のスキル練習に特化したクラスを運営しています。ユースチームのU12の選手も通っており、スクール生がユースを知り、交流する機会になっていますね。
堀部コーチが担当する江戸川校は、初心者向けクラス(小学1~6年生)のほか、経験者向けクラス(小学3~6年生)があります。渋谷校に比べると本格的に取り組む子どもたちが多く、ユースチームのトライアウトを受けに行く方も多数いる状況です。
- ――武蔵小金井校以外の各校では、どんな練習をされているのでしょうか
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アセニヨス
まずウォームアップのパートでは、ラダーを使ったトレーニングで細かい足のステップを意識したり、ボールを使ったドリブルワークや、シュートの練習をしたりして徐々に体を慣らしていきます。
その後は毎月設けたメインテーマに沿った練習をします。1対1のスキルを学んだり、細かいシュートの打ち方を学んだりと、シーズンを通してバスケットボールに必要なスキルや考え方を得られるようになっています。
そして最後はゲームをやりますね。当日の練習で学んだことをやってみようと伝えているのですが、試合に夢中になっている様子も見られます(笑)でも、コーチが自分たちで作戦を話し合うようにトライさせたり、問いかけたりして、個々で考える癖をつけられるようにアプローチしています。


- ――粟屋コーチと堀部コーチは、子どもたちに直接指導されています。現代は動画やSNSを通して、バスケットボールを学べる機会が数多くありますが、現場だからこそ意識して伝えていることはありますか
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粟屋
「失敗をたくさんしましょう」と声を掛けることです。まずは小さなステップとしてチャレンジしてもらうことが大切です。また、失敗してももう一度立ち直ってプレーできるよう促すことも重要です。この2つを年齢に関係なく伝えて、子どもたちの習慣にしていけるように接しています。

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堀部
バスケットボールは1人ではできないので、人のために頑張ること、その頑張りが自分に返ってくることは伝えたいと思っています。スクールは1回1時間程度と短いのですが、そういった気づきや学びを、子どもたちへ与えられるきっかけ作りをしたいと思いながら、指導にあたっています。

- ――各校にもよりますが、幼稚園・保育園生から中学生まで通う年代が幅広いと感じます。コーチのお二人は子どもたちにどう接しているのですか
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粟屋
スクールには、バスケットボールを学びたいという子もいれば、その場所にいるだけで楽しいという子もいて、実にさまざまです。ですから、彼ら彼女らの“楽しい”という感覚にどうやって触れていくか、楽しさのフェーズが変わるタイミングに気づけるか、そんなことを一番に考えながらメニューを組んだり、声を掛けたりしています。
堀部
スクールに来ている子の中には、もともといたチームで上手くいかなかったり、バスケットボールが嫌いになりそうだったり、悩んでいる子もいます。僕はそんな子たちの架け橋になって、可能性を引き出したいと思って接しているので、しっかりとコミュニケーションを取り、言葉は多くなくても寄り添えるように心掛けています。


子どもたちに響くトップチームの存在
- ――子どもたちと接していて、これまでにどんな「感動体験」がありましたか
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堀部
スクール生の、とある“やんちゃ”な子の変化は印象的でした。在籍も長く、学年が上がっていくうちに、下級生に声を掛ける場面が増えていったんです。助け合う姿勢が少しずつ出てきたなと思いました。それは彼がバスケットボールが上手になりたいと思ったときに、自分だけだと成長の壁を感じて、チームメイトと連係を取るという方法に気づいた瞬間でもあって、その変化に感動しましたね。
粟屋
僕は、小学生の女の子の成長に感動しました。私が担当している渋谷校のリングは基本的に大人のゴールと同じ3メートル5センチの高さなので、その子が通い始めた当初は全くリングに届かなかったんです。
でも、半年が経ったときに悔しい気持ちもあってか、自分で「シュートを教えてください」と話しかけてきてくれて、1、2回ほどコツを教えたんです。そしたら3週間後にシュートしたボールがリングに触れるようになり、翌週には1回シュートが入ったんです!こんなに喜ぶのかと僕も驚くぐらいその子は喜んで、それからは毎週のスクールで「今日は5本決めます」など、自ら目標を設定していくようになりました。
彼女が喜んだり、努力してできるようになると、自分も嬉しかったですし、コーチとして彼女が成長する手助けになれていると感じられました。あと、最近はスクールを卒業しても顔を出してくれる子たちが増えてきました。ユースと違ってチームになって対外的に戦う活動をしていない中で、帰ってくる場所があることは大事だと思いますし、コーチとして嬉しいです。ユースではOBとの交流がある中で、スクールも少しずつそれができているので、これから文化として作っていきたいなと思います。
- ――交流といった点では、スクールへトップチームの選手が年1~2回ほど訪問しているようですね。Bリーグで活躍する選手たちは、子どもたちにどのような影響を与えていますか
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アセニヨス
ジョシュ・ホーキンソン選手のTシャツを着てスクールに来ている子も多いですし、子どもたち同士での「サンロッカーズ渋谷でどの選手が好き?」という会話も耳にします。選手の来訪はオフシーズンになることが多いのですが、実際に選手と触れ合い、直接もらうメッセージは子どもたちに響いています。選手によってはスクールのセッションを一つ担当してもらったり、実際にミニゲームに入ってもらったりする場合もありますね。
- ――クラブ設立 90 周年であり本拠地・渋谷で戦うラストシーズンを迎えますが、トップチームに期待することや思いを聞かせていただけますか?
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アセニヨス
まずは、チャンピオンシップに出場してほしいです。また、ゼネラルマネージャーの松岡亮太さんとは一緒にマネージャーをした時期があり、彼もサンロッカーズ歴が11シーズン目なんです。チームに必要な文化を当時から話していました。クラブとして少しずつ良い文化が構築できていると思うので、カイル・ベイリーヘッドコーチとともにさらにいい文化を作ってくれることを期待しています。

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粟屋
僕は、スクールを運営するうえで、選手の皆さんにお願いがあります。子どもたちはトップ選手から、オンコートでのプレーや振る舞いだけでなく、コート外から掛ける言葉など、オフコートでの活動も含めてたくさん学んでいます。今後もスクール生との交流はぜひ継続してもらいたいです。
堀部
トップチームの選手はオンコート、オフコートともに本当に頑張っていて、そのひとつ一つがスクール生の夢や希望につながっていると実感しています。その努力や想いをスクールの現場、そして若きスクール生たちに伝えるのが僕らコーチの役目だと思っていますので、今後もトップチームと連係できたらと思います。
ホームゲームで練習成果を発表できるダンススクール
サンロッカーズダンススクールは、多様な経験を持ち、トップチームであるサンロッカーズ渋谷のチアリーダーとして活躍しているサンロッカーガールズの現役メンバーやOGらが講師として指導を行うダンススクールです。年齢やスキルに合わせた指導を実施するほか、プロチームが運営するダンススクールならではの特色として、バスケットボールの試合時、広いアリーナでダンスパフォーマンスを披露できます。
このサンロッカーズダンススクールの運営を推進するのが、エリアリレーション スクール担当の二川友里奈さんです。二川さんはホームゲームの運営・会場演出部門で主にサンロッカーガールズやサンロッカーズ渋谷のホームゲームを盛り上げるパフォーマンスチーム、428 ROCK CREWのマネジメントに従事する中、現職へ携わることに。今春より千駄ヶ谷校、代田橋校、東陽町校、渋谷ほんまち校の4校の立ち上げを担いました。サンロッカーガールズは、ディレクターでありNBA Oklahoma City Thunderダンスチーム”Thunder Girls”でチーム初の日本人ダンサーとして活躍した経歴を持つ石井尚子さんの指導のもと、日頃からヒップホップをはじめ様々なジャンルのダンスを試合会場で披露しています。石井さんとも打合せを重ね、現役サンロッカーガールズらが指導を行うダンススクールでも、性別関係なく親しみやすいヒップホップをメインに実施することになりました。

- ――二川さんもダンスのご経験があるのですか?
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クラシックバレエを12年ほどやっていました。スクール運営もバレエをやっていなかったら、なかなか想像がしづらかったと思うので、今の仕事に活きている経験だと思います。
- ――スクール事業が本格化しています。どのような想いで運営されていますか
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サンロッカーズ渋谷はプロチームですので、地域の皆さまからの応援が必要不可欠です。応援してくださる皆さんに何を還元できるのか。まだ、チームをご存知でない方にどう魅力を伝えるのか。私たちが持つリソースの一つが「ダンス」であり、特に子どもたちが何かを始めるきっかけ作りにしたいと思い、スクールを運営しています。
- ――サンロッカーズダンススクールならではの特徴を教えていただけますか
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大きく3つの特徴があります。一つ目は、経験豊富な講師による指導です。サンロッカーガールズ(現役・OB)や428 ROCK CREWが講師を務めているのですが、ダンスのクオリティーは、Bリーグの中で一番ではないかと自負しています。さまざまなダンスの経歴を持つ講師たちからの指導は、子どもたちの成長につながると思っています。
二つ目は、サンロッカーズ渋谷のホームゲームでパフォーマンスを披露できることです。体験会で保護者の方にお話を聞いていると「練習しても発表する場がない」という声をよく聞きます。頑張る先に目標があるほうが、子どもたちのモチベーションが湧くと思いますし、大観衆の前で踊れる経験は、他のスクールではなかなか得られないと思います。発表会の日程を伝えると、みんながより一層張り切るので、見ていて嬉しいですね。
三つ目は、ダンススキル以外の成長に貢献できることです。大勢の前で発表する経験を通して物怖じしない気持ちを養えますし、レッスン中はマナー指導も重視しています。「先生が話している時は喋らない」「挨拶はしっかりする」といった、子どもたちがどこに行っても活躍できる社会性を身につけられるように接しています。


- ――4校を展開していますが、各校によって特色があるのでしょうか
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どの校舎も活発な子が多いのですが、その中でも東陽町校は特に元気な子が多い印象です。休憩をしたら、すぐに走り回るようなイメージですね。でも、最後まで集中して頑張ってくれています。
渋谷ほんまち校と代田橋校は、元気な子だけでなく、少し落ち着いた子も多いように見えます。千駄ヶ谷校はまだ少人数なのですが、国際的な背景を持つお子さんがいるので、スクールを通して違う文化の子と交流できる機会になると感じています。

- ――各校でクラス分けは多少違うところもありますが、基本的にはキッズクラス(5歳~小学2年生)と、ジュニアクラス(小学3年生~6年生)の2つがありますが、お子さんの年齢層も幅広い中で、講師陣の皆さんはどんな工夫をされて指導にあたっているのですか
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例えば、クラスにもよりますが、子どもたちは当初休憩後に集まると整列が乱れがちでした。そんな時に元の位置へきちんと戻れるように、目印としてその場にあったティッシュ箱を置いて自分の立ち位置を確認できるよう臨機応変に対応するなど、講師は日ごろから工夫してくれています。
また、講師から「子どもたちがチームワークを早く築けるよう名札をつけたい」という提案があって、名札も作りました。子どもたちが名前で呼び合えるようにしたら、どのスクールもみんなすぐに仲良くなったんです。会話のきっかけになったんですよね。


- ――講師の皆さんの意見も取り入れて、スクール運営をされているとうかがえます
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そうですね。あと講師たちはダンスを教える以前に、まずは子どもたち一人ひとりを知ろうとしています。「夏休みに旅行はどこへ行ったの?」「今日の夜ご飯は何だろうね?」といったさりげない会話から信頼関係を築いてくれているので、保護者の方も安心して見られているのではないでしょうか。
スクールでの感動体験…一番の喜びは「毎週の変化」
- ――スクールを運営していて、今までどんな感動体験がありますか
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開校を待ち望んでくださっていた地域の方々から「オープンしてくれたんですね!」と言葉をいただいたのは嬉しかったです。地域のお役に立てた嬉しさがありました。
そして何より、子どもたちの成長を見るたびに、やっていて良かったと思えます。当初は賑やかだった子が、講師と仲間の話を集中して聞けるようになったり、すぐに床へ座り込んでしまう子が、練習中にきちんと立っている姿を見せてくれたり。前の週にできなかったダンスのパートを練習してきて、講師がレッスンの最初に音楽をかけると見事に踊ってくれた子もいるんです。毎週の変化を感じられるのが、一番の喜びです。
- ――スクール生は地域イベントにも参加されています。最近だと代田橋校の子どもたちが、幡ヶ谷のお祭りに出演していましたね
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地域イベントには積極的に参加していきたいと考えています。ダンススクールを地域の皆さんに知ってほしいですし、発表の場は多ければ多いほど子どもたちのやりがいにつながります。エリアリレーションとして地域貢献に努めていきたいと思います。
- ――Bリーグの新シーズンが開幕します。スクール生による発表の機会は決まっているのでしょうか
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今シーズンは10月、12月、来年3月にホームゲームで、試合前のプライムタイムのオープニングパフォーマンスでの出演を予定しています。直近10月19日(土)の出番に向けて、本番用の振り付けを練習中です。4校とも同じ振り付けを合わせられるように、みんな頑張っていて、講師も熱が入っています。ぜひ会場で、温かく見守ってほしいなと思います。
- ――保護者の皆さんからは、どのような期待を寄せられていますか
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保護者の皆さんからは「子どもに何かを取り組ませたい」「子どもが楽しんでくれるのが何より」という声をよく聞きます。アットホームな雰囲気や発表機会が多いところに魅力を感じてくださっています。
また、講師がコミュニケーションやマナーについてもしっかりと指導する姿を見て、安心感を持っていただいていると感じています。メリハリのある指導を大切にしているので期待に応えられるよう取り組んでいきます。
- ――最後に、スクールを通じて子どもたちにどう成長してほしいですか
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2つあります。ひとつは子どもたちに、ダンスを通じて何かを一生懸命やることの楽しさを知ってほしいです。もうひとつは、コミュニケーションする力や、身体で自分を表現する力を養ってほしいと思います。将来の仕事や人との関わり方で「サンロッカーズダンススクールでやっていたから、今がある」と思ってくれたら、私たちはとても嬉しいですね。
サンロッカーズ渋谷が運営するバスケットボールスクール「Jr.SUNROCKERS」、そして「サンロッカーズダンススクール」。スクール出身のトップチーム選手やサンロッカーガールズたちの誕生にも期待しましょう!

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