戦評・コラム
第69回JABA静岡大会 予選リーグ vs JR東日本東北
2023.04.09 [Sun] 9:00VS JR東日本東北
場所:清水庵原球場
2番高本康平の会心の一打が始まりだった。リーグ戦2試合目まで4番を務めた左の好打者が、1回表の第1打席に巧みなバットコントロールで変化球をとらえる。両翼100メートルの清水庵原球場。その右翼フェンスを越えていく先制のソロアーチだ。幸先の良いスタートに、一塁側ベンチには熱気が広がった。
2回表は、一死からの追加点だ。6番中川智裕がセンター前ヒットで出塁。二死後、8番須田凌平がライトオーバーの二塁打を放つ。一塁走者の中川が一気にホームへ還り、スコアボードに2点目を加えた。
直後の2回裏、先発マウンドを担う古屋敷匠眞が先頭打者のライト前ヒットを皮切りに反撃を許す。二死までこぎつけたが、7番打者にライト前ヒットを浴びて走者一、二塁。8番打者にはレフト線への二塁打を食らって1点を奪われる。それでも、4回表。「公式戦では久しぶりに打った」と振り返る8番須田のレフトポール際へのソロアーチが生まれるのだから、ベンチの雰囲気は悪くない。マウンドの古屋敷も大崩れすることなく、我慢のピッチングを続けた。ともに先頭打者に二塁打を浴びた3回裏と4回裏は、スピンのきいたストレートと精度の高いツーシームなどの変化球を効果的に使って後続を討ち取った。5回裏は、見逃し三振、空振り三振、そしてライトフライに討ち取って三者凡退だ。捕手の須田が「今シーズンの古屋敷は、ストライク率が上がった。大量失点することがなくなった」と言うように、たとえ走者を背負っても粘り強く投げる姿が印象的だった。6回裏に一死一、三塁から自らの暴投で1点を失って降板するのだが、試合中盤まで安定したピッチングを見せた。
1点リードで迎えた7回表。この試合で自身3安打目となるレフト前ヒットを放った8番須田が起点となり、9番砂川哲平の確実な犠打で一死二塁と攻めると、相手投手の暴投もあって走者三塁のチャンスを築いた。その好機でライト前に落ちるヒット(記録は二塁打)を放ったのは、1番根岸晃太郎。須田が悠々とホームへ還り、点差は2点に広がった。
取られても、取り返す。その粘り強い戦いに、勝利を実感した選手は少なくないだろう。しかし、7回裏。3番手で登板した森井絃斗が、先頭打者への四球にライト前ヒット、さらに野手の失策で1点を返されると、なおも無死一、三塁、後続を討ち取って二死までこげつけるが、二塁盗塁を決められて走者二、三塁とピンチを迎える。5番打者にレフト前ヒットを浴びて走者2人のホームへの生還を許して逆転されたのは、その直後だ。一気に形勢が変わった。
8回裏、4番手で登板した田中法彦が2つの空振り三振を含む三者凡退に抑えて流れを引き戻したかに見えたが、9回表もホームは遠く……。イニングの先頭となった8番須田が、この試合で自身4安打目となるレフト前ヒットを放ち、9番砂川が犠打を決めて一死二塁。1番根岸がセンター前ヒットを放って一死一、三塁とチャンスがなかったわけではなかった。だが、2番高本、3番植田匡哉がともに空振り三振に倒れてゲームセット。1点差で、敗戦を迎えた。リーグ戦1勝2敗で終えた今大会を振り返り、西田真二監督は言う。
「打線の状態は徐々に良くなっていると思います。投手陣も、(2戦目で先発して勝利投手となった)飯田大翔の安定感が見られましたし、収穫はあった。全体的にはミスもあり、もちろん課題も出ました。いろんなものが見えた大会だったと思います」
収穫と課題を力に換え、4月25日からは京都大会に挑む。勝利に向かって、チームは前進するのみだ。
文 : 佐々木 亨