戦評・コラム
わかさ生活 第73回JABA京都大会 予選リーグ vs シティライト岡山
2023.04.25 [Tue] 12:00VS シティライト岡山
場所:わかさスタジアム京都
先制の好機が訪れたのは2回表だ。イニングの先頭となった5番高本康平が、二塁失策で出塁。6番植田匡哉がライト前ヒットを放って無死一、二塁。7番中川智裕が手堅く犠打を決めて走者二、三塁と攻め立てた。だが、8番吉田高彰、9番福森秀太が連続三振に倒れて無得点。絶好の好機が泡と消えた。
3回表は、1番北川智也、2番高島大輝がともにライト前ヒットを放ってチャンスメイク。3番黒川高章がストレートでの四球を選んで無死満塁とした。まさに、ビッグチャンスだ。試合の主導権を握るためには、先取点が欲しい。決定打に欠いた2回表の悔しさを晴らすためにも、何としてでも流れを掴みたい場面だった。だが……、4番根岸晃太郎はレフトフライ、5番高本と6番植田が2者連続三振に倒れて無得点。小雨が降りしきる空と同様に、一塁側ベンチには暗雲が立ち込めた。
試合における「流れ」は勝敗において大きな要素であり、「ピンチの後にチャンスあり」とは、野球において常套句だ。相手ベンチにしてみれば、まさにその言葉を象徴するのが3回裏だった。2回裏までノーヒットピッチングと立ち上がりに安定感があった先発の飯田大翔は、3回裏も先頭打者を見逃し三振に仕留めてマウンドを支配していた。だが、一死から迎えた9番打者に変化球をレフトスタンドへ運ばれて1点を先制される。
「打たれたのはスライダー……。指にかかり切らなかった」
失投と呼ぶほど、悪い球ではなかった。低めへのスライダー。相手打者のバットコントロールが勝っていたと言えるだろう。それでも、先発投手として先取点を献上してしまったことを飯田は悔やむのだ。4回裏は一死一、二塁から、6番打者にセンターオーバーのタイムリー二塁打を浴びて2点目を奪われる。
「味方が点を取れない時こそ、流れを持ってくるピッチングをしなければいけない。ピッチングのギアをもっと上げていかなければいけなかった」
3回裏と4回裏の失点シーンを振り返り、飯田は悔しさを滲ませる。
序盤に得点機を逃し続けた打線は、5回表に1番北川のライトスタンドに飛び込むソロ本塁打で1点を返した。6回裏に2番手で登板した横田哲が1失点。7回裏に3番手でマウンドに上がった伊波友和が2点を失い、4点ビハインドで迎えた8回表には7番中川の左中間スタンドに飛び込む3ラン本塁打で1点差に詰め寄った。9回表は、途中出場の9番砂川哲平がセンター前ヒット。一死一塁から、2番高島がこの試合3安打目となるレフト前ヒットを放ってチャンスは続く。だが、最後は3番黒川の併殺打で敗戦を迎えた。終盤に粘りは見せた打線。それだけに、序盤に先取点を奪っていれば……そう思わずにはいられない。西田真二監督は言う。
「打線は上向き。ただ、やはり序盤の攻撃ですね」
攻め切れなかった2回表と3回表の攻撃が、勝敗の分岐点だった。
文 : 佐々木 亨