戦評・コラム
第53回JABA東北大会 予選リーグ vs TDK
2023.05.10 [Wed] 14:30VS TDK
場所:仙台市民球場
立ち上がりの草海光貴は、先頭打者にセンター前ヒットを浴びた。それでも、2番打者をファーストゴロに討ち取ると、3番打者は空振り三振、4番打者は11球を要してセカンドゴロに仕留めて無失点で切り抜ける。2回表と3回表を、ともに三者凡退に抑えたエース右腕は、快調な滑り出しを見せた。
その流れをもたらしたのは、序盤の攻撃だ。1回裏は、一死から2番高島大輝が四球で出塁。3番北川智也がセンター前ヒットで続いて一死一、三塁。4番中川智裕のサードゴロが相手の野選(フィールダースチョイス)を誘い、三塁走者・高島の好走塁もあって1点を先制した。なおも二死二、三塁と攻め続けると、6番須田凌平がサードへ強烈な打球を放つ。記録は、三塁手の失策。貴重な追加点が入ってアドバンテージを広げた。
2回裏は、8番大谷拓海の四球が起点となった。9番片岡大和が手堅く犠打を決めて一死二塁。1番植田匡哉のレフト前ヒットで、一死一、三塁とチャンスは拡大した。2番高島のセンター前に落ちるタイムリーヒットが飛び出したのは、その直後だ。なおも一死一、二塁から、3番北川がレフト線へヒットを放って4点目。さらに、高島の三塁盗塁で「攻め」の姿勢を見せる中で一死一、三塁と攻め立てると、4番中川のセンターへの犠飛で5点目が入った。序盤2イニングスの大量得点は、マウンドに立つ草海のピッチングに「余裕」をもたらしたと言えるだろう。
「相手打線が草海のストレートに差し込まれていた」
そう語るのは、捕手の須田であり、ベンチから戦況を見つめていた陶久亮太コーチだ。その言葉通り、キレのあるストレートを軸に草海は試合中盤からもマウンドを支配した。4回表は一死から連打を浴びて一、三塁のピンチを迎えるが、後続を討ち取って無失点。三者凡退に抑えた5回表を経て、6回表は四球とセンター前ヒットで無死一、二塁とされたが、相手の中軸を力でねじ伏せて、やはり点を与えなかった。7回表は、イニングの先頭打者にレフト前ヒットを浴び、自らの暴投で得点圏に走者を背負うが、7番打者を空振り三振、8番打者をセンターフライ、そして9番打者を空振り三振に仕留めて、スコアボードに7個目の「0」を刻んだ。8回表に1点を失うが、最後まで見せた粘りのピッチング。8イニングス、117球の熱投。9回表は舘和弥にマウンドを譲るのだが、「エース」に相応しい快投で、自身にとって今シーズンの公式戦初勝利を手にした。草海は言う。
「(117球の)球数は、今シーズン最多。勝ててよかったです」
控えめにそう話すのだが、その表情には納得の笑顔が浮かぶ。
リーグ戦初戦の勝利は大きい。主将の宮川和人は言う。
「今シーズン、これまでの各大会は初戦で勝つことができなかった。そういう意味でも、今日の勝利は大きいですし、チームの状況は確実に良くなっている。それでも、気を抜くことなく戦っていきたい」
勝って兜の緒を締めよ――。チーム全体に広がるその雰囲気は、頼もしい。
文 ・写真: 佐々木 亨







