戦評・コラム
第53回JABA東北大会 準決勝 vs IMF BANDITS富山
2023.05.13 [Sat] 8:30VS IMF BANDITS富山
場所:仙台市民球場
公式戦での先発マウンドは東京都企業春季大会以来となる森井絃斗の気持ちは昂っていた。
「ヨッシャァァァ!」
1回表の先頭打者を、その勇ましい声とともに3球三振に仕留めた姿にこそ、森井のマウンドに対する思いが凝縮されていたのではないだろうか。初回から150キロに迫るストレートが唸る。二死から3番打者に四球を与え、4番打者には力のないライト前ヒットを浴びて走者一、三塁のピンチを迎えても、右腕の気持ちが切れることはなかった。5番打者を力強いストレートでレフトフライに討ち取り、重圧のかかる立ち上がりを無失点で切り抜けた。
3回表は、圧巻の奪三振ショーだ。1番打者を4球で空振り三振に仕留めると、2番打者からは見逃し三振を奪う。3番打者に対しても、ストレートでカウントを整え、最後は変化球で空振り三振を奪って三者凡退。一死から5番打者にレフト線への二塁打、二死二塁から7番打者にライト前ヒットを浴びて走者一、三塁のピンチを迎えた4回表も、粘りのピッチングで点を与えない。
「走者を出しても崩れなかったのはよかった」
4回表まで無失点に抑えた自らのピッチングを森井はそう振り返るのだ。
一方の攻撃陣は小刻みに加点する。1回裏は、1番植田匡哉が四球と二塁盗塁でチャンスメイク。2番高島大輝のピッチャゴロの間に三塁へ進塁した植田をホームへ迎え入れたのは、ライト前ヒットを放った3番北川智也だった。1点リードで迎えた4回裏には、5番黒川貴章の死球を起点に7番砂川哲平のレフト前ヒットで一死一、三塁と攻め、8番吉田高彰のサードゴロが併殺崩れとなって1点を加えた。
だが、2点リードで迎えた5回表。立ち上がりからアクセル全開だった森井に、少しだけ疲れが見えた。1番打者のセンター前ヒット、2番打者のレフトへの二塁打で一死二、三塁と攻められると、3番打者にセンター前へのタイムリーヒットを浴びて1点を失った。
「もっとチームに勢いをつけるピッチングができればよかったのですが……」
なおも一死一、三塁と走者を残す中で降板した森井は、1点差に迫られたピッチングを悔いた。2番手で登板した伊波友和がボークとタイムリー二塁打、そして自らの暴投で一気に逆転を許すのだから、森井の悔しさは増すばかりだった。
それでも、嫌な空気が一掃される瞬間が待っていたのは救いだった。4番中川のセンター前へのタイムリーヒットで1点差に迫った5回裏を経て、6回裏は7番砂川の四球を皮切りに打線が怒涛の攻撃を見せる。一死二塁から、レフト前へ同点タイムリーを放ったのは9番片岡大和だ。さらに、1番植田のライト線にポトリと落ちるヒット、2番高島の四球で満塁とすると、3番北川が勝ち越しとなるライト前へのタイムリーヒットを放つ。4番中川は左中間への2点タイムリーヒットだ。二死二、三塁からは、途中出場の6番根岸晃太郎が左中間を豪快に破る2点タイムリー三塁打。不振にあえぐ根岸の快打に、一塁側ベンチの勢いがさらに増す。3四死球で押し出しの1点を加えた直後は、1番植田の右中間を破る走者一掃のタイムリー二塁打。2番高島にも左中間へのタイムリー二塁打が飛び出して、大量点が加わる。6回裏だけで、打者15人で11得点。試合を決定づけた。
終わってみれば、13安打14得点と打線爆発。10点差をつけた7回コールドの快勝は、迎える決勝に向けて大きな弾みとなった。
文 ・写真: 佐々木 亨







