戦評・コラム
2025年JABA東京都企業春季大会 1回戦 vs 東京ガス
2025.03.20 [Thu] 9:00VS 東京ガス
場所:大田スタジアム
「久々に嬉しい!」
逆転サヨナラ勝ちに西田真二監督は試合後、声を弾ませた。
この大会は、6月から始まる都市対抗東京都二次予選の組み合わせに直結する重要な大会。昨年はJABA東京スポニチ大会で4強入りを果たしながら、この大会で最下位に終わり、二次予選1回戦からの登場に。そして、ゴールドジムベースボールクラブ、Hondaに連敗し、わずか2試合で予選敗退をする屈辱を味わった。加えて、東京都秋季企業大会でも未勝利に終わっていたため、東京都の公式戦での勝利は2023年の9月24日以来、543日ぶりとなった。
勝利の立役者は2日前のオープン戦後に吉井憲治ヘッドコーチから「キーマン」と指名されていた中川智裕と植田匡哉の入社6年目コンビだ。
まず打棒が光ったのは中川だ。2回、東京ガス投手陣を長年牽引する右腕・臼井浩のカットボールをとられると、打球は高々とレフトフェンスを越える先制の2ラン本塁打に。さらに同点とされていた7回には右中間スタンド深くに飛び込むソロ本塁打で勝ち越し。さらに2死後、神山福生が俊足を生かして内野安打で出塁すると、打順は1番にかえり植田。直前に西田監督から「小さくなるな。思いきりいけ」との助言を受けた通り、甘く入った球を力強く振り抜くと、打球はセンターオーバーの三塁打となり4対2とリードを広げた。
だが昨年の都市対抗4強の東京ガスも簡単には勝たせてくれない。先発し5回2失点の尾﨑完太を6回から引き継ぎ、7回まで1人の走者も出さない投球を見せていた新人・長谷川優也が、8回に味方守備陣のミスや5安打で3点を失い、試合をひっくり返された。
それでも長谷川はビハインドを1点差の最小限に留めると、9回2死三塁のピンチでは入社7年目の右腕・伊波友和が登板。「若い(入社1、2年目の)長谷川と尾﨑も頑張っていたし、野手も取り返してくれていたので」と意気に感じてマウンドに上がると、ストレートで押してライトフライに打ち取り、火消し。最終回の攻撃に望みを託した。
すると9回裏、代打の須田凌平が粘って四球で出塁すると、打席には中川。マウンドには明治安田生命の補強選手として出場した昨夏の都市対抗で対戦した伊東佳希。「ストレートが速いことは分かっていたので」と経験を生かし「少し差し込まれてしまいましたがバットが内から出ました」と打球を逆方向のライトへ運ぶ。力強く伸びていった打球はフェンスに勢いよく当たって転々とすると、代走で出ていた片岡大和が生還し同点。中川も三塁まで到達し、サヨナラのチャンスまで作った。
中川はこの日4打数3安打2本塁打4打点の大活躍。打撃投手として中川の自主練習をサポートしてきた砂川哲平コーチも「黙々と頑張る選手なので報われて良かったです」と目を細めた。
そして、東京ガスは神山を申告敬遠で歩かせ、1死一、三塁で植田との勝負を選択。植田は「絶対に打ってやろうと思いました」と悔しさを持ってスイングした打球はセンター前に落ち、中川が生還し試合終了。祝日ということもあって応援に駆けつけていた両親ら家族の前で殊勲の一打となり、低迷打破の第一歩となるような会心の勝利をもたらした。
これで、この大会の4位以上が確定。都市対抗二次予選での1回戦シードも決まった。一方で、これで満足はしない。西田監督は「こういう試合は自信を取り戻すことができます」と話す一方で「まだまだ始まったばかりです」と気を引き締めた。また、中川は「4対2で勝ち切らないといけない試合」、吉井ヘッドコーチと植田は「狙っているのは優勝」と、それぞれ話した通り、慢心はない。
3月21日9時から大田スタジアムで行われる準決勝も、チーム一丸となってさらに勝利を積み重ねたい。
文・写真:高木 遊(株式会社スポーツオフィスタカギ)







